陽子線高線量率ラインスキャニングの革新的技術の研究

文献情報

文献番号
201015008A
報告書区分
総括
研究課題名
陽子線高線量率ラインスキャニングの革新的技術の研究
課題番号
H21-トランス・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
西尾 禎治(独立行政法人国立がん研究センター 東病院臨床開発センター粒子線医学開発部粒子線生物学室)
研究分担者(所属機関)
  • 河野 良介(独立行政法人国立がん研究センター 東病院臨床開発センター粒子線医学開発部)
  • 亀岡 覚(独立行政法人国立がん研究センター 東病院臨床開発センター粒子線医学開発部)
  • 二瓶 圭二(独立行政法人国立がん研究センター 東病院臨床開発センター粒子線医学開発部)
  • 白土 博樹(国立大学法人北海道大学大学院医学研究科)
  • 石川 正純(国立大学法人北海道大学大学院医学研究科)
  • 松浦 妙子(国立大学法人北海道大学大学院医学研究科)
  • 西岡 史絵(独立行政法人国立がん研究センター 東病院臨床開発センター粒子線医学開発部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
47,078,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
陽子線高線量率ラインスキャニングの技術の研究開発から実臨床利用までを本研究の最終目的とする。本年度は、陽子線高線量率ラインスキャニングの実施に必要な物理技術の研究及びそれらの物理的な初期検証、治療の安全性を評価することを目的とする。
研究方法
陽子線スキャニングビームの(1)高精度位置確認システム及び(2)高精度線量制御システムの研究:高線量率陽子線に対する線量モニタの応答性と線量分布を評価した。(3)体内照射位置確認システムの研究:FDGを用いた位置分解能に関する検証と線量解析システムの開発を行った。(4)最適化治療計画システムの研究:計算された線量分布の最適化の精度検証法の調査と高速・高精度の線量計算アルゴリズムを考案した。(5)線量の生物学的効果比の高線量率依存性の検証システムの研究:HSG細胞を利用して生物学的効果比(RBE)の線量率依存とLET依存を検証した。(6)臨床試験:74GyE/37fx.の151症例の陽子線治療の実績から治療の安全性を検証した。
結果と考察
(1)及び(2)イオン再結合効果はBoag理論式より±0.5 %精度で線量測定が可能であった。球体照射でγ-index評価法により99.7%の合格率で実測と計算分布が一致した。測定時間の短縮化と利用の簡便化に向けた測定器開発が必要である。(3)位置精度は±1mmであった。患者CT画像から元素分布情報への変換機能、activity分布表示機能を構築した。3次元空間分解能向上の研究が必要である。(4)高速γ-index計算と”residual dose difference”による線量分布評価法、陽子線線量計算Spatial Re-Sampling Pencil Beam Algorithm法を考案した。計算機の処理能力向上にGPU技術を駆使する必要がある。(5)高線量率依存の効果は観測されなかった。線量計算精度の向上のために生体におけるLETや線量率に依存したRBEの効果を陽子線線量計算へ導入する必要がある。(6)陽子線治療2年後のグレード2以上の直腸出血頻度は2.0%、最終経過観察で4.1%、膀胱副作用は2年後で4.1%、最終経過観察で7.8%であり良好であった。治癒率向上と安全性を両立させた治療実施のモデル構築が重要であると考える。
結論
陽子線高線量率ラインスキャニング照射法における照射・シミュレーション・位置確認の研究と技術開発、生物学的な検証と臨床データに基づく治療の安全性の示唆、といった包括的な研究体制を実施したことで、予定していた本年度の研究目的を達成することができた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201015008Z