国産技術に基づく不整脈治療用衝撃波アブレーションシステムの開発

文献情報

文献番号
201011017A
報告書区分
総括
研究課題名
国産技術に基づく不整脈治療用衝撃波アブレーションシステムの開発
課題番号
H20-活動・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
下川 宏明(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 安田 聡(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 伊藤 健太(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 福田 浩二(東北大学病院 循環器内科)
  • 若山 裕司(東北大学病院 循環器内科)
  • 高山 和喜(東北大学 大学院医学系研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 頻脈性不整脈の治療は従来の薬物療法に加え、非薬物療法として、原因となる心筋組織を焼灼する高周波カテーテルアブレーションによる根治術の開発が進んできた。一方、高周波カテーテルアブレーションには原理的に不可避な2つの大きな問題点がある。1つは心筋深層(心外膜側)起源の不整脈が治療できない点、もう1つは心内膜側への通電に伴う血栓・塞栓症である。
 本研究は、これらの問題点を克服するために、血液が凝固するような温度上昇を伴わずに、任意の部位に収束衝撃波を照射し、不整脈の原因となる心筋を壊死させ、治療効果を及ぼしうるアブレーションシステムの開発を目的とする。
 本治療システムにて薬物を使用せず頻脈性不整脈のコントロールが可能となれば、特に心臓性突然死の重要な原因の一つと考えられる器質的心疾患治療に革新的な進歩をもたらすことが期待される。
研究方法
(1)我々は昨年度の段階で衝撃波収束装置の小型化に成功しており、大型動物のin vivo実験を実施する。
(2)工学的基礎研究における心筋細胞損傷実験に関して組織学的手法を用い、衝撃波の深達度・損傷の程度を評価する。
(3)組織標本における衝撃波の深達度の検証を検証する。なお、動物実験では、動物愛護に十分配慮し、東北大学動物実験審査委員会の審査を受けて行う。
結果と考察
 14Fシースが使用可能なサイズの外径 4 mmの動物実験用カテーテルの試作を完了した。まず、開心術後の左心室外膜に動物実験用カテーテルの先端を密着させ、衝撃波の照射後、照射箇所の深さ1.0mm前後で、出血箇所が認められた。次に、心腔内からの照射を行い、十分な心筋損傷を与えうるか、電気生理学的な損傷を与え、頻脈性不整脈を治療しうるかを検討した。電気生理学的な損傷を確認するための初段階として、房室結節に対して衝撃波を照射し、房室ブロックを作成しうるかを検討した。通常の電極カテーテルを頚静脈経由で右心房に挿入して、His束電位の確認後、衝撃波アブレーションカテーテルと交換し、房室結節に対して衝撃波を発射した結果、接合部調律の出現を確認した。この時の衝撃波最大過剰圧は35 MPaであった。
結論
 不整脈治療用衝撃波アブレ-ションシステムは、任意の点に衝撃波を収束させることが可能であり、あらゆる深度の起源をもつ不整脈に対して有効な治療法となりうる。今後、現在までの成果を元にin vivo実験を進め、臨床応用につなげていく。

公開日・更新日

公開日
2011-09-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201011017B
報告書区分
総合
研究課題名
国産技術に基づく不整脈治療用衝撃波アブレーションシステムの開発
課題番号
H20-活動・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
下川 宏明(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 安田 聡(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 伊藤 健太(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 福田 浩二(東北大学病院 循環器内科)
  • 若山 裕司(東北大学病院 循環器内科)
  • 高山 和喜(東北大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 頻脈性不整脈の治療は従来の薬物療法に加え、非薬物療法として、原因となる心筋組織を焼灼する高周波カテーテルアブレーションによる根治術の開発が進んできた。一方、高周波カテーテルアブレーションには原理的に不可避な2つの大きな問題点がある。1つは心筋深層(心外膜側)起源の不整脈が治療できない点、もう1つは心内膜側への通電に伴う血栓・塞栓症である。
 本研究は、これらの問題点を克服するために、血液凝固を伴わずに、任意の部位に収束衝撃波を照射し、不整脈の原因となる心筋を壊死させ、治療効果を及ぼしうるアブレーションシステムの開発を目的とする。
 本治療システムにて薬物を使用せず頻脈性不整脈のコントロールが可能となれば、特に心臓性突然死の重要な原因の一つと考えられる器質的心疾患治療に革新的な進歩をもたらすことが期待される。

