認知症の早期発見・早期介入実証プロジェクト研究

文献情報

文献番号
202416010A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の早期発見・早期介入実証プロジェクト研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24GB2001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 秀典(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 理事長室)
研究分担者(所属機関)
  • 櫻井 孝(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 研究所)
  • 島田 裕之(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 研究所老年学・社会科学研究センター)
  • 寳澤 篤(国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構)
  • 浦上 克哉(鳥取大学医学部認知症予防学)
  • 牧迫 飛雄馬(鹿児島大学学術研究院医歯学域医学系)
  • 大田 秀隆(秋田大学 高齢者医療先端研究センター)
  • 古和 久朋(神戸大学 大学院保健学研究科)
  • 小野 玲(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部)
  • 井平 光(札幌医科大学 保健医療学部理学療法学科)
  • 藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 鈴木 宏幸(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) 社会参加とヘルシーエイジング研究チーム)
  • 斎藤 民(国立長寿医療研究センター 老年社会科学研究部)
  • 進藤 由美(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 企画戦略局)
  • 赤澤 智宏(東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科)
  • 松原 悦朗(大分大学 医学部)
  • 春日 健作(国立長寿医療研究センター 認知症先進医療開発センター 診断イノベーション研究部)
  • 大藏 倫博(筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
  • 宇田 和晃( 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年社会科学研究部)
  • 森山 信彰(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 国立健康・栄養研究所 身体活動研究センター 運動疫学研究室)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
123,120,000円
研究者交替、所属機関変更
・研究分担者交替 斎藤民(令和7年4月1日~令和7年8月5日) →宇田和晃(令和7年8月5日以降) 小野玲(令和7年4月1日~令和7年10月10日) →森山信彰(令和7年10月10日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症予防には早期発見・早期介入が不可欠であるが、全国的に標準化された実施フローは確立されていない。昨年度の実証・調査では、地域特性に応じた事業体制の構築、スクリーニング後の受診率向上、啓発が課題として示された。本年度は、自治体特性に応じた早期発見から早期介入までの実施フローを検証し、本人・家族の視点を反映した日本独自のモデル(J-DEPPモデル)の構築を目的とした。
研究方法
本研究は3つのStepで実施した。Step1では、昨年度の知見を踏まえ、リクルート方法、スクリーニング、受診推奨のフローを改善し、有効性を検証した。sf-FATによるスクリーニングを行った北海道、秋田、茨城、愛知では、受診推奨基準の見直しや受診推奨画面の視認性改善など、受診率向上に向けた取組を行った。検査後に受診状況、診断状況などに関する追跡調査を実施した。加えて、受診率向上を目的とした啓発資材を作成・評価した。Step2では、血液バイオマーカー、唾液検査、ウェアラブルデバイスの有用性を検証した。Step3では、全国自治体への手引きに関するアンケート調査と、昨年度J-DEPP外来を受診した患者・家族5組への半構造化面接を実施し、これらをもとにJ-DEPPモデルを構築して手引きの改訂を行った。
結果と考察
Step1
令和7年度は、全国35自治体で6,364名がスクリーニング検査を受検した。ダイレクトメールや対面での声かけ等、個別性の高い方法でリクルートし、会場型で実施した場合、受検率は11.6〜15.1%であった。一方、ポスターやWeb広告等でリクルートし、非会場型で実施した場合は0.2〜2.5%にとどまった。
sf-FATを使用した北海道、秋田、茨城、愛知では、計3,553名が受検した。受診推奨者における受診率は、令和6年度と比較し7.3%から13.5%へ、MCIまたは認知症の陽性反応的中度は1.6%から4.7%へ改善した。この改善には、受診推奨基準の見直し、受診推奨画面の視認性改善に加え、一部フィールドで行われた医師相談ブースの設置等、専門職による対面での個別介入が寄与した可能性がある。また、秋田と愛知では、受診後に抗アミロイドβ抗体薬や専門外来での治療開始も確認され、本取組が早期介入の契機となりうることが示された。
一方で、検査後の画面表示による受診推奨を認識した者は22.9%にとどまった。受診推奨を認識できた者の受診率は33.3%であったのに対し、認識できなかった者では8.3%であり、約4倍の差が認められた。このことから、受診推奨の認識の有無が受診行動に影響することが明らかとなった。
さらに、啓発資材として早期受診の重要性と受診方法を説明する100秒程度の動画を作成した。その結果、令和6年度調査の未受診者713名のうち、視聴後に39.8%が受診に前向きになる態度変容を示した。あわせて、5分程度の詳細解説動画、治療情報等を拡充したWebページ、リーフレットも作成した。

