次世代型心肺補助システムの開発に関する重点的研究

文献情報

文献番号
199700757A
報告書区分
総括
研究課題名
次世代型心肺補助システムの開発に関する重点的研究
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
高野 久輝(国立循環器病センター研究所副所長)
研究分担者(所属機関)
  • 笹子佳門(国立循環器病センター)
  • 妙中義之(国立循環器病センター)
  • 中谷武嗣(国立循環器病センター)
  • 巽英介(国立循環器病センター)
  • 増澤徹(国立循環器病センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 高度先端医療研究事業(治療機器等開発研究分野)
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
平成11(1999)年度
研究費
75,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、容易かつ迅速に適用可能で長期間安全に使用できる次世代型の心肺補助装置の開発を行うことである。
研究方法
まず、文献調査および臨床例の検討より次世代型心肺補助システムの基本理念を確立し、性能規格を決定する。それに基づいて最適なガス交換膜の選定や抗血栓性表面処理法の確立を行い、さらに具体的な装置の考案・設計・試作を行って、完成した一次試作装置の基本性能を評価する。
結果と考察
次世代型心肺補助システムは緊急対応性に優れかつ長期安定性・抗血栓性も具有するという開発理念を確立し、具体的性能規格として、1)人工肺と血液ポンプを一体化した超小型装置で、大きさ20cm立方以下、重量1kg以下、充填量200ml以下、膜面積1m2以下で卓上使用が可能、2)事前充填した状態での滅菌保存が可能で、送脱血管との接続以外に組立てや準備を要しない、3)抗血栓性に優れ人工弁置換患者と同程度の抗凝血療法で使用可能、4)血漿漏出がなく最低2週間の連続使用が可能、5)300mmHgの後負荷で8L/minの最大流量と、5L/min流量時に250ml /minのO2添加および200ml/minのCO2除去が可能、と決定した。ガス交換膜に関しては慢性動物実験での長期灌流実験で評価した結果、長期耐久性に富みガス交換能もよ維持される特殊ポリオレフィン膜を採用することとした。このガス交換膜では、血液接触面で微小孔が盲端となり厚さ0.2μmの緻密層を形成して血液/気体直接接触を完全になくしており、長期使用に際して血漿漏出がないばかりでなく、使用前充填保存の可能性も高いものと思われる。抗血栓性表面処理に関しては、分子構造上全ての結合が共有結合によってヘパリンを固定する表面処理方法(V-Point法)を開発した。既に製品化されている従来法と比較した結果、V-Point法はより高い安定性を示し、その有用性が示された。次世代型心肺補助システムに要求される具体的スペックを満足する装置として、遠心ポンプと人工肺を一体化した全く新しい基本構成をとる超小型装置を考案し、その一次試作装置を完成させた。試作装置の外寸は54mm×直径132mmの円柱形で、充填液量は180ml、ガス交換膜の膜面積は0.85m2と超小型で、また、一体化によって送脱血管との接続以外の組み立ては全く不要化され、将来使用前の充填保存が可能になれば、緊急対応性に優れた装置に成り得ると考えられた。この一次試作装置の基本性能を検定したところ、ポンプ性能については3000rpmにて400mmHgの揚程に対して約12 L/minと十分満足できる能力が得られた。一方ガス交換能については、血流量5L/minにて180ml/minの酸素添加および110ml/minの炭酸ガス排出と十分の性能を有するとは言い難く、今後性能的な余裕を得るために膜面積を増やしたり流路形状の最適化によるガス交換効率の向上を図る必要があると考えられた。
結論
臨床的要求に応え得る次世代型心肺補助システムが考案・設計され、その一次試作装置は十分実用化の目処を有するに足る基本性能を示した。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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