文献情報
文献番号
202427019A
報告書区分
総括
研究課題名
地域特性に応じた発達障害児の就学から就労を見据えた多領域連携による支援体制整備に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23DA1601
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
- 小倉 加恵子(国立成育医療研究センター)
- 小林 真理子(山梨英和大学 人間文化学部)
- 田中 裕一(神戸女子大学 教育学部教育学科)
- 高橋 知音(信州大学 教育学部)
- 日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
6,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、地域特性に応じた発達障害児の就学から就労を見据えたライフステージにおける多領域連携支援体制の標準的な流れを示すこと、および各自治体が個々の事例に対して多領域連携支援体制のケアパスを作成するための手引きを作成することである。
研究方法
今年度は以下の研究を行った。
1.「発達障害児の地域ケアパス作成の手引き(就学前から就労支援まで)」(案)の作成(分担:本田秀夫,小倉加恵子,小林真理子,田中裕一,高橋知音,日詰正文)
2.発達障害の地域支援に係る母子保健システムに関する調査研究(分担:小倉加恵子)
3-1.発達障害の支援サービス機能の簡易実用評価-その2:Q-PASSの最終調整および自治体へのアンケート調査-
3-2.発達障害の支援サービス機能の簡易実用評価のマニュアル作成(分担:小林真理子)
4.地域特性に応じた発達障害児の学校教育段階における多領域連携支援体制の標準的な流れ(ケアパス)に関する予備調査研究(分担:田中裕一)
5.高等教育における発達障害学生支援モデルの検討(分担:高橋知音)
1.「発達障害児の地域ケアパス作成の手引き(就学前から就労支援まで)」(案)の作成(分担:本田秀夫,小倉加恵子,小林真理子,田中裕一,高橋知音,日詰正文)
2.発達障害の地域支援に係る母子保健システムに関する調査研究(分担:小倉加恵子)
3-1.発達障害の支援サービス機能の簡易実用評価-その2:Q-PASSの最終調整および自治体へのアンケート調査-
3-2.発達障害の支援サービス機能の簡易実用評価のマニュアル作成(分担:小林真理子)
4.地域特性に応じた発達障害児の学校教育段階における多領域連携支援体制の標準的な流れ(ケアパス)に関する予備調査研究(分担:田中裕一)
5.高等教育における発達障害学生支援モデルの検討(分担:高橋知音)
結果と考察
1.「地域ケアパス-就学前から就労支援まで-」(案)を作成した。各自治体で地域特性に応じた地域ケアパスを作成するためには、まずQ-SACCSを用いた地域支援体制の点検を行い、次いでQ-SACCSに記入した事業やツールなどがどのようなサービス機能を有しているのかを表にして整理し、それをもとに地域ケアパスを作成する手順が推奨される。各自治体が共通で使用できるような地域ケアパスの概要図のテンプレートと、個々の支援サービス機能に関する説明のテンプレートを作成した。
「ココみて(KOKOMITE)」の掲載情報件数は、令和6年度末時点で1,981件となった。令和6年度(令和6年4月1日~令和7年3月31日)における「ココみて(KOKOMITE)」の閲覧件数は42,133件で、サイト内で最も利用されたコンテンツであった。コンテンツ内に収載されている発達障害の診療を行う医療機関の情報についても追加収集を行い、情報更新を行った(令和7年3月末時点:898件)。更新された医療機関の情報は「地域精神保健医療福祉資源分析データベース(ReMHRAD)」内の「発達障害を支援する社会資源」にも反映された。
2.5歳児健診等の実施に関わらず発達特性等への気づきや診断前支援に関連する仕組みの構築はあったが、5歳児健診等を実施することで教育分野の連携が強化されていた。就学に向けたつなぎの仕組(情報連携)は、5歳児健診等の実施が有用と考えられた。
3.アンケート調査では、好事例と思われる17の自治体から回答が得られ、各支援段階における支援サービスの提供において、どのような機関が支援の中心を担っているのかが明らかになった。
