RNA創薬を支援するバイオイメージング技術の確立

文献情報

文献番号
201011026A
報告書区分
総括
研究課題名
RNA創薬を支援するバイオイメージング技術の確立
課題番号
H20-ナノ・若手-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
浅井 知浩(静岡県立大学大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではsiRNAの体内動態を非侵襲的、リアルタイムかつ高感度に解析する技術の確立を目的とし、siRNAの18Fポジトロン標識体の開発ならびにポジトロン断層法(PET)による動態解析技術の構築を目指した。
研究方法
事業計画2年目までに、siRNAポジトロン標識体の開発、siRNA体内動態のPET解析、近赤外蛍光インビボイメージングを用いたPET解析データの比較検証を計画通りに実施してきた。最終年度は、化学修飾siRNAおよび新規ベクターに搭載したsiRNAのPET動態解析、疾患モデル動物におけるsiRNAのPET動態解析等の応用研究に重点的に取り組んだ。
結果と考察
センス鎖3'末端にコレステロールを結合したsiRNAのアンチセンス鎖3'末端を18F標識し、化学修飾siRNAの体内動態のPET解析を試みた。コレステロール結合siRNAは、naked siRNAと比較して血中半減期が延長する様子が観察された。また、コレステロール結合siRNAは、naked siRNAと比較して肝臓に高い集積性を示した。このように化学修飾によるsiRNAの動態制御の有効性をPETイメージングすることに成功した。次に、我々がsiRNAベクターとして新たに開発した新規リポソームベクターに18F標識siRNAを搭載し、PET解析を試みた。コレステロール結合siRNAを搭載した新規ベクターでは全身からの強いシグナルが観察され、高い血中滞留性を示した。また複合体の一部が肝臓や脾臓などの細網内皮系組織に捕捉される様子が観察された。このsiRNAの挙動は、ベクターの体内動態試験結果とほぼ一致しており、in vivoにおいてsiRNAが新規ベクターにしっかりと保持され、体内動態制御がなされていることが示唆された。最後に、疾患モデル動物におけるsiRNA体内動態のPET解析を実施した。Colon26 NL-17大腸がん細胞をマウス右後肢皮下に移植し、担がんマウスを作成した。各種ベクターに18F 標識siRNAを搭載し、担がんマウスにおける体内動態をPET解析した。その結果、PEG修飾リポソームあるいはリガンド結合型リポソームに搭載したsiRNAにおいて高い腫瘍集積性が観察された。
結論
RNA創薬におけるsiRNA体内動態のPET解析技術の有用性が証明された。本技術によって医薬品候補のsiRNAの体内動態に関して有益な情報が得られることにより、RNA創薬の開発効率を高め、創薬の加速化に結び付くことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201011026B
報告書区分
総合
研究課題名
RNA創薬を支援するバイオイメージング技術の確立
課題番号
H20-ナノ・若手-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
浅井 知浩(静岡県立大学大学院 薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではsiRNAの体内動態を非侵襲的、リアルタイムかつ高感度に解析する技術の確立を目的とし、siRNAの18Fポジトロン標識体の開発ならびにポジトロン断層法(PET)による動態解析技術の構築を目指した。
研究方法
3ヶ年計画の研究事業において、siRNAポジトロン標識体の開発、siRNA体内動態のPET解析技術の構築、蛍光in vivoイメージング法との比較、各種ベクターに搭載した標識siRNAの動態解析、病態モデル動物におけるsiRNAの動態解析を実施した。
結果と考察
アンチセンス鎖3'末端にスペーサーとアミノ基を導入したsiRNAを原料とし、N-succinimidyl 4-[18F]fluorobenzoate(S18FB)を反応させ、目的化合物である18Fポジトロン標識siRNAを得た。18F標識siRNAをマウスに尾静脈内投与し、その体内動態をPET解析した。naked siRNAは投与後速やかに腎臓に集積し、膀胱に移行する様子が観察された。カチオニックリポソームに搭載したsiRNAは投与後速やかに肺に集積し、肺に留まる様子が観察された。PEG修飾リポソームに搭載したsiRNAでは、全身から強いシグナルが検出され、PEG修飾リポソームの特徴である長期血中滞留性を示すイメージデータが得られた。次に、センス鎖3'末端にコレステロールを結合したsiRNAのPET解析を試みた。コレステロール結合siRNAは、naked siRNAと比較して血中半減期が延長する様子が観察された。また、コレステロール結合siRNAは、naked siRNAと比較して肝臓に高い集積性を示した。以上のように、ベクターの利用や化学修飾によるsiRNAの動態制御の有効性を評価することに成功した。最後に、疾患モデル動物における動態解析を実施した。各種リポソームベクターに18F 標識siRNAを搭載し、担がんマウスにおける体内動態をPET解析した。その結果、PEG修飾リポソームあるいはリガンド結合型リポソームに搭載したsiRNAにおいて高い腫瘍集積性が観察された。疾患部位へのsiRNAの送達量を評価するのに本技術が有効な手段になり得ることが示唆された。
結論
RNA創薬におけるsiRNA体内動態のPET解析技術の有用性が証明された。本技術によって医薬品候補のsiRNAの体内動態に関して有益な情報が得られることにより、RNA創薬の開発効率を高め、創薬の加速化に結び付くことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201011026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
small interfering RNA(siRNA)は次世代医薬品の有力候補であるが、その生体内動態は十分な解析方法がないゆえにほとんどわかっていない。本研究ではsiRNAのポジトロン標識体を新たに開発し、siRNAの体内動態を非侵襲的、リアルタイムかつ高感度にPET解析することに成功した。さらに、本研究事業で開発した動態解析技術を用い、siRNAベクターの利用や化学修飾による体内動態制御の有効性を明らかにした。
臨床的観点からの成果
医薬品候補のsiRNAの体内動態に関して有益な情報が得られるようになり、RNA創薬の開発効率を高め、創薬の加速化に結び付くと考えられる。さらにPET技術は、ヒトマイクロドーズ試験への応用が可能であり、これが実現すればさらなる開発効率の向上が期待できる。本研究事業の成果により、国民を悩ます疾病の克服を目指したsiRNA医薬品の開発にプラスの波及効果を生むことが期待される。
ガイドライン等の開発
ガイドライン等の開発はない
その他行政的観点からの成果
近年、マイクロドーズ臨床試験実施に関するガイダンスが作成され、新薬の開発効率の向上および開発期間の短縮に向けて盛んに研究が行われているが、新薬候補の被験物質は低分子化合物が中心である。本研究事業は、相対的に高分子である核酸医薬品や動態制御能を有するDDS医薬品の将来的なマイクロドーズ試験を見据えており、得られた成果によって基礎的なデータの取得が可能となった。
その他のインパクト
本研究事業の研究テーマの成果などが評価され、平成23年度日本薬学会東海支部 学術奨励賞を受賞した。また、以下の学会の招待講演において成果を公表した。
日本薬学会第131年会(2011年3月)、第28回製剤設計研究会(2010年10月)、日本薬学会第130年会(2010年3月)、第25回日本DDS学会(2009年7月)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
19件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hatanaka, K., Asai, T., Koide, H. et al.
Development of double-stranded siRNA labeling method using positron emitter and its in vivo trafficking analyzed by positron emission tomography
Bioconjug. Chem. , 21 , 756-763  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2015-06-16

収支報告書

文献番号
201011026Z