生殖・周産期に係る倫理的・法的・社会的課題(ELSI : Ethical, Legal and Social Issues)の検討のための研究

文献情報

文献番号
202427027A
報告書区分
総括
研究課題名
生殖・周産期に係る倫理的・法的・社会的課題(ELSI : Ethical, Legal and Social Issues)の検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22DA2002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 関沢 明彦(学校法人昭和医科大学 医学部産婦人科学講座)
  • 山田 崇弘(北海道大学病院 臨床遺伝子診療部)
  • 倉澤 健太郎(横浜市立大学産婦人科)
研究区分
こども家庭行政推進調査事業費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
9,043,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医学技術の進歩により出生前検査や胎児超音波検査等で胎児期から早期に先天性疾患が検索されるようになっている。しかし、NIPT以外の出生前検査や胎児超音波検査等で妊娠経過中に先天性疾患が疑われた際の、妊婦及び家族への告知の仕方、情報提供の在り方や意思決定支援については統一された見解はなく、更なる検討が必要と考えられる。そこで、①生殖補助医療の普及・進展を踏まえた生殖・周産期に関するELSI(Ethical, Legal and Social Issues)の課題を明らかにすること、②妊婦や家族への告知の在り方、情報提供の在り方について現状を明らかにすること、③全国的な先天異常についてモニタリングを行い、動向を把握することを目的とした。本年度は調査・分析を行い、それを踏まえ、我が国における今後の胎児超音波のあり方に関する提言をまとめた。
研究方法
3つの分担班に分かれ、以下の検討課題に取り組んだ。

①「胎児超音波検査の実態調査」
妊産婦、産科医療機関、出生前コンサルト小児科医それぞれに実施した量的調査の結果を分析した。

②「妊娠中の超音波検査についての質的調査」・「妊娠中の超音波検査に関するELSI課題の整理」
胎児超音波検査を受検し、胎児に何らかの異常が指摘された経産婦へ質的調査を実施、結果を分析した。また、妊娠中の超音波検査に関して、文献レビューや国内のガイドライン等の確認を行い、本研究班の調査結果も踏まえ、我が国において優先すべき胎児超音波検査のELSI課題を整理した。

③「我が国の先天異常発生状況の推移とその影響因子に関する研究」
全国規模モニタリングを日本産婦人科医会先天異常モニタリング調査によるデータから収集し横浜市立大学内に設置されている国際先天異常モニタリングセンターでの解析検討を行った。
結果と考察
①「胎児超音波検査の実態調査」
胎児超音波検査を知っていた妊産婦は6割以上、受検者は約半数であり、検査の説明は9割弱が受けていた。受検を希望しない妊婦も少数存在した。産科医療機関のうち約8割が胎児超音波検査を行っており、9割以上が、胎児に所見がある場合の支援体制充実を求めていた。出生前コンサルト小児科医の多くが、胎児超音波検査の情報提供とインフォームドコンセント(IC)の徹底を重視しており、出生前検査や、妊婦や家族の意思決定支援等に小児科医が関わることを支持していた。検査の情報提供とICの徹底、出生前コンサルト小児科医が関わりやすい体制づくりの重要性が示唆された。

②「妊娠中の超音波検査についての質的調査」・「妊娠中の超音波検査に関するELSI課題の整理」
妊娠中の超音波検査で異常が指摘された経産婦における、検査の情報提供やIC、結果説明の経験が多様であったことから、情報提供やIC、意思決定支援の徹底に向けた検討の必要性が示された。結果説明後は、適切なタイミングで妊婦が相談できる体制整備の重要性が示唆された。ELSI課題の整理より、国内で優先されるべき課題として、情報提供・ICに関する具体的な対応や、異常が指摘された場合の妊婦・家族の意思決定支援と精神的・身体的サポートの提供などが挙げられ、まずは実現可能な実施方法と伝達内容を検討することが重要であることが示された。

③「我が国の先天異常発生状況の推移とその影響因子に関する研究」
2023年に対象となった96,377例における調査からは、先天異常児出産頻度は3,318児3.44%であり、心室中隔欠損は2023年も最も多かった。次いで耳瘻孔、動脈管開存、口唇・口蓋裂、ダウン症候群、心房中隔欠損、尿道下裂などが高頻度であった。昨年の調査と比し、若干の順位の入れ替えはあるものの上位の高頻度異常はほぼ同様の傾向であった。また、福島県も含めて特段の変動は見られなかった。
結論
①「胎児超音波検査の実態調査」
胎児超音波検査の実態を、妊産婦、産科医療機関、出生前コンサルト小児科医といった多様な立場から多角的に把握した。いずれの調査からも、情報提供とICの徹底が重要であることが示された。