Step2
血液バイオマーカーでは、MCI者407名の解析でAβ42/40陽性68.1%、p-tau217陽性60.7%、GFAP陽性29.5%であり、AD病理、神経炎症、神経変性など複数の病態側面を反映する可能性が示された。唾液検査では507名の解析から、唾液細菌叢が認知機能低下群の層別化に活用できる可能性が示された。ウェアラブルデバイスでは1,388名の解析から、認知機能低下に伴う日中歩数の減少や昼寝時間の増加、睡眠効率の低下、総睡眠時間の延長などを捉えうることが示された。

Step3
全国853自治体からの回答では、約79%が手引きを計画・準備段階で有用と評価した。一方、小規模自治体の事例、費用対効果、医療連携など実務的情報の充実が求められた。患者・家族5組への半構造化面接では、家族の関与や治療への期待が受診行動に影響する一方、受診先が分からないことが障壁となることが示された。これらを踏まえ、自治体が早期発見・早期介入の取組の標準的モデルとしてJ-DEPPモデルを構築し、実施チェックリストとともに手引きに含めた。
結論
本研究により、受検率・受診率の向上には、ダイレクトメールや対面での声かけ等の個別性の高いリクルート、受診推奨基準の見直し、受診推奨画面の視認性改善、専門職による対面での個別介入に加え、受診推奨を対象者が確実に認識できる仕組みが重要であることが示された。また、血液バイオマーカー、唾液検査、ウェアラブルデバイスは、リスク層別化や日常生活下でのリスク把握を補完しうることが確認された。本事業で構築したJ-DEPPモデルは、自治体における早期発見・早期介入の実施フローを具体化したものであり、今後の地域展開に資することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-10-29
更新日
2026-06-10

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-06-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202416010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全国35自治体6364名を対象に認知症の早期発見・早期介入モデルを検証した。今年度は受診推奨基準と結果画面の視認性を見直し、一部地域で個別介入を行った結果、受診率は7.3%から13.5%へ、MCI・認知症の陽性反応的中度は1.6%から4.7%へ改善した。一方、画面表示での受診推奨の認識率は22.9%にとどまったが、認識できた者は33.3%が受診に至り、認識の有無が受診行動に影響することが示唆された。血液バイオマーカー、唾液検査、ウェアラブルデバイス等の有用性も検証し、自治体向け手引きを改訂した。
臨床的観点からの成果
スクリーニング検査後に医療機関への受診や支援につなげるためには、専門職による対面での個別介入に加え、受診推奨を対象者が確実に認識できる仕組みが重要であることが示された。また100秒程度の啓発動画を作成し、昨年度受診推奨を受けたものの未受診の者を対象に検証を行った結果、視聴後に39.8%が「できるだけ早く受診したい」と受診意向の変化が認められ、受診行動の動機づけに寄与する可能性が示された。加えて本人・家族等への調査を踏まえ、5分程度の解説動画とリーフレットを制作し、ホームページの内容拡充を行った。
ガイドライン等の開発
「自治体で取り組む認知症発症/進行のリスク早期発見の手引き」の発表および改訂
その他行政的観点からの成果
全国の自治体を対象に、認知症の早期発見・早期介入の取組や自治体向け手引きに関するアンケート調査を実施した。その結果、853市区町村から同意・回答が得られ、約79%の自治体が手引きを取組の計画・準備段階で有用と評価した。一方、小規模自治体の事例、費用対効果、医療機関連携などの実務的情報の充実を求める意見も得られた。これを踏まえ、自治体職員が地域特性に応じて事業を実施しやすいよう手引きを改訂するとともに、認知症の早期発見から早期介入までの標準的な実施フローとしてJ-DEPPモデルを構築した。
その他のインパクト
2025年5月に読売新聞、同年8月にはNHKニュースにおいて、本研究に関する報道が行われた。さらに、同年10月には東京新聞および下野新聞にも掲載された。
加えて、一般向けの啓発活動として、高齢者および家族へのアンケートならびにインタビュー調査より明らかになったニーズを基に、国立長寿医療研究センターの公式Webサイト内の研究紹介ページのコンテンツ拡充を行った。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
43件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
65件
学会発表(国際学会等)
18件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
2件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
15件
ホームページ1件、和文書籍3件、公開講座11件

特許

特許の名称
神経変性疾患及び前駆障害の判定方法及び装置
詳細情報
分類:
特許番号: 特許第7787632号
発明者名: 赤澤智宏、久松大介
権利者名: 学校法人順天堂
出願年月日: 20250317
取得年月日: 20251209
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2026-06-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
202416010Z