知的障害・発達障害児とその家族のQOLを維持する支援体制整備に向けた研究

文献情報

文献番号
202427024A
報告書区分
総括
研究課題名
知的障害・発達障害児とその家族のQOLを維持する支援体制整備に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24DA0401
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
橋本 創一(東京学芸大学 現職教員支援センター機構)
研究分担者(所属機関)
  • 小澤 温(筑波大学 人間系)
  • 安達 潤(北海道教育大学旭川校教育学部障害児臨床教室)
  • 内山 登紀夫(福島学院大学)
  • 本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
  • 新澤 伸子(服部 伸子)(武庫川女子大学 心理・社会福祉学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、市区町村における多領域・多職種によるライフステージを通じて切れ目のない支援体制を構築するためのスタートアップマニュアルを作成することである。全国の市区町村等において先駆的に取組んでいる支援体制整備とその成果を探索・調査し、縦断的あるいは後方視的なヒアリング調査等行い、その結果を議論することにより、知的障害・発達障害児に対して、どのような年代でどのような支援が必要かを明らかにし、支援体制整備の充実が知的障害・発達障害のあるこどもやその家族の QOL 向上に影響を及ぼしているかを検証する手法の開発を行う。
研究方法
令和6年度は、研究代表者、研究分担者、研究協力者が分担の研究に取組むと同時に、3回の研究検討会議において、スタートアップマニュアル作成といった最終目標に向け、研究計画の調整を行った。また、研究代表者・研究分担者が全員集い、研究報告会を開催し動画配信を行い、全国規模の知的障害・発達障害児の支援体制整備に関心のある組織・人材のネットワークづくりを目指した。橋本班:年間9回のオンライン形式の報告会の開催、4カ所のヒアリング調査を実施した。小澤班:4カ所の児童発達支援センターの職員を対象にヒアリング調査等を実施し、市区町村との支援体制構築の課題を明らかにした。安達班:ICFシステムを活用した支援とQOL指標との関連性の検証を行うため、ICFシステムによる支援プロセス実装の計画立案と協力事業所と調整を行った。新澤班:長期的な療育プログラム終了後の予後調査を計画し、協力者をう募った。内山班:PWI-SCを日本語に翻訳し、日本の一般児童とその母親にオンラインアンケートを実施し、HRQOL等との関連性の検証等を行った。本田班:市区町村等の支援体制を評価するツール開発と並行して、我が国の法制度・QOL研究の歴史ならびにQOLの位置づけの視点から文献・資料の検討を行った。研究代表者・研究分担者は所属組織の研究倫理委員会の倫理規定に沿った研究を実施している。
結果と考察
研究報告会(事前参加申込216件)を動画配信することで、全国規模の知的障害・発達障害児の支援体制整備に関心のある組織・人材のネットワークづくりのきっかけとなった。橋本班:最近の知的障害・発達障害児を取り巻く環境の変化を概観し、ライフステージ単位で4つの課題に整理し(障害児の急増と生物学的障害、社会が担う発達障害、就学児・在学中の教育と福祉の連携、思春期から成人期への移行)、各課題合計 11 項目の詳細な課題も設定した。オンライン形式の報告会(19 地域の実践事例報告等)とヒアリング調査から、現時点で3つの共通する課題が取り上げられた。小澤班:ヒアリング調査等の結果、児童発達支援センターの中核的役割は、地域の中で子どもや保護者、保育・教育機関をつなぎ支え合うハブとして機能が求めら、専門性と柔軟性をもつ人材の育成・確保、現場の実践と制度の乖離を埋める具体的な仕組みが必要である。安達班:ICF システムを活用した支援を実施する児童発達支援事業所等の確保と同意を行うと当時に、このシステムの有効性について独自のQOL質問票を作成した。新澤班:療育プログラムを終了後すでに成人になった発達障害者ならびにその家族に、QOLの視点を含めた長期予後調査の実施準備・調整を行い、5カ所の療育センターと88件の家族に協力を得た。内山班:PWI-SC を日本の一般児童とそのペアとなる親にオンライアンケート調査の331ペアのデータを解析した。PWI-SC の内的整合性は高く、信頼性が検証された。オーストラリアと比較すると、健康以外のすべての領域で優位に低く、主観的幸福の相対的な低さが示唆された。本田班:文献・資料から、障害福祉の法制度は「生命の質」(終戦~1990 年代)、「生活の質」(2000 年~2021 年)を経て現在は「人生の質」(2022年~)を検討する段階である。また、20 世紀後半から QOL の評価方法が広がり、直近では障害種別に特化した QOLの評価法の開発が進められている。現行の支援サービスのうち QOL と大きく関係する発達障害児の余暇支援の提供は放課後等デイサービスのみであり、就労支援と併用して余暇支援サービスを活用することが難しい現状にある。
結論
研究初年度は、知的障害・発達障害児とその家族を対象とした QOL 指標作成と活用方法は研究班単位取り組み始めた段階であり、また様々な市区町村等における支援体制整備の事例収集と事例に即した議論が開始され集積し始めた段階である。次年度は、スタートアップマニュアルの構成を検討するとともに、市区町村等の実態に即した支援体制ならびにQOL 指標の活用方法を議論する。

公開日・更新日

公開日
2025-09-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

倫理審査等報告書の写し
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2025-09-12
更新日
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収支報告書

文献番号
202427024Z