②「妊娠中の超音波検査についての質的調査」・「妊娠中の超音波検査に関するELSI課題の整理」
胎児超音波検査についての、情報提供やIC、意思決定支援の充実に向けた検討が重要であること、具体的な提供情報やICの実施のしかたを工夫する必要が示された。

③「我が国の先天異常発生状況の推移とその影響因子に関する研究」
2023年の外表奇形等調査においては、例年同様特定の先天異常が特定の地域に多発したという異常変動は認められなかった。

本研究班で実施した調査結果の分析を踏まえ、我が国における今後の胎児超音波のあり方に関する提言をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2025-08-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2025-08-01
更新日
-

文献情報

文献番号
202427027B
報告書区分
総合
研究課題名
生殖・周産期に係る倫理的・法的・社会的課題(ELSI : Ethical, Legal and Social Issues)の検討のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22DA2002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 香織(国立大学法人東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 関沢 明彦(学校法人昭和大学 医学部産婦人科学講座)
  • 山田 崇弘(北海道大学病院 臨床遺伝子診療部)
  • 倉澤 健太郎(横浜市立大学産婦人科)
研究区分
こども家庭行政推進調査事業費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医学技術の進歩により出生前検査や胎児超音波検査等で胎児期から早期に先天性疾患が検索されるようになっている。しかし、NIPT以外の出生前検査や胎児超音波検査等で妊娠経過中に先天性疾患が疑われた際の、妊婦及び家族への告知の仕方、情報提供の在り方や意思決定支援については統一された見解はなく、更なる検討が必要と考えられる。そこで、①生殖補助医療の普及・進展を踏まえた生殖・周産期に関するELSI(Ethical, Legal and Social Issues)の課題を明らかにすること、②妊婦や家族への告知の在り方、情報提供の在り方について現状を明らかにすること、③全国的な先天異常についてモニタリングを行い、動向を把握することを目的とした。本年度は調査・分析を行い、それを踏まえ、我が国における今後の胎児超音波のあり方に関する提言をまとめた。
研究方法
3つの分担班に分かれ、以下の検討課題に取り組んだ。
①「胎児超音波検査の実態調査」
妊産婦、産科医療機関、出生前コンサルト小児科医それぞれにアンケート調査を実施し、その結果を分析した。

②「諸外国の動向も含む生殖・周産期に係るELSI課題の整理」
胎児超音波検査に関する米国・英国でのガイドラインにおける妊婦への配慮事項の検討、①の調査で示されたELSI論点精査のための、経産婦への量的・質的調査、妊娠中の超音波検査に関するELSI課題の整理を実施し、本研究班の調査結果も踏まえ、我が国において優先すべき胎児超音波検査のELSI課題を整理した。

③「我が国の先天異常発生状況の推移とその影響因子に関する研究」
全国規模モニタリングを日本産婦人科医会先天異常モニタリング調査によるデータから収集し横浜市立大学内に設置されている国際先天異常モニタリングセンターでの解析検討を行った。
結果と考察
①「胎児超音波検査の実態調査」
胎児超音波検査を知っていた妊産婦は6割以上、受検者は約半数であり、検査の説明は9割弱が受けていた。受検を希望しない妊婦も少数存在した。産科医療機関のうち約8割が胎児超音波検査を行っており、9割以上が、胎児に所見がある場合の支援体制充実を求めていた。出生前コンサルト小児科医の多くが、胎児超音波検査の情報提供とインフォームドコンセント(IC)の徹底を重視しており、出生前検査や、妊婦・家族の意思決定支援等に小児科医が関わることを支持していた。検査の情報提供とICの徹底、出生前コンサルト小児科医が関わりやすい体制づくりの重要性が示唆された。

②「諸外国の動向も含む生殖・周産期に係るELSI課題の整理」
胎児超音波検査に関する米国・英国のガイドラインでは、全妊婦への情報提供、妊婦の意思決定の尊重が重視されていた。経産婦への質的調査からは、情報提供、IC、意思決定支援のあり方について、検査の目的・内容・限界や選択可能性などが、十分に妊婦に共有されるよう、さらなる検討が必要であることが明らかとなった。また、検査により何らかの異常が指摘された場合、適切なタイミングで相談できる支援の重要性が示された。ELSI課題の整理より、国内で優先されるべき課題として、情報提供・ICに関する具体的な対応や、異常が指摘された場合の妊婦・家族の意思決定支援と精神的・身体的サポートの提供などが挙げられ、まずは実現可能な実施方法と伝達内容を検討することが重要であることが示された。

