食品用器具・容器包装等の衛生的な製造管理等の推進に資する研究

文献情報

文献番号
202428002A
報告書区分
総括
研究課題名
食品用器具・容器包装等の衛生的な製造管理等の推進に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA1004
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤原 恒司(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 村田 康允(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
10,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
器具・容器包装、おもちゃおよび洗浄剤(以下、「器具・容器包装等」)の安全性は、食品衛生法の規格基準により担保されているが、昨今のSDGs(持続可能な開発目標)などの国際的な取組として、新規材質の開発、再生材料の利用など、多様な製品が製造されつつある。そこで本研究では、器具・容器包装の自主的な製造管理に関する研究、器具・容器包装の原材料の安全性に関する研究、市販製品に残存する化学物質に関する研究を実施した。
研究方法
器具・容器包装の自主的な製造管理に関する研究では、分析機器メーカーと協力して、GC/MS分析を行うための情報を収集した。さらに、業界団体と協力して、ゴム及び紙製器具・容器包装の自主的な製造管理の内容を検討した。
器具・容器包装の原材料の安全性に関する研究では、業界団体と協力して、ゴム及び紙の原材料についてQSAR解析およびAmes試験により遺伝毒性の確認を行った。市販製品に残存する化学物質に関する研究では、民間の登録検査機関および公的な衛生研究所による試験室間共同実験、協力研究者による規格試験法の改良および代替試験法の開発、市販製品、文献等を用いた基礎的研究および実態調査を行った。
結果と考察
器具・容器包装の自主的な製造管理に関する研究では、ポジティブリスト(PL)収載物質の分析情報の収集、ゴムおよびゴム製器具・容器包装の製造管理に関する検討、紙および紙製器具・容器包装の製造管理に関する検討を行った。ポジティブリスト収載物質の分析情報の収集では、75種のPL収載物質を対象としてGC/MS分析の情報を収集し、73物質についてマススペクトル、測定限界等の情報を得た。ゴムおよびゴム製器具・容器包装の製造管理に関する検討では、将来的なポジティブリスト制度の導入を見据え、ポジティブリストの在り方の検討、食品用途のゴムの原材料として使用される物質の調査および結果の整理、原材料の安全性確認の在り方の検討を行った。紙および紙製器具・容器包装の製造管理に関する検討では、食品用途の紙の原材料として使用される可能性がある220物質について、その内容を精査した。さらに、原材料のばく露量を推定した。
器具・容器包装の原材料の安全性評価に関する研究では、紙及びゴムの原材料として使用される物質を対象として、基本的な物理的・化学的データの情報を収集し、整理するとともに、それらの毒性評価として、閾値の有無を判断するためにAmes試験のQSAR予測などのin silico解析を活用した遺伝毒性(変異原性)の確認を行った。その結果、2つの解析ソフトのいずれかで陽性の懸念がある物質が存在した。
市販製品に残存する化学物質に関する研究では、合成樹脂製器具・容器包装に含有される非意図的添加物質の探索、ホルムアルデヒド定量分析法の検討と性能評価、規格試験法におけるビスフェノールAの定量下限、紙製ストローに含まれるペル及びポリフルオロアルキル化合物群、ポリ塩化ビニル製おもちゃの使用可塑剤調査、リサイクルプラスチックに由来する玩具等の金属含有量に関する調査、器具・容器包装に用いられる安定剤に関する研究を実施した。合成樹脂製器具・容器包装に含有される非意図的添加物質の探索では、NIASについて報告された21報について調査を行い、11種類の樹脂から検出が報告されたのべ1562化合物を収載した。ホルムアルデヒド定量分析法の検討と性能評価では、改良法を構築し、室間共同実験を実施して性能を評価した。規格試験法におけるビスフェノールAの定量下限については、LC-UV、LC-PDA、LC-FL、LC-MS及びLC-MS/MSによる測定を行い、検出器ごとに定量下限値を推定した。紙製ストローに含まれるペル及びポリフルオロアルキル化合物群では、紙製ストロー中のPFASsを測定した。その結果、市販の紙製ストロー(海外製)よりも、日本製紙連合会より供与を受けた紙製ストローの方がPFASs含有量は低かった。ストローに含まれたPFASsは原紙に由来すると推察された。ポリ塩化ビニル製おもちゃの使用可塑剤調査では、2024年度に購入した市販PVC製おもちゃに使用される可塑剤を調査し、これまでの結果と比較した。リサイクルプラスチックに由来する玩具等の金属含有量に関する調査では、リサイクルプラスチックが用いられている可能性のある玩具16検体について、材質中の元素含有量の調査を行った。器具・容器包装に用いられる安定剤に関する研究では、35物質を対象物質として、紫外線照射による分解等の有無を確認した。
結論
以上の研究成果は、我が国の器具・容器包装等に使用される化学物質の安全性確保と食品衛生行政の発展に大きく貢献するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2025-10-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-10-07
更新日
-

