高齢者におけるアスピリンの一次予防効果に関する研究-消化管障害に注目したリスク&ベネフィットの検討

文献情報

文献番号
201015038A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者におけるアスピリンの一次予防効果に関する研究-消化管障害に注目したリスク&ベネフィットの検討
課題番号
H21-臨床研究・一般-019
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
池田 康夫(早稲田大学 理工学術院 先進理工学研究科 生命医科学科専攻)
研究分担者(所属機関)
  • 内山真一郎(東京女子医科大学 神経内科学)
  • 島田和幸(自治医科大学附属病院 循環器内科学)
  • 寺本民生(帝京大学医学部 内科)
  • 安東克之(東京大学大学院医学系研究科 内科学)
  • 山田信博(筑波大学 人間総合科学研究科 臨床医学系)
  • 山崎力(東京大学 大学院 医学系研究科)
  • 及川眞一(日本医科大学 第三内科)
  • 上村直実(国立国際医療研究センター 国府台病院)
  • 平石秀幸(獨協医科大学 内科)
  • 横山健次(慶應義塾大学 医学部 血液内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
47,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高血圧、高脂血症、または糖尿病を有する高齢者(60-85歳)を対象とした低用量アスピリンの動脈血栓症一次予防試験(JPPP試験)は平成17年より開始され、19年6月に14,659 症例の登録を完了し,現在追跡調査中である。本調査研究の目的は、平成20年10月に米国ACCF/ACG/AHAより発出された非ステロイド系消炎鎮痛剤の消化管障害に関する提言を受けて、JPPP試験における日本人の低用量アスピリンによる消化管障害の実態を明らかにし、低用量アスピリンの動脈血栓症の一次予防に関するリスク・ベネフィットの検証に資する事である。
研究方法
JPPP試験に登録された症例を対象として平成21年に行った年次追跡調査の結果に基づき、より詳細な二次調査票を作成し、参画医師に送った。平成22年度はその集計を行い、アスピリンの消化管障害の種類、頻度並びにその対処等について併用薬も含めて解析を行う。本研究のような大規模なコホート研究では参画医師、患者さんの協力により、始めて精度の高い追跡調査が可能になる為,研究の目的を十分に理解してもらい,モチベーションを維持してもらう為にリーフレット作成,市民公開講座の開催も企画する。
結果と考察
二次調査として13,018症例について解析した。消化管出血は120例(0.9%)に見られ,60例が上部消化管病変が原因であった。下部消化管の出血は大腸憩室を原因とするものが多く,次いで大腸癌、虚血性腸炎、大腸ポリープであった。消化性潰瘍については161例が報告されたが,そのうち男性79例、女性82例であり、実地臨床で経験される男女比と比べて、女性に高頻度で見られた。癌については107例が報告されたが、その約半数(50例)が胃癌であった。その頻度は胃癌の集団検診での発見率とほぼ同様であった。JPPP試験は内視鏡を全例に行う研究ではないので胃癌は主に症状等により偶然に発見されたものであり、その事を考えると決して低い割合ではないと思われた。その他,大腸癌(29例)、膵臓癌(10例)等も発見されていた。
結論
JPPP試験における平成21年度の年次調査をもとに、詳細な消化管障害に関する二次調査を行い、登録症例での消化管出血、消化性潰瘍、消化器癌等についての頻度が明らかとなった。JPPP試験開鍵後のアスピリン群、非アスピリン群の比較が待たれる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201015038Z