③「我が国の先天異常発生状況の推移とその影響因子に関する研究」
2021年、2022年、2023年の調査対象はそれぞれ105,901例、103,291例、96,377例であり、先天異常児出産頻度はそれぞれ3,549児3.35%、3,473児3.36%、3,318児3.44%であった。いずれの年も心室中隔欠損が最も多く、耳瘻孔、動脈管開存、口唇・口蓋裂、ダウン症候群、心房中隔欠損などが高頻度であった。また、福島県も含めて特段の変動は見られなかった。
結論
①「胎児超音波検査の実態調査」
胎児超音波検査の実態を、妊産婦、産科医療機関、出生前コンサルト小児科医といった多様な立場から多角的に把握した。いずれの調査からも、情報提供とICの徹底が重要であることが示された。

②「諸外国の動向も含む生殖・周産期に係るELSI課題の整理」
胎児超音波検査についての情報提供やIC、意思決定支援の充実などに向けた検討が重要であること、具体的な提供情報やICの実施のしかたを工夫する必要が示された。

③「我が国の先天異常発生状況の推移とその影響因子に関する研究」
2021年、2022年、2023年の外表奇形等調査において、特定の先天異常が特定の地域に多発したという異常変動は認められなかった。

本研究班で実施した調査結果の分析を踏まえ、我が国における今後の胎児超音波のあり方に関する提言をまとめた。

公開日・更新日

公開日
2025-08-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-08-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202427027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまで、胎児超音波検査や非確定的な出生前遺伝学的検査を実施する前の情報提供の実態、および超音波検査などで胎児の形態異常が疑われた場合の支援体制等の実態は明らかではなかった。その把握を目的とし、妊産婦、産婦人科医療機関、出生前コンサルト小児科医を対象として実施した調査は、本邦初の包括的な実態調査であり、質的調査や学際的な検討を行った意義も大きい。また、本研究では本邦唯一の先天異常モニタリング機構である日本産婦人科医会先天異常モニタリング調査で得られた登録症例の分析・解析を行った。
臨床的観点からの成果
実態調査に基づく分析や検討を踏まえてとりまとめた、今後の胎児超音波検査のあり方に関する提言は、胎児超音波検査の存在を知らせる情報提供のあり方、インフォームドコンセントのあり方、検査結果説明とフォローのあり方、出生前遺伝学的検査の提供体制と異なる留意点について、臨床現場での有用性を考慮し、具体的かつ臨床現場で即時実施しやすい内容とした。
ガイドライン等の開発
実態調査に基づく分析や検討を踏まえて、令和3年5月に厚生労働省NIPT等の出生前検査に関する専門委員会が公表した「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書」の内容と比較する形で、胎児超音波検査について、情報提供のあり方、インフォームドコンセントのあり方、検査結果説明とフォローのあり方、出生前遺伝学的検査の提供体制と異なる留意点を、今後の胎児超音波検査のあり方に関する提言としてとりまとめた。
その他行政的観点からの成果
「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会」により、NIPTについては一定の見解が示されているが、胎児超音波検査やその他の出生前検査で、妊娠経過中に先天性疾患が疑われた際の、妊婦および家族への告知の仕方、情報提供の在り方や意思決定支援については統一された見解はなかった。本研究の実態調査や提言は、NIPTを中心に進んできた出生前検査の倫理的・社会的課題の議論を、より包括的な議論に拡大することに資するものである。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
講演1件、シンポジウム発表1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sugo Y, Kurasawa K, Saigusa Y, et al
Changes in the number of babies born with Down syndrome in Japan
Journal of Obstetrics and Gynaecology Research , 48 (9) , 2385-2391  (2022)
10.1111/jog.15342
原著論文2
Konishi A, Samura O, Muromoto J, et al
Prevalence of common aneuploidy in twin pregnancies
Journal of Human Genetics , 67 (5) , 261-265  (2022)
10.1038/s10038-021-01001-0
原著論文3
倉澤健太郎
わが国の先天異常発生動向
医学の歩み , 282 (5) , 333-338  (2022)

公開日・更新日

公開日
2025-09-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
202427027Z