文献情報
文献番号
202427025A
報告書区分
総括
研究課題名
地方公共団体におけるこども虐待事例の検証方法と効果的な活用のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24DA0501
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
澁谷 昌史(関東学院大学 社会学部)
研究分担者(所属機関)
- 中板 育美(武蔵野大学 看護学部)
- 川松 亮(明星大学 人文学部福祉実践学科)
- 上野 昌江(四天王寺大学 看護学部)
- 大竹 智(立正大学 社会福祉学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
7,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
児童虐待の防止等に関する法律に基づき、地方公共団体は、こどもが虐待によって心身に重大な被害を受けた事例の検証を行うものとされている。しかし、死亡事例であっても全事例が検証されているわけではない。また、検証結果は施策や実践等の改善に結びつけられることが期待されるが、実際には検証結果の活用自体が行われていないところも珍しくない。そこで本研究では、検証及び検証結果の活用が進むよう、「子ども虐待重大事例検証の手引き」(以下、手引き)を改訂すること、市町村に対して検証報告書を活用したモデル研修を行うことに取り組む。
とくに令和6年度は、近年の施策動向や既存の検証報告書を踏まえながら、未検証及び検証に支障ある事例、検証結果を活用した研修について調査し、検証等の実態を把握する。
とくに令和6年度は、近年の施策動向や既存の検証報告書を踏まえながら、未検証及び検証に支障ある事例、検証結果を活用した研修について調査し、検証等の実態を把握する。
研究方法
研究は3か年かけて実施する。1年目にあたる令和6年度は、児童相談所を設置している79自治体を対象に、事例検証にあたって収集している情報や検証した結果を用いた研修の実施状況等について回答を求める質問紙調査を実施した。調査票は、各自治体の検証状況を概括的に把握する自治体票と、実際にどのような検証を行ったのかを把握する事例票のふたつを作成した。調査対象は全国の都道府県・政令指定都市・児童相談所設置自治体を対象とし、電子的方法により調査票の配布・回収を行った。
結果と考察
自治体票には48自治体から回答があった(回答率60.8%)。回答のあった自治体のうち2019~2023年度までに発生した死亡事例等について検証を行ったところが25自治体あり、これら自治体からは事例票により1件以上の検証例の回答があった。収集された検証例は合計49件であった。
自治体票に基づき、2019~2023年度までに発生した死亡事例等件数につき、48自治体合計で162件あったことを把握した。ただし、検証対象の候補とする事例の範囲については自治体によって異なっており、全国的に同じ基準で検証対象事例の認知がなされているわけではなかった。また、検証対象の候補とされた事例をすべて検証すると回答した自治体は19ヵ所にとどまった。その理由としては「検証が行えるほどの情報が収集できない事例があるため」が最も多かった。
事例票により回答のあった検証の状況を見ると、事例発生前あるいは発生時に行政機関・部署が関与していなかった事例についても検証が行われていた。他方で、手引きにしたがって、できる限り多くの情報収集を必ずしも行いえていない可能性が示唆された。さらに、収集した情報はすべて報告書に掲載しているわけではなく、検証報告書を見ながら、検証そのものの経過をたどり、そのプロセスの中で研修等を行うことが必ずしもできない状況にあることがうかがわれた。
検証結果をもとに支援のあり方についてふりかえりができるようにする観点を重視すれば、情報はできる限り多く集め、その家族の成り立ち等含めて包括的なアセスメントをすることが重要である。そして、事例の詳細含めて検証結果を共有する会議・研修が行われるようになれば、何のために検証をするのかが支援者にとって実感しやすくなり、各自治体において検証をさらに進める方向へと動いていく可能性がある。しかし実際には、検証対象が多くなるほど検証実施率が低くなるという実態があること、検証事務局が検証に求められる業務に明らかな困難を感じていること、検証委員となる者が必ずしも事例に関係する専門分野を網羅しているわけではないことなどを勘案し、検証を支える体制整備についても現実的な検討が必要である。また、検証結果を研修等で共有することにより事例当事者や事例担当者が特定される可能性が高まること、個人情報の適正な取扱については法的な観点から検討することも必要なことなども考慮に入れなければならない。
自治体票に基づき、2019~2023年度までに発生した死亡事例等件数につき、48自治体合計で162件あったことを把握した。ただし、検証対象の候補とする事例の範囲については自治体によって異なっており、全国的に同じ基準で検証対象事例の認知がなされているわけではなかった。また、検証対象の候補とされた事例をすべて検証すると回答した自治体は19ヵ所にとどまった。その理由としては「検証が行えるほどの情報が収集できない事例があるため」が最も多かった。
事例票により回答のあった検証の状況を見ると、事例発生前あるいは発生時に行政機関・部署が関与していなかった事例についても検証が行われていた。他方で、手引きにしたがって、できる限り多くの情報収集を必ずしも行いえていない可能性が示唆された。さらに、収集した情報はすべて報告書に掲載しているわけではなく、検証報告書を見ながら、検証そのものの経過をたどり、そのプロセスの中で研修等を行うことが必ずしもできない状況にあることがうかがわれた。
検証結果をもとに支援のあり方についてふりかえりができるようにする観点を重視すれば、情報はできる限り多く集め、その家族の成り立ち等含めて包括的なアセスメントをすることが重要である。そして、事例の詳細含めて検証結果を共有する会議・研修が行われるようになれば、何のために検証をするのかが支援者にとって実感しやすくなり、各自治体において検証をさらに進める方向へと動いていく可能性がある。しかし実際には、検証対象が多くなるほど検証実施率が低くなるという実態があること、検証事務局が検証に求められる業務に明らかな困難を感じていること、検証委員となる者が必ずしも事例に関係する専門分野を網羅しているわけではないことなどを勘案し、検証を支える体制整備についても現実的な検討が必要である。また、検証結果を研修等で共有することにより事例当事者や事例担当者が特定される可能性が高まること、個人情報の適正な取扱については法的な観点から検討することも必要なことなども考慮に入れなければならない。
結論
検証にあたっては、できるだけ多くの情報を収集し、包括的なアセスメントをし直すことが望ましい。事例性がよく把握された検証は、検証結果を活用した会議・研修の効果的な実施にもつながりやすく、虐待予防・対応に関係する職種の実践力形成にも結びつく可能性が高い。このように「現場の実践力形成」を出発点として検証制度を位置づけ直す試みは有用であると思われ、その意味で、検証結果を活用した研修のあり方と密接に関連付けて手引き改訂を進める意義は大きい。ただし、これを実行していくためには複数の論点につき具体的な議論を深めていくことが必要である。令和7年度は、情報収集を広く行うことのできた自治体、検証結果の活用を積極的に行った自治体を本調査結果により特定し、ヒアリング等を行うことで、実行性の高い検証及び検証結果の活用が可能となる具体的な要件を明確にすることが研究課題となる。
公開日・更新日
公開日
2025-08-01
更新日
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