HLAミスマッチ造血細胞移植後の新規キメリズム解析法による臨床診断の有用性に関するエビデンス創出

文献情報

文献番号
201015039A
報告書区分
総括
研究課題名
HLAミスマッチ造血細胞移植後の新規キメリズム解析法による臨床診断の有用性に関するエビデンス創出
課題番号
H21-臨床研究・一般-020
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
中内 啓光(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 信和(東京大学 医科学研究所)
  • 高橋 聡(東京大学 医科学研究所)
  • 田野崎 隆二(国立がんセンター 中央病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
56,674,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
造血細胞移植後のキメリズム解析は血液細胞動態を把握する重要な検査であるが、現行法は手技が煩雑で時間がかかり、細胞の種類までは確認できない。平成17年、我々はドナーとレシピエントに由来する細胞をそれぞれ特異的な抗HLA抗体で染色してFACSで判別するHLA-Flow法を考案した。本法は迅速、高感度かつ定量的で、細胞を分取できることから、生着不全と再発の早期診断に極めて有効である。しかし、臨床研究の規模が限られ、抗HLA抗体の染色性が不良かつ種類不足のため、本法は未だ臨床検査法として定着していない。そこで研究代表者は新たな方法で抗HLA抗体の作製を試み、新規抗体の作製に成功した。本研究では新たに開発した方法で抗HLA抗体を作製し、全国規模でのキメリズム解析の共同研究を行う。それにより、全国の移植施設でHLA-Flow法が臨床検査として有効であるというエビデンスを確立し、標準的検査法として定着させることが、本研究の最終目的である。
研究方法
中内はHLA-Flow法の適応率を向上させるため、新規抗HLA抗体の作製と蛍光色素標識を試みた。渡辺、高橋、田野崎は、キメリズム解析に関する研究会を開催し、全国の移植施設と協力して臨床研究のプロトコールを作成し、共同研究を開始した。
結果と考察
中内は新たに抗HLA-B62抗体を作製したが、HLAテトラマーがないと抗体作製が困難なHLAタイプも多いため、HLAテトラマーに依存しない全く新しい抗体作製法の試みを開始した。虎の門病院との共同研究では70症例を登録し、11月に解析を終了した。1年間にわたる共同研究で、移植後早期のドナー生着動態と白血病細胞を同時にモニタリングすることに成功し、HLA-Flow法が臨床診断において極めて有用であることが実証された。その結果、HLA-Flow法は虎の門病院・臨床検査室への導入が決定した。渡辺は東京医科歯科大学の森尾友宏准教授、および岡山大学の高木章乃夫助教とプトロコールを作成し、全国規模の共同研究を開始した。また、札幌北楡病院と秋田大学では、医科研からの支援のもと自施設内でキメリズム解析を開始した。平成23年2月、高橋と田野崎は第2回キメリズム解析研究会を開催した。
結論
平成22年度、新規抗HLA抗体の作製はHLA-B62のみに限られた。平成23年度は新たな方法も含めて、新規抗体の作製に注力する。一方、臨床検査法として本検査法は共同研究先の移植医に高く評価されており、急速に利用が拡大しつつある。臨床研究は順調に進められている。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201015039Z