文献情報
文献番号
201015016A
報告書区分
総括
研究課題名
消化器外科手術における合成吸収糸使用の手術部位感染抑制効果に関する多施設共同並行群間無作為化比較試験
課題番号
H20-臨床研究・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
前原 喜彦(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科))
研究分担者(所属機関)
- 土岐 祐一郎(大阪大学大学院 消化器外科)
- 掛地 吉弘(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科))
- 鴻江 俊治(九州大学大学院 外科分子治療学講座)
- 國土 典宏(東京大学大学院 肝胆膵外科)
- 小林 道也(高知大学 医療管理学)
- 澤 芳樹(大阪大学大学院 心臓血管・呼吸器外科)
- 高山 忠利(日本大学 消化器外科)
- 武冨 紹信(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科))
- 夏越 祥次(鹿児島大学 腫瘍制御学・消化器外科学)
- 馬場 秀夫(熊本大学大学院 消化器外科)
- 黒木 保(長崎大学大学院 移植・消化器外科)
- 吉田 和弘(岐阜大学大学院 腫瘍外科)
- 赤澤 宏平(新潟大学 医療情報部)
- 竹内 正弘(北里大学 臨床統計部門)
- 山中 竹春(九州がんセンター 臨床研究部)
- 山本 雅一(東京女子医科大学 消化器外科)
- 上坂 克彦(静岡県立静岡がんセンター 肝胆膵外科)
- 上本 伸二(京都大学大学院 肝胆膵・移植外科)
- 山上 裕機(和歌山県立医科大学外科学第2講座)
- 島田 光生(徳島大学 消化器・移植外科学)
- 寺島 雅典(静岡県立静岡がんセンター 胃外科)
- 江見 泰徳(九州大学大学院 消化器・総合外科(第二外科))
- 小菅 智男(国立がんセンター中央病院 肝胆膵外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
49,860,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1)消化器手術の腹腔内での絹糸使用群と全合成吸収糸使用群のSSI発生率を比較し、合成吸収糸使用の有効性を検討する。
2)腹腔内での吸収糸・非吸収糸の使用とSSIに関するmega-RCTは存在せず、本臨床試験で明らかにする意義は大きい。上部、下部消化管、肝、膵の臓器別に吸収糸群、非吸収糸群について目標症例数を設定し、2年間の症例登録期間を経てSSI発生率を比較する。effect size(2群間の治療効果の差)を推定し、将来の大規模臨床第Ⅲ相試験を実施するために臨床第Ⅱ相試験を行う。
2)腹腔内での吸収糸・非吸収糸の使用とSSIに関するmega-RCTは存在せず、本臨床試験で明らかにする意義は大きい。上部、下部消化管、肝、膵の臓器別に吸収糸群、非吸収糸群について目標症例数を設定し、2年間の症例登録期間を経てSSI発生率を比較する。effect size(2群間の治療効果の差)を推定し、将来の大規模臨床第Ⅲ相試験を実施するために臨床第Ⅱ相試験を行う。
研究方法
1)多施設共同平行群間無作為化比較試験
2)試験材料:滅菌済み手術用絹糸、合成吸収性縫合糸(Polyglactin910,Polydioxanone)
3)対象疾患:本研究の対象疾患は以下の通りとする。
胃部分切除術・胃全摘術:合成吸収糸群135例、絹糸群135例
結腸・直腸切除術:合成吸収糸群135例、絹糸群135例
肝切除術:合成吸収糸群160例、絹糸群160例
膵頭十二指腸切除術:合成吸収糸群145例、絹糸群145例
4)評価項目
主要評価項目:手術部位感染(SSI)の総発生率
副次評価項目:部位別(表層、深部、臓器体腔)感染発生率、SSI発生治癒確認までの期間術後在院日数
2)試験材料:滅菌済み手術用絹糸、合成吸収性縫合糸(Polyglactin910,Polydioxanone)
3)対象疾患:本研究の対象疾患は以下の通りとする。
胃部分切除術・胃全摘術:合成吸収糸群135例、絹糸群135例
結腸・直腸切除術:合成吸収糸群135例、絹糸群135例
肝切除術:合成吸収糸群160例、絹糸群160例
膵頭十二指腸切除術:合成吸収糸群145例、絹糸群145例
4)評価項目
主要評価項目:手術部位感染(SSI)の総発生率
副次評価項目:部位別(表層、深部、臓器体腔)感染発生率、SSI発生治癒確認までの期間術後在院日数
結果と考察
2009年2月より19施設で、胃271例、大腸271例、肝337例、膵295例が症例登録され、合成吸収糸群、絹糸群に割り付けられて手術が施行された。胃、大腸、肝、膵臓において、合成吸収糸群と絹糸群のSSI発生割合は、14.2%-8.3%(p=0.1314)、17.6%-13.5%(p=0.4031)、12.9%-9.8%(p=0.3774)、41.4%-32.4%(p=0.1145)と全臓器において有意差は無いが、合成吸収糸群のSSI発生割合が高かった。本試験は、腹部手術において腹腔内結紮糸として合成吸収糸を用いることが絹糸を用いるよりSSIの発生を軽減できるとの仮説を検証すべき今後の臨床第3相試験を前提として、無作為化第2相試験として実施された。しかし、予想した結果とは反対に、SSI発生割合は合成吸収糸群が絹糸群より有意差はないものの高い値を示した。本試験の結果は第3相試験を実施することを推奨しない。
結論
「胃」「大腸」「肝臓」「膵」の4臓器において示された結果は、従来の考え方である「合成吸収糸を用いることが絹糸を用いるよりSSIの発生を軽減できる」との仮説と正反対の結果であった。絹糸に比較して、コストのかかる合成吸収糸Vicrylの優位性を保証する根拠は否定され、無制限な医療費の増大を抑制する結果につながる。
公開日・更新日
公開日
2011-09-21
更新日
-