文献情報
文献番号
202428016A
報告書区分
総括
研究課題名
香料を含む食品添加物の遺伝毒性評価スキームの構築に関する基盤研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KA1008
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 圭一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター ゲノム安全科学部)
研究分担者(所属機関)
- 本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所)
- 安井 学(国立医薬品食品衛生研究所ゲノム安全科学部)
- 古濱 彩子(国立医薬品食品衛生研究所 ゲノム安全科学部)
- 佐々 彰(千葉大学 大学院理学研究院生物学研究部門)
- 石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 病理部)
- 鈴木 孝昌(国立医薬品食品衛生研究所 ゲノム安全科学部)
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
26,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
Ames/QSARは、実試験を必要とせず遺伝毒性を予測しうる点で画期的な技術であるが、更にリードアクロス手法の活用を検討してin silico評価を順次行ない、変異原性のリスクを予測・評価するスキームの確立を目指す。また、in vitro遺伝毒性試験特異的な陽性反応を低減することを目的に、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)代謝をより反映したin vitro遺伝毒性試験の構築を目指す。各種情報ソースから遺伝毒性が疑われた物質については、発がん性包括試験を実施することで精緻に安全性評価を可能とするデータの提供も視野に入れる。さらに、発がんに関与するとされるクロマチン構造変化を伴うエピジェネティックな毒性検出方法の開発も検討する。これら研究を進めることで、香料を含む食品添加物の階層的な遺伝毒性評価系スキームと短期発がん予測の確立に資する基盤データを得る。
研究方法
本研究を実施するにあたり、以下
・ in silico手法を用いた香料スクリーニング評価法の提案
・ グルタチオン補充による第Ⅱ相薬物代謝を評価に入れたin vitro遺伝毒性試験の構築
・ 包括的毒性試験によるin silico評価系の精緻化
・ in vitro遺伝毒性試験をプラットフォームとしたエピジェネティック作用評価法の開発と検証
・ DNAメチル化異常を介したゲノム不安定性誘発作用のスクリーニング系の開発
の5つアプローチを並行して進めることで、香料を含む食品添加物の階層的遺伝毒性評価スキームの構築と短期発がん性予測に資する知見を集積し、当該物質の安全性予測手法の提案に繋げる。
・ in silico手法を用いた香料スクリーニング評価法の提案
・ グルタチオン補充による第Ⅱ相薬物代謝を評価に入れたin vitro遺伝毒性試験の構築
・ 包括的毒性試験によるin silico評価系の精緻化
・ in vitro遺伝毒性試験をプラットフォームとしたエピジェネティック作用評価法の開発と検証
・ DNAメチル化異常を介したゲノム不安定性誘発作用のスクリーニング系の開発
の5つアプローチを並行して進めることで、香料を含む食品添加物の階層的遺伝毒性評価スキームの構築と短期発がん性予測に資する知見を集積し、当該物質の安全性予測手法の提案に繋げる。
結果と考察
国内での使用量が多い200香料について、4種類のAmes/QSARによる評価と遺伝毒性試験結果に関する情報収集を実施した。4種類のモデル全てで陰性であるのは約8割であった。遺伝毒性試験情報については、200香料中132香料で何等かの遺伝毒性試験結果の情報を得ることができ、42香料でAmes試験陽性(equivocalを含む)の懸念が見られた。QSAR偽陰性の懸念がある香料が存在し、スクリーニング評価を行う際に有益となる知見が得られた。グルタチオン(GSH)補充したTK6試験のコントロール物質として、シクロホスファミドが利用可能であることを明らかにした。並びに、GSHと同じチオール基を有するジチオトレイトールを添加したTK6試験を実施し、GSHが4-メチル-2-ペンタナールの解毒機序の関与と共に、遺伝毒性が陰性となることを考察した。in vitro系でGSH解毒機序を理解することは、遺伝毒性評価の精緻化やフォローアップに有用であることが示唆された。TK遺伝子をレポーターとしたin vitroエピ遺伝毒性試験法(エピTK試験)を用いて、isoeugenol、methyleugenol、trichloroethyleneを評価して陰性の結果を得た。またエピ遺伝毒性陽性の12-O-Tetradecanoylphorbol-13-acetateについて、ヒストンアセチル化を低下させる作用を同定した。in silico及びin vitro試験で陽性となった4-methoxycinnamaldehyde(MCA)について、gpt deltaラットを用いた一般毒性・遺伝毒性・発がん性包括試験を実施した。本年度は28日間の予備試験を実施し、本試験の用量設定、検索臓器を設定した。本試験では、雄性gpt deltaラットにMCAを50、150及び500 mg/kgの用量で13週間反復投与し、一般毒性評価を開始した。ナノポア型シークエンサーMinIONを用いて得られた電流値変化データFast5ファイルを、GuppyベースコーラーにてmodBAMファイルに変換することにより、CpGサイトのメチル化情報を取得し、modkitソフトウエアにて自動的にグローバルなメチル化状態を算出する解析系を構築した。標準メチル化DNAを用いた希釈系列ンプルの測定により、メチル化レベルと相関した定量的な測定結果が得られた。
結論
本研究班では、効率的な評価を可能とするAmes QSARを用いた遺伝毒性評価の有効性と、細胞レベルでのフォローアップ試験の可能性を認めた。さらにクロマチン構造に影響するエピジェネティックな変化を検出する2つのプラットフォームの構築についても成果が得られた。in silico及びin vitroで陽性となったMCAの包括的毒性評価は、本剤の安全性評価に資するデータを提供できるとともに、遺伝毒性・発がん性予測の精緻化に資するものである。
以上の成果は、次年度以降の本研究班の基盤となる成果であり、最終的には香料の遺伝毒性評価の効率化に繋がるものである。
以上の成果は、次年度以降の本研究班の基盤となる成果であり、最終的には香料の遺伝毒性評価の効率化に繋がるものである。
公開日・更新日
公開日
2025-10-07
更新日
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