研究方法
(1)光ファイバ先端におけるレーザー光の集光効率と端面の耐久性を高めるため、従来とは異なる光ファイバ端末の形状と加工法を検討する
(2)動物実験用カテーテルの試作を行う
(3)心筋細胞損傷実験に関して組織学的手法を用い、衝撃波の深達度・損傷の程度を評価する。(4)大型動物のin vivo実験を実施する。
結果と考察
 光ファイバ端末の損傷を伴わずに、強度の安定した水中衝撃波を数百回以上発生させることが可能になり、発生した水中衝撃波を外径4 mmの反射鏡で反射収束させることで、半径0.5 mmの局所領域に30 MPaから60 MPaの衝撃波を照射し、ラット筋肉組織に損傷を与えうることを実験的に確認した。さらに、14Fシースが使用可能なカテーテルを試作し、開心術後の左心室外膜にカテーテルの先端を密着させ、衝撃波の照射後、照射箇所の深さ1.0mm前後で、出血箇所を認めた。次に、房室結節に対して心腔内からの衝撃波を照射し、房室ブロックを作成しうるかを検討した。通常の電極カテーテルを頚静脈経由で右心房に挿入して、His束電位の確認後、衝撃波アブレーションカテーテルと交換し、房室結節に対して衝撃波を発射した結果、接合部調律の出現を確認した。
結論
不整脈治療用衝撃波アブレ-ションシステムは、発熱による血液凝固を伴わずに任意の局所部位の心筋を壊死させることが可能であり、あらゆる深度の起源をもつ不整脈に対して有効な治療法となりうる。今後、現在までの成果を元にin vivo実験を進め、臨床応用につなげていく。

公開日・更新日

公開日
2011-09-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201011017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来の頻脈性不整脈治療用カテーテルに衝撃波が応用可能であることを確認した。具体的には、1)心筋近傍で操作可能な衝撃波発生用の最適なレーザ光源の同定(Qsw Ho:YAGレーザ)、2)Qsw Ho:YAGレーザ光の伝送ファイバの同定(無水石英製光ファイバ)、3)光収束設計に基づく最適なファイバの光放出先端形状の同定(紡錘型形状)、4)超小型衝撃波発生装置と反射器からの衝撃波による小動物(マウス)筋肉損傷の確認。以上より本システムの有用性が確認された。これらの成果を国内外の学会で発表し、反響を得た。
臨床的観点からの成果
衝撃波アブレーション装置をブタ心腔内のin vivo実験へ応用した。心腔内に留置した衝撃波アブレーションカテーテルから、衝撃波を発生させ、房室結節の伝導障害に成功した。本システムが臨床応用可能なシステムであることを証明した。
ガイドライン等の開発
特記すべきことなし
その他行政的観点からの成果
特記すべきことなし
その他のインパクト
日経産業新聞(2009年8月11日掲載)で、本研究による衝撃波アブレーションシステムは、新しい頻脈性不整脈治療用カテーテルとして期待がされると紹介された。高周波電流を使う現行の技術に対して優れた点として、熱が発生しないため血栓ができず、脳梗塞などの副作用を予防できることと、衝撃波を利用する利点として心筋の奥深くに届くため、高周波電流ではできない部位の治療ができる可能性があることを報じられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
14件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
5件
「国内出願」3件「国際出願」2件
その他成果(特許の取得)
2件
取得特許:衝撃波アブレーションシスム、特許第4635233号、光ファイバーおよびそれを用いた水中衝撃波発生装置、特許第5435739号
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

特許の名称
衝撃波収束装置、衝撃波発生装置及び衝撃波アブレーションシステム
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2012-282891
発明者名: 下川宏明、高山和喜、山本裕朗、長谷部雄飛、早坂庄吉
権利者名: 国立大学法人東北大学
出願年月日: 20121226
国内外の別: 国内
特許の名称
光ファイバーおよびそれを用いた水中衝撃波発生装置
詳細情報
分類:
特許番号: 特願2010-234858
発明者名: 下川宏明、高山和喜、山本裕朗
権利者名: 国立大学法人東北大学
出願年月日: 20101019
国内外の別: 国内
特許の名称
光ファイバーおよびそれを用いた水中衝撃波発生装置
詳細情報
分類:
特許番号: PCT/JP2011/67140
発明者名: 下川宏明、高山和喜、山本裕朗
権利者名: 国立大学法人東北大学
出願年月日: 20110727
国内外の別: 国外
特許の名称
衝撃波収束装置、衝撃波発生装置及び衝撃波アブレーションシステム
詳細情報
分類:
特許番号: PCT/JP2013/84615
発明者名: 下川宏明、高山和喜、山本裕朗、長谷部雄飛、早坂庄吉
権利者名: 国立大学法人東北大学
出願年月日: 20131225
国内外の別: 国外
特許の名称
衝撃波アブレーションシスム
詳細情報
分類:
特許番号: 4635233
発明者名: 下川宏明、高山和喜、嶋實
権利者名: 株式会社ハイレックスコーポレーション、国立大学法人東北大学
出願年月日: 20070906
取得年月日: 20101203
国内外の別: 国内
特許の名称
光ファイバーおよびそれを用いた水中衝撃波発生装置
詳細情報
分類:
特許番号: 5435739
発明者名: 下川宏明、高山和喜、山本裕朗
権利者名: 国立大学法人東北大学
出願年月日: 20101019
取得年月日: 20131220
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yuhi Hasebe, Hiroaki Yamamoto, Hiroaki Shimokawa et al.
Development of a Novel Shock Wave Catheter Ablation System - The First Feasibility Study in Pigs
PLOS ONE , 10 (1) , e0116017-  (2015)
10.1371

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201011017Z