Q-PASSその1、その2を合わせた形でマニュアルを作成した。Q-SACCSが地域の支援体制の分析を行うためのツールであるのに対して、Q-PASSは地域にある支援サービス機能を確認して、サービスや事業展開の検討をする際やケース検討の際の支援サービス機能の確認の際などに役立てるツールである。
4.調査した基礎自治体は17市町であった。基礎自治体の取組が、それぞれの課題意識に基づいて施策化されていることから、改めて多様な取組があることが見て取れた。教育分野における現状分析や制度の見直しなどのツールとして、Q-SACCSは一定の効果がある。また、その効果は、教育と福祉などの担当者の情報交換のツールとしても有効活用できると思われた。
5.現在わが国の高等教育機関への進学率は高く、障害のある学生の割合も増加している。国公立大学のみならず私立大学でも合理的配慮提供が義務化されている社会的背景もあり、発達障害のある高校生年代の子どもにとって高等教育は現実的な選択肢となっている。
大学で提供される学生サービスは、学校によって充実度合いの差が大きい。高校までと異なり、合理的配慮を含めた支援の利用は本人の意思表明が前提となる。このため、学生自身が自ら支援を求めていくスキル(セルフ・アドボカシー・スキル)を身につけていく必要がある。
「ココみて(KOKOMITE)」の掲載情報件数は、令和6年度末時点で1,981件となった。令和6年度(令和6年4月1日~令和7年3月31日)における「ココみて(KOKOMITE)」の閲覧件数は42,133件で、サイト内で最も利用されたコンテンツであった。コンテンツ内に収載されている発達障害の診療を行う医療機関の情報についても追加収集を行い、情報更新を行った(令和7年3月末時点:898件)。更新された医療機関の情報は「地域精神保健医療福祉資源分析データベース(ReMHRAD)」内の「発達障害を支援する社会資源」にも反映された。
2.5歳児健診等の実施に関わらず発達特性等への気づきや診断前支援に関連する仕組みの構築はあったが、5歳児健診等を実施することで教育分野の連携が強化されていた。就学に向けたつなぎの仕組(情報連携)は、5歳児健診等の実施が有用と考えられた。
3.アンケート調査では、好事例と思われる17の自治体から回答が得られ、各支援段階における支援サービスの提供において、どのような機関が支援の中心を担っているのかが明らかになった。
Q-PASSその1、その2を合わせた形でマニュアルを作成した。Q-SACCSが地域の支援体制の分析を行うためのツールであるのに対して、Q-PASSは地域にある支援サービス機能を確認して、サービスや事業展開の検討をする際やケース検討の際の支援サービス機能の確認の際などに役立てるツールである。
4.調査した基礎自治体は17市町であった。基礎自治体の取組が、それぞれの課題意識に基づいて施策化されていることから、改めて多様な取組があることが見て取れた。教育分野における現状分析や制度の見直しなどのツールとして、Q-SACCSは一定の効果がある。また、その効果は、教育と福祉などの担当者の情報交換のツールとしても有効活用できると思われた。
5.現在わが国の高等教育機関への進学率は高く、障害のある学生の割合も増加している。国公立大学のみならず私立大学でも合理的配慮提供が義務化されている社会的背景もあり、発達障害のある高校生年代の子どもにとって高等教育は現実的な選択肢となっている。
大学で提供される学生サービスは、学校によって充実度合いの差が大きい。高校までと異なり、合理的配慮を含めた支援の利用は本人の意思表明が前提となる。このため、学生自身が自ら支援を求めていくスキル(セルフ・アドボカシー・スキル)を身につけていく必要がある。
結論
本研究では、就学前から就労にいたる時期の発達障害児およびその家族に対する地域支援について、すべての基礎自治体で共通に整備されるべきと思われる支援の流れの骨子を図示した地域ケアパスの概要図を作成した。これにより、発達障害児の支援に関する地域差を軽減するだけでなく、地域ごとの特色を生かした工夫を可能とするシステム・モデルが提示できる。また、Q-PASSについても、就学前から就労・自立支援までの試案も作成した。今後、各自治体が地域特性に応じた地域ケアパスを作成できれば、全国のより多くの自治体で発達障害のある子どもと家族の支援の充実が図れるものと思われる。
公開日・更新日
公開日
2025-08-01
更新日
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