構造生物学的アプローチによるアルツハイマー病の病態解明と分子標的治療の開発

文献情報

文献番号
201011013A
報告書区分
総括
研究課題名
構造生物学的アプローチによるアルツハイマー病の病態解明と分子標的治療の開発
課題番号
H21-ナノ・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
星 美奈子(京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 鍋島 陽一(京都大学 大学院医学研究科)
  • 菊地 和也(大阪大学 大学院工学研究科)
  • 廣明 秀一(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 村松 慎一(自治医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
47,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではアミロスフェロイド(ASPD)の立体構造を解明し、神経細胞上にある標的分子へのASPDの結合を阻止することで安全で効果的な新規分子標的治療法の開発に結びつけようとするものである。
研究方法
そのため、倫理面に配慮し、ASPDの(1)分子構造解析、(2)標的分子の同定と機能解析、(3)非侵襲的観測法の構築を目標として研究を遂行し以下の結果を得た。
結果と考察
目標(1)については、安定同位体標識Aβの調製法を確立し、標識ASPDの溶液NMR測定に成功した(Hiroaki et al., ICMRBS2010)。昨年の固相NMRの結果と併せ、ASPDは他のAβ凝集体とは異なる特異的な立体構造を持つことを示した。この特異的立体構造に結合するペプチドを探索し、ペプチドを得た。このペプチドによりASPD形成を阻止出来る可能性が示され、「構造情報に基づく分子標的薬剤の設計」に直結する成果を得ることが出来た。
 目標(2)については、ASPD標的分子の候補として、成熟神経細胞に特異的に発現するタンパク質を同定した。この新規標的分子の機能の解明により、成熟神経細胞に起こる死の分子機構が解明出来ると期待される。ヒトの病態をより反映した創薬モデル開発を目指して、神経細胞特異的プロモーターによりSweden型変異を持つアミロイド前駆体蛋白質を発現するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを作製し、定位脳手術によりカニクイサルの海馬に投与し、18か月後に投与側の海馬に抗ASPD抗体で陽性となる老人斑の形成を認め、ASPDを形成するモデル動物の作製に成功した。
 目標(3)については、プローブの血液脳関門(BBB)透過性が脳のイメジングでは大きな問題となるため、BBB透過能をもつ狂犬病ウイルス糖タンパク質由来ペプチドRVGを化学修飾することにより、血管内投与により上記AAVをマウス脳内中枢神経へ導入することに成功した(堀・村松・菊地、未発表データ)。RVGペプチドに加え、種々のその他のペプチドに神経細胞導入効果があることを見出した。この取り組みにより、治療効果のある抗ASPD抗体あるいはペプチドを神経細胞内で発現することが可能となり、本研究の目的とする構造情報から新たな治療法及び診断方法を開発出来ることが期待出来る。
結論
上記のとおり、目標に向けて研究は順調に進行しており、全く新しい切り口の診断と治療方法を開発する基盤を産業界に提供できるのではないかと考えている。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201011013Z