文献情報
文献番号
201011011A
報告書区分
総括
研究課題名
頚動脈洞神経マイクロマシンによって圧反射性に自律神経を自動制御し、心不全を抑制する医療の開発
課題番号
H21-ナノ・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 厚範(独立行政法人国立循環器病研究センター 循環動態制御部)
研究分担者(所属機関)
- 杉町 勝(独立行政法人国立循環器病研究センター 循環動態制御部 )
- 川田 徹(独立行政法人国立循環器病研究センター 循環動態制御部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
40,365,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国の慢性心不全患者は200万人を越え、高齢化社会を背景に今後も増加が予想されるが、その死亡率は悪性癌に匹敵するほど高い。慢性心不全では自律神経異常(交感神経増加・迷走神経低下)が病態の発症と増悪に深く関与し、これを是正する自律神経治療が生存率を格段に改善する(Circulation 2004)。しかし現存の薬物治療、神経医療ともに不十分であり、全身の循環系自律神経を適切に制御する方法の開発が、ヒト心不全抑制の鍵を握る。そこで、本研究は、神経マイクロマシンで圧反射性に自律神経を制御し、心不全を抑制する医療の開発を目的とする。
研究方法
血圧調節のシステム神経循環生理研究、MEMS超微細テクノロジーを利用して、圧反射求心路(頚動脈洞神経)を刺激して中枢経由に全身の循環器系臓器(心臓・血管・腎臓等)の自律神経を、交感神経を抑制し且つ迷走神経心臓枝を刺激するように制御し、心不全を抑制する医療を開発する。急性および慢性の心不全モデル動物治療実験などを通して、装置作動、生体応答、治療効果などを検討し、治療システムを改良していく。
結果と考察
平成21年度は、連携企業との産学官連携下にMEMS技術を駆使して、刺激部(神経束から目的線維を選択記録刺激するマイクロマシン)、計測部(治療効果を定量化する心拍血圧自律神経モニター)を試作した。平成22年度は、これらを用いて、動物実験(正常心・慢性心不全)において、頚動脈洞等の刺激に対する自律神経応答(圧反射中枢特性)および自律神経変化による血圧心拍数応答(末梢特性)を実測しシステム同定しモデル化した。またシミュレーションを利用して、治療を自動調節する制御部を開発した。これらを刺激部-計測部-制御部の閉ループ生体制御(国際特許PCT/JP2006/323819)に統合し、システム医療を試作した。これを急性動物実験で試し、実際に、頚動脈洞等の刺激(電流・周波数等)を自動調節して、脳に血圧ダミー信号(実圧より高い仮想圧信号)を送り、圧反射性に全身の循環系自律神経を設定値に自動制御(交感神経抑制・迷走神経刺激)し、急性心不全を抑制した(死亡率低減)。
結論
平成21および22年度の成果より、圧反射の自律神経ネットワークに介入して自律神経を制御する心不全医療は、有効な治療となる可能性が大きいと考えられる。またさらに、独自の閉ループ生体制御によって、治療効果に応じて治療を連続更新する、患者個人や病態変化に適応するような、インテリジェント神経医療が実現可能であると期待される。
公開日・更新日
公開日
2011-06-21
更新日
-