アドレノメデュリン(AM)の炎症性腸疾患治療薬としての臨床応用

文献情報

文献番号
201015007A
報告書区分
総括
研究課題名
アドレノメデュリン(AM)の炎症性腸疾患治療薬としての臨床応用
課題番号
H21-トランス・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
北村 和雄(宮崎大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 芦塚 伸也(宮崎大学 医学部)
  • 鶴田 敏博(宮崎大学 医学部)
  • 北 俊弘(宮崎大学 医学部)
  • 稲津 東彦(宮崎大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
26,550,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
アドレノメデュリン(AM)は我々が発見した強力な降圧作用を有する生理活性ペプチドであり、多彩な作用を有し、循環調節や循環器疾患の病態に極めて重要な役割を果たしている。一方、AMには強力な抗炎症作用があることが明らかになり、炎症性腸疾患(IBD)治療薬としても期待されている。本研究の目的は、IBDの治療薬としてのAMの有用性を基礎的および臨床的研究で明確にし、AMをIBDの治療薬として実用化するための基盤を確立することである。研究期間3年のうち、前半は臨床研究を行うための基礎研究を主に行い、後半にAMのIBD治療薬としての有用性を証明するための探索的臨床研究を行う。
研究方法
AM のIBD発症・増悪化抑制効果およびその機序について、IBDモデルであるTNBS腸炎モデルラットを用いて検討を行なった。さらに、炎症性腸疾患患者に対して、AM 持続静脈投与を一日8時間、最長14日間投与する臨床研究を開始した。評価項目として、活動性と内視鏡所見および循環動態や有害事象を評価した。
結果と考察
炎症性腸疾患モデル動物を用いて、AMが経静脈投与でも効果があることを明確にした。また、AMが炎症性サイトカインや嫌気性菌を抑制して炎症性腸疾患の病態を改善することを明らかにした。興味深いことに、AM投与量が多すぎるとAMの抗炎症効果や抗潰瘍効果が減弱することが明らかになった。そのため、急性心筋梗塞治療で用いる用量より少ない量で、血圧が下がらない用量で臨床研究を開始した。その結果、ステロイド抵抗性の難治性潰瘍性大腸炎の患者に投与した時に、AM投与による病状の改善が認められた。内視鏡所見より、AMの作用として炎症を抑えるだけでなく組織修復も促進していることが明らかになった。AMが炎症性腸疾患治療薬として有望であることを示す、基礎研究と臨床研究の成果が蓄積されつつある。
結論
炎症性腸疾患のモデル動物に加えて、患者でもAM投与の有用性が証明されつつある。AMはヒトの体内に存在する物質であり抗原性がなく、安全性も高いことから、安心して使用できる有効な炎症性腸疾患治療薬になりうる可能性が示された。

公開日・更新日

公開日
2011-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201015007Z