国内流通食品に検出されるカビ毒に対する安全性確保の方策の確立に資する研究

文献情報

文献番号
202428004A
報告書区分
総括
研究課題名
国内流通食品に検出されるカビ毒に対する安全性確保の方策の確立に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA1006
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
吉成 知也(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部第四室)
研究分担者(所属機関)
  • 渋谷 淳(国立大学法人東京農工大学大学院 農学研究院動物生命科学部門)
  • 服部 一夫(東京農業大学 応用生物科学部)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
9,520,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業はカビ毒を研究対象とし、二つのテーマに取り組む。一つ目が「基準値が設定されるカビ毒に関する研究」で、対象カビ毒はオクラトキシンA(OTA)である。OTAについては、麦類に対して基準値を設定することが決定された。そのため、麦中のOTA検出のための機器分析法や簡易分析法を整備しておく必要がある。二つ目のテーマが、「新興カビ毒モニリフォルミン(MON)についての研究」である。MONは、麦類などでの検出が報告されており、ラットにおいては致死毒性を示し、国際的に注目を浴びている。そのため、日本でMONを規制する必要性を検討するためのデータの取得、及びJECFAなどの国際的なリスク評価機関への汚染実態データの提供が必要とされている。そこで、本研究事業においては、MONについて2つの課題に取り組む。
研究方法
テーマ1 基準値が設定されるカビ毒に関する研究 
課題1-① DONとOTAの同時機器分析法の開発
DON・OTA人口汚染小麦試料を調製し、DONとOTAの同時分析法で両カビ毒を定量した。
課題1-② 市販のOTA測定用簡易迅速キットの性能評価
市販OTA測定用のイムノクロマトキット 2種及びELISAキット2種を用いて、DON・OTA人口汚染小麦試料を測定した。
課題1-③ 小麦におけるOTA汚染機構の解明
穀類のOTA汚染の主要原因菌であるPenicillium verrucosumとAspergillus westerdijkiaeの保存株を用いて、小麦における培養温度及び加水率によるOTA生産条件を検討した。
テーマ2 新興カビ毒MONについての研究
課題2-① MONの毒性に関する研究
MONによる腎毒性の発現機序を検討することを目的として、雄性マウスにおいて、MONを40 mg/kgの割合で単回経口投与し、6時間後、24時間後に剖検し、腎臓を採取した。RNA-Seq解析と免疫染色を実施した。
課題2-② MONの分析法の開発と汚染実態調査
国内に流通する穀類(小麦、大麦、ライ麦、はと麦及びコーン、米)合計399検体を収集し、MON汚染濃度を調べた。
結果と考察
テーマ1 基準値が設定されるカビ毒に関する研究
課題1-① DONとOTAの同時分析法の開発
DONについては、個別分析法の値に対して同時分析法の分析値は87~105%であった。OTAについては、個別分析法の値に対して同時分析法の分析値は87~99%であった。
課題1-② 市販のOTA測定用簡易迅速キットの性能評価
添加回収試験と人工汚染検体を用いた検討の結果、市販のOTA簡易測定キットの一部は、小麦及び大麦中のOTA汚染のスクリーニング検査に用いることができる性能を有していることが明らかとなった。
課題1-③ 小麦におけるOTA汚染原因菌の究明
小麦では十分な水分量があれば低温の貯蔵環境下でOTA汚染が発生しうるため、水分活性の管理がOTA汚染の防除に重要であることが明らかとなった。
テーマ2 新興カビ毒MONについての研究
課題2-① MONの毒性に関する研究
MONの腎毒性の機構は、MON又はその代謝産物が尿細管細胞を直接障害することによるものであることが示唆された。
課題2-② MONの分析法の開発と汚染実態調査
全検体のうち、142検体(37%)から定量限界値(10 µg/kg)以上のMONが検出された。
結論
(1)基準値設定に係るカビ毒の分析法に関する研究
多機能カラムを用いた同時分析法で得られた分析値は、DONを公定法で、OTAを実態調査で用いられた分析法でそれぞれ分析して得られた分析値と同等であった。この結果より、開発した同時分析法は、単独の分析法の代替法として使用できることが示された。また、検討した簡易測定キットはいずれもOTAの迅速簡便なスクリーニングに使用可能であると考えられた。さらに、小麦におけるOTA汚染原因菌についての解析の結果、室温より低温の貯蔵環境下でもA. westerdijkiaeによる高度なOTA汚染が発生する可能性があることが示された。
(2)新興カビ毒MONに関する研究
一昨年と昨年度に開発した分析法を用いて、合計 399検体の穀物加工品を対象とした汚染調査を実施した。MONは、小麦粉(国産)、ハト麦加工品、ライ麦、トウモロコシ加工品から主に検出された。また、MONによる腎毒性の発現機序を検討することを目的として、MON単回投与後の腎臓における遺伝子発現解析と免疫組織化学的解析を実施した。その結果、MONはマウスの腎臓を標的とし、経口摂取されたMONは腎臓で代謝され、活性中間体や活性酸素種が腎尿細管毒性を誘発し、近位尿細管壊死を引き起こす可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2025-10-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-10-07
更新日
-

