癌幹細胞を標的とする人工ウイルスを用いた癌幹細胞特異的新規Drug delive ry activation system(DDAS)の確立

文献情報

文献番号
201011027A
報告書区分
総括
研究課題名
癌幹細胞を標的とする人工ウイルスを用いた癌幹細胞特異的新規Drug delive ry activation system(DDAS)の確立
課題番号
H20-ナノ・若手-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大内田 研宙(九州大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 正治(九州大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
固形癌の多くは、依然として根治切除ができなければその後の再発再燃の制御が困難で、その治療法の開発は、社会的要請度が高い。最近、癌組織中の特定の微量細胞集団だけが腫瘍形成能を持つとする癌幹細胞の概念が注目されている。この癌幹細胞は薬剤耐性を有し、再発に関与する。また、微小環境を形成している間質細胞にも癌の悪性度に深く関わる集団がある。本研究では、異なる蛋白を認識する人工ウイルスを用いて、癌幹細胞に薬剤や分子標的薬を輸送する。癌組織や血液中において標的細胞を的確に認識し、細胞内特異的な薬剤濃度上昇や治療薬の活性化/効果増強を実現し、重篤な副作用を抑える。これにより、治療抵抗性が高く再発、転移の原因となる標的細胞を制御する新規Drug delivery activation system(DDAS)を開発する。
研究方法
昨年度までの本研究により、癌幹細胞や治療抵抗性株における標的分子として同定されたCXCR4、c-Metに加え、癌間質相互作用に着目し、大腸癌及び膵癌の手術切除サンプルより作成したfibroblastに対しセルソーターを用いてprospective isolationを行い、in vitro、in vivoにおいて機能解析を行った。我々が独自に開発した人工ウイルスを癌細胞及び癌幹細胞膜表面上に特異的に発現する標的マーカーを認識・結合し、標的細胞に特異的に集積するように改変した。さらに標的細胞内で刺激応答的に崩壊するように機能化した。In vitroにて腫瘍モデルを作成し、新規人工ウイルスの細胞特異的な治療効果を検証した。
結果と考察
本年度の研究においては、癌間質相互作用に着目し、大腸癌及び膵癌の手術切除サンプルより作成したfibroblastに対しセルソーターを用いてprospective isolationを行い、機能解析を行った。その結果、CD10を発現しているfibroblastが、特異的に膵癌細胞及び大腸癌細胞の浸潤能を亢進させることが明らかになった。また、MUC1をターゲットとしたIgGの付加に成功した。
結論
本成果は、癌幹細胞、癌細胞、癌間質に特異的に作用する多機能人工ウイルス作成への基盤となり、今後、効率的かつ副作用の少ない、新たな治療戦略の開発が期待できる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201011027B
報告書区分
総合
研究課題名
癌幹細胞を標的とする人工ウイルスを用いた癌幹細胞特異的新規Drug delive ry activation system(DDAS)の確立
課題番号
H20-ナノ・若手-009
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
大内田 研宙(九州大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 村田 正治(九州大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最近、癌組織中の特定の微量細胞集団だけが腫瘍形成能を持つとする癌幹細胞の概念が注目されている。この癌幹細胞は薬剤耐性を有し、再発に関与する。また、微小環境を形成している間質細胞にも癌の悪性度に深く関わる集団がある。本研究では、異なる蛋白を認識する人工ウイルスを作成することによって、癌幹細胞や癌の悪性度に深く関わる間質細胞に薬剤や分子標的薬を選択的に輸送することにより、細胞内特異的な薬剤濃度上昇や治療薬の活性化/効果増強を実現し、重篤な副作用を抑えることにより、治療抵抗性が高く再発、転移の原因となる標的細胞を制御する新規Drug delivery activation system(DDAS)を開発することが目的である。
研究方法
膵癌、大腸癌の切除組織を対象に、癌幹細胞マーカーCD133およびCD44, c-kit, CD24, c-Metについて、セルソーターを用いてprospective isolationを行い、臨床病理学的な所見との付き合わせをおこない、該当細胞集団の生物学的な意義を検討した。更に、癌間質相互作用に着目し、手術切除癌組織サンプルより作成したfibroblastをソートして、機能解析を行った。我々が独自に開発した人工ウイルスに同定した癌細胞及び癌幹細胞膜表面上に特異的に発現する標的マーカーを認識し結合するアンテナ分子を作成・付加することにより、標的細胞に特異的に集積するように人工ウイルスを改変した。さらに人工ウイルスを高い細胞膜透過性を持ち、標的細胞内で刺激応答的に崩壊するように機能化した。in vitroにておいて作製した新規人工ウイルスの細胞特異的な治療効果を検証した。
結果と考察
本研究において、我々は癌幹細胞や治療抵抗性株に着目し、その標的分子としてCXCR4、c-Metを同定した。また、癌間質相互作用に着目した研究において、CD10を発現しているfibroblastが、特異的に膵癌細胞及び大腸癌細胞の浸潤能を亢進させることが明らかになった。さらに、本研究においては、標的細胞に特異的に集積し、治療効果をもたらす新規人工ウイルスの作成も成功した。
結論
最新の分子生物学的手法を用いて、癌治療抵抗性の根幹をなす癌幹細胞に特異的な分子の機能解析を行うことにより、有望な標的分子を同定し、標的細胞に特異的に作用する人工ウイルスの作成に成功した。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201011027C

収支報告書

文献番号
201011027Z