文献情報

文献番号
202428002B
報告書区分
総合
研究課題名
食品用器具・容器包装等の衛生的な製造管理等の推進に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22KA1004
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
六鹿 元雄(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤原 恒司(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 村田 康允(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
  • 阿部 裕(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
食品衛生基準科学研究費補助金 分野なし 食品安全科学研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
器具・容器包装、おもちゃ及び洗浄剤(以下、「器具・容器包装等」)の安全性は、食品衛生法の規格基準により担保されているが、昨今のSDGs(持続可能な開発目標)などの国際的な取組として、新規材質の開発、再生材料の利用など、多様な製品が製造されつつある。そこで本研究では食品用器具・容器包装等の安全性確保を目的として、器具・容器包装の自主的な製造管理に関する研究、器具・容器包装の原材料の安全性に関する研究、市販製品に残存する化学物質に関する研究を実施した。
研究方法
器具・容器包装の自主的な製造管理に関する研究では、分析機器メーカーと協力して、GC/MS及びLC/MS/MS分析を行うための情報を収集した。さらに、業界団体と協力して、ゴム及び紙製器具・容器包装の自主的な製造管理の内容を検討した。
器具・容器包装の原材料の安全性に関する研究では、業界団体と協力して情報を収集したゴム及び紙の原材料についてQSAR解析及びAmes試験による遺伝毒性の確認を行った。
市販製品に残存する化学物質に関する研究では、民間の登録検査機関及び公的な衛生研究所と協力して食品衛生法で定められた試験法及びその代替試験法のうち性能未評価の方法についての性能評価、並びに改良法の開発などの性能の向上に関する検討、規格試験法が設定されていない化学物質の分析法の開発、製品中の残存量や溶出量等が明らかでない化学物質の調査等を行った。
結果と考察
器具・容器包装の自主的な製造管理に関する研究では、ポジティブリスト収載物質の分析情報の収集、ゴム及びゴム製器具・容器包装の製造管理に関する検討、紙及び紙製器具・容器包装の製造管理に関する検討を行った。ポジティブリスト収載物質の分析情報の収集では、GC/MS及びLC/MS/MS分析の情報を収集し、それぞれ73及び63物質のマススペクトル、測定限界等の情報を得た。ゴム及びゴム製器具・容器包装の製造管理に関する検討では、将来的なポジティブリスト制度の導入を見据え、ポジティブリストの在り方の検討、食品用途のゴムの原材料として使用される物質の調査及び結果の整理、原材料の安全性確認の在り方の検討を行った。紙及び紙製器具・容器包装の製造管理に関する検討では、食品用途の紙の原材料として使用される可能性がある物質を精査するとともに、原材料のばく露量を推定した。
器具・容器包装の原材料の安全性評価に関する研究では、紙及びゴムの原材料として使用される物質を対象として、基本的な物理的・化学的データの情報を収集し、整理するとともに、それらの毒性評価として、閾値の有無を判断するためにAmes試験のQSAR予測などのin silico解析を活用した遺伝毒性(変異原性)の確認を行った。その結果、陽性の懸念があるものが存在した。これらについては情報収集や必要であれば追加の試験などを行い、さらに安全性の確認を行う必要があると考えられる。
市販製品に残存する化学物質に関する研究では、製品中の残存量や溶出量等が明らかでない化学物質の調査として、天然素材製器具・容器包装から溶出する全有機炭素量、紙及び竹製ストローからの金属類の溶出量、紙製ストローに含まれるペル及びポリフルオロアルキル化合物群、ポリ塩化ビニル製おもちゃの使用可塑剤、食品用器具・容器包装に用いられる安定剤に関する調査・研究を実施した。規格試験法が設定されていない化学物質の分析法の開発として、合成樹脂製器具・容器包装に含有される非意図的添加物質の探索、ポリ塩化ビニル製のおもちゃから検出された未知可塑剤、リサイクルプラスチックに由来する玩具等の金属含有量に関する調査・研究を実施した。試験法及びその代替試験法の性能評価並びに改良法の開発として、蒸発残留物試験法及び総不揮発性試験法の性能評価、総溶出物試験の開発と性能評価、ホルムアルデヒド試験法の性能評価、ビスフェノールA試験法の定量限界、カプロラクタム試験へのHPLCの適用、洗浄剤中のヒ素試験法及び重金属試験法の改良に関する調査・研究を実施した。
結論
以上の研究成果は、合成樹脂製品に含まれる化学物質の検査・監視等に有用であるほか、ゴム及び紙に対してポジティブリスト制度を導入する際に有益な情報となるとともに、SDGs(持続可能な開発目標)などの国際的な取組に対応した合成樹脂を含む有機材質間で統一されたリスク管理体制の整備を推進することができる。さらに、食品衛生基準審議会や食品安全委員会において規格基準を改正するための審議資料として活用できるほか、研究成果を論文として広く公表することで、食品等事業者及び消費者に対し、有益な情報を提供できる。このように、我が国の器具・容器包装等に使用される化学物質の安全性確保と食品衛生行政の発展に大きく貢献するものと考える。

公開日・更新日

公開日
2025-10-07
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202428002C

収支報告書

文献番号
202428002Z