複製変異型ウイルスを基軸とした悪性脳腫瘍に対する複合的遺伝子治療法の開発

文献情報

文献番号
199700753A
報告書区分
総括
研究課題名
複製変異型ウイルスを基軸とした悪性脳腫瘍に対する複合的遺伝子治療法の開発
課題番号
-
研究年度
平成9(1997)年度
研究代表者(所属機関)
矢崎 貴仁(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 ヒトゲノム・遺伝子治療研究事業
研究開始年度
平成9(1997)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経膠腫に代表される悪性脳腫瘍は従来のいかなる治療法によっても根治困難であり、遺伝子治療は最も期待できる新たな治療法として注目されている。 変異複製型HSV-1(G207)のげっ歯類モデルを用いた抗腫瘍効果、およびサルを用いた正常脳組織への安全性はすでに確認しているが、浸潤・増殖能の高い腫瘍に対してはウイルス複製が腫瘍の増殖に追い付かない。本研究ではG207をヘルパーウイルスとして、浸潤抑制が期待されるTIMP2を発現するdefective HSV vectorを構築する。その結果、ヘルパーウイルス自身の腫瘍細胞障害効果とdefective vectorから発現されるTIMP2の浸潤抑制作用を同時に発揮する新たな変異型HSV-1のシステムを完成させることを目的とする。
研究方法
(1)遺伝子組換えウイルスの作製:TIMP2 cDNAを常法にてサブクローニングし、アンプリコンプラスミドに組み込んだ後、G207 viral DNAとともにVero cellへtransfectionする。TIMP2遺伝子の挿入された新たな遺伝子組換えウイルスを選別する。(2)組換えウイルスの生物学的活性の解析:in vitroでVero cellに感染させ、ウイルス増殖能・温度感受性・血清依存性・single step growth等の解析を行い、親ウイルスのG207と比較検討する。(3)in vivoでの解析:組換えウイルスが最も高い活性を示した腫瘍細胞をヌードマウス皮下に移植し、組換えウイルスによる治療効果を判定する。その後、頭蓋内腫瘍移植モデルを用いて生存解析と腫瘍浸潤動態を組織学的に解析する。
結果と考察
G207単独、TIMP-2の製剤であるBB94をG207と組み合わせた場合及びTIMP-2を発現するプラスミドベースのdefective HSV vectorを感染させた場合につき検討した。transwell chamberを用いたin vitroの系ではdefective HSV vectorを感染させた場合が最も浸潤抑制効果効果が高まることが確認された。in vivoでのヌードマウスを用いた皮下腫瘍モデルでは、やはりdefective HSV vector感染群で腫瘍成長抑制効果が高く、頭蓋内モデルでは周囲組織への浸潤抑制が確認できた。
結論
G207によるウイルス療法はこれまでの遺伝子治療に比べ高い治療効果と安全性を発揮するが、defective HSV vectorによりTIMP2の発現を組み合わせることで、浸潤抑制を伴うより高い治療効率を実現可能であった。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)