文献情報

文献番号
202428004B
報告書区分
総合
研究課題名
国内流通食品に検出されるカビ毒に対する安全性確保の方策の確立に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA1006
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
吉成 知也(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部第四室)
研究分担者(所属機関)
  • 渋谷 淳(国立大学法人東京農工大学大学院 農学研究院動物生命科学部門)
  • 服部 一夫(東京農業大学 応用生物科学部)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究事業はカビ毒を研究対象とし、二つのテーマに取り組む。一つ目が「基準値が設定されるカビ毒に関する研究」で、対象カビ毒はオクラトキシンA(OTA)である。OTAについては、麦類に対して基準値を設定することが決定された。そのため、麦中のOTA検出のための機器分析法や簡易分析法を整備しておく必要がある。二つ目のテーマが、「新興カビ毒モニリフォルミン(MON)についての研究」である。MONは、麦類などでの検出が報告されており、ラットにおいては致死毒性を示し、国際的に注目を浴びている。そのため、日本でMONを規制する必要性を検討するためのデータの取得、及びJECFAなどの国際的なリスク評価機関への汚染実態データの提供が必要とされている。そこで、本研究事業においては、MONについて2つの課題に取り組む。
研究方法
テーマ1 基準値が設定されるカビ毒に関する研究 
課題1-① DONとOTAの同時機器分析法の開発
多機能カラムを用いて小麦中のDONとOTAを精製し、LC-MS/MSで定量した。
課題1-② 市販のOTA測定用簡易迅速キットの性能評価
市販OTA測定用のイムノクロマトキット及びELISAキットについて、添加回収試験と人口汚染小麦試料を用いて性能評価を実施した。
課題1-③ 小麦におけるOTA汚染機構の解明
穀類のOTA汚染の主要原因菌であるPenicillium verrucosumとAspergillus westerdijkiaeの保存株を用いて、小麦における培養温度及び加水率によるOTA生産条件を検討した。
テーマ2 新興カビ毒MONについての研究
課題2-① MONの毒性に関する研究
マウスを用いたMONの単回投与試験、28日間反復投与による一般毒性試験及び腎臓を対象としたRNA-Seq解析と免疫染色を実施した。
課題2-② MONの分析法の開発と汚染実態調査
MONの分析法の開発及び国内に流通する穀類合計399検体を収集し、MON汚染濃度を調べた。
結果と考察
テーマ1 基準値が設定されるカビ毒に関する研究
課題1-① DONとOTAの同時分析法の開発
多機関共同試験の結果、開発した同時分析法の妥当性が確認された。また、個別分析法による測定値と同時分析法の測定値はほぼ同等であったことから、同時分析法は個別分析法と同等の性能を有することが確認された。
課題1-② 市販のOTA測定用簡易迅速キットの性能評価
添加回収試験と人工汚染検体を用いた検討の結果、市販のOTA簡易測定キットの一部は、小麦及び大麦中のOTA汚染のスクリーニング検査に用いることができる性能を有していることが明らかとなった。
課題1-③ 小麦におけるOTA汚染原因菌の究明
小麦では十分な水分量があれば低温の貯蔵環境下でOTA汚染が発生しうるため、水分活性の管理がOTA汚染の防除に重要であることが明らかとなった。
テーマ2 新興カビ毒MONについての研究
課題2-① MONの毒性に関する研究
MONはマウスに致死作用を示した。その作用機序は、MON又はその代謝産物が尿細管細胞を直接障害することによるものであることが示唆された。
課題2-② MONの分析法の開発と汚染実態調査
全検体のうち、142検体(37%)から定量限界値(10 µg/kg)以上のMONが検出された。
結論
(1)基準値設定に係るカビ毒の分析法に関する研究
本事業で開発した、多機能カラムを用いたDONとOTAの同時分析法は、多機関共同試験及び汚染小麦を用いた検討により、単独の分析法の代替法として使用できることが示された。また、検討した簡易測定キットはいずれもOTAの迅速簡便なスクリーニングに使用可能であると考えられた。さらに、小麦におけるOTA汚染原因菌について、新たな情報が得られた。
(2)新興カビ毒MONに関する研究
イオン交換カートリッジによる精製法とイオンペア剤を用いたHPLCによるMONの分析法を開発した。さらに、穀物加工品を対象とした汚染調査を実施し、MONは穀類に検出されることが明らかとなった。また、MONによる腎毒性の発現機序を検討することを目的として、MON単回投与後の腎臓における遺伝子発現解析と免疫組織化学的解析を実施した。その結果、MONはマウスの腎臓を標的とし、経口摂取されたMONは腎臓で代謝され、活性中間体や活性酸素種が腎尿細管毒性を誘発し、近位尿細管壊死を引き起こす可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2025-10-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-10-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202428004C

収支報告書

文献番号
202428004Z