生活習慣病増悪フェーズの鍵分子「HMGB1」に対する分子標的抗体薬の臨床応用研究

文献情報

文献番号
201015003A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病増悪フェーズの鍵分子「HMGB1」に対する分子標的抗体薬の臨床応用研究
課題番号
H21-トランス・一般-001
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
西堀 正洋(国立大学法人 岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科生体制御科学専攻生体薬物制御学講座薬理学)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋 英夫(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 薬理学)
  • 劉 克約(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 薬理学)
  • 槇野 博史(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学)
  • 松川 昭博(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 免疫病理学)
  • 伊達 勲(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 脳神経外科)
  • 吉野 正(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 病態学)
  • 森 秀治(就実大学薬学部 生体情報学)
  • 榎本 秀一(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 医薬品機能分析学)
  • 武田 吉正(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 麻酔蘇生科学)
  • 和氣 秀徳(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 薬理学)
  • 友野 靖子(医療法人創和会 重井医学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
63,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
申請者は、脳梗塞、アテローム動脈硬化症、脳血管攣縮などに共通して関与する重要な新規メディエーターとして、細胞核由来の「HMGB1」を疾患モデル動物を用いて同定している。この鍵分子に対する特異的単クローン抗体治療を臨床現場に迅速かつ効率的に応用していくために、有効性と安全性を確立し、現行治療薬との作用機序の違いを明確にする。
研究方法
in vitro BBB系を用いて、組換え体HMGB1のin vitro BBBに対する直接作用を機能および形態的に評価する。脳虚血モデルラットの脳浮腫状態をMRI撮像により評価し、抗体効果を同一動物の経時的変化として観察する。ラットの反復投与毒性実験を実施し、種々のレベルで毒性の評価を行う。前年度成功しなかった治療抗体の標識体作製を試み、生体内動態解析に用いる。アテローム動脈硬化症マウスの局所血管炎症に関する詳しい解析データを得る。ニホンザルを実験動物とした動脈バルーンカテーテル法による低侵襲脳梗塞モデルの作製を試み、これまで指摘されているげっ歯類、霊長類間の病態における差について検討する。
結果と考察
ラット2時間中大脳動脈閉塞・再灌流3時間の時点で電顕観察をおこなうと、血液―脳関門の形態的破綻がすでに著明であることがわかったが、抗HMGB1抗体治療は、虚血により齎される形態変化を著明に抑制した。ヒト組換え体HMGB1は、in vitro BBB系において、血管内皮細胞と周皮細胞の形態変化を伴う血管透過性亢進を齎したが、抗HMGB1抗体の添加はこれを抑制することができた。MRIによる撮像で、対照動物に認められる再灌流早期3時間からの脳浮腫像が抗体治療によって著明に抑制された。脳浮腫(血液から脳への水成分の移動)に関与するアクアポリン-4の蛋白発現のレベルでも、抗体効果は支持された。64Cu-DOTAを用いて、抗原結合性(60-70%)を保持した抗体の標識化に成功した。アテローム動脈硬化症マウスの炎症病態におけるHMGB1の関与を明らかにした。ニホンザル脳虚血におけるHMGB1トランスロケーションを証明した。
結論
抗HMGB1抗体は強いBBB保護効果を持っており、これまでの治療薬とは全く異なる作用機序である。急性単回及び反復投与毒性実験で著明な有害作用は検出されず、新規治療法として有望である。

公開日・更新日

公開日
2011-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201015003Z