ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を用いた悪性胸膜中皮腫に対する効果的治療法の開発研究

文献情報

文献番号
201015028A
報告書区分
総括
研究課題名
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を用いた悪性胸膜中皮腫に対する効果的治療法の開発研究
課題番号
H21-臨床研究・一般-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
小野 公二(京都大学 原子炉実験所)
研究分担者(所属機関)
  • 中川 和彦(近畿大学 医学部)
  • 中野 孝司(兵庫医科大学 医学部)
  • 平塚 純一(川崎医科大学 医学部)
  • 奥村 明之進(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 切畑 光統(大阪府立大学 大学院生命環境科学研究科)
  • 櫻井 良憲(京都大学 原子炉実験所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
54,622,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
進行期の悪性胸膜中皮腫は複雑な三次元形状を呈し、高精度X線照射技術の応用が困難でX線治療の役割は限定的である。BNCTではホウ素(B-I0)原子核の中性子捕獲反応に伴い細胞径を超えない飛程のα粒子が放出される。従って、B-I0が癌細胞に選択的に集積すれば線量を癌細胞に集中できる。本研究ではスーパー特区の課題である悪性胸膜中皮腫を対象にした加速器中性子BNCTの治験の基礎を固めることを目的とする。
研究方法
臨床研究者を中心に多施設共同BNCT臨床試験研究計画を臨床研究情報センター(TRI) の支援を得て作成する。BPAの腫瘍集積の程度、特に血中濃度に対する比は重要であるが、悪性胸膜中皮腫に対する18F-BPA PETの経験の蓄積は極めて少ないので、京都の病院に依頼し検査を実施しデータを集積する。BPAの簡便測定法の精度を実験動物で検証する。特に実験犬や再稼働したKURでのBNCT患者(脳腫瘍、頭頸部癌)の試料で有用性を確認する。企業との共同になるサイクロトロン中性子源のビーム特性を培養細胞とマウス(担癌および非担癌)を用いて、コロニー形成能、微小核形成能、マウス放射線口腔死、骨髄損傷、腫療の増殖遅延などを指標として中性子の生物特性を評価する。
結果と考察
臨床試験研究計画書が完成し京都大学の医の倫理委員会より実施の承認が得られた。23年度には臨床試験研究を開始できる。先行化学療法に抵抗性患者は当初、FBPA-PETで予測のBPA濃度の腫瘍:血液が小さいが、待機すると比が上昇、BNCTの適応できる2.25を超える。加速器中性子のRBEを2.5で確定した。原子炉中性子 (RBE=3.0)よりもやや小さい。中性子のエネルギースペクトルの差に鑑みると妥当な値である。全身被曝総線量が原子炉中性子よりも大きくなることが、物理測定とバイオドジメトリーにより分かった。開発済の分別測定法の有用性をイヌとBNCT患者試料で確認した。方や抗ホウ素化合物モノクロナル抗体を用いたELISA法を開発、キット化も完成しその精度と有用性を確認した。
結論
平成22年度の研究によって、試験研究のプロトコールが完成、倫理員会の承認も得たことで平成23年度からの悪性胸膜中皮腫のBNCT臨床研究に向けての準備が基本的に完成した。平成23年度の前半には多施設共同の臨床研究を開始できる。加速器中性子源によるBNCTに関しては、物理学的・放射線生物学的なビーム特性を把握することが略できた。また、BNCT臨床研究の現場で必要なホウ素化合物BPAの簡便で比較的迅速な特異的測定法もその精度を含めて確立できたと考える。

公開日・更新日

公開日
2011-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201015028Z