文献情報
文献番号
202427017A
報告書区分
総括
研究課題名
児童養護施設等や里親家庭における養育の不調の要因分析に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23DA1401
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
引土 達雄(新潟青陵大学大学院 臨床心理学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 上鹿渡 和宏(早稲田大学 人間科学学術院)
- 三輪 清子(明治学院大学 社会学部)
- 山口 敬子(京都府立大学 公共政策学部)
- 塩谷 隼平(東洋学園大学 人間科学部)
- 柳楽 明子(国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 心理療法室)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,700,000円
研究者交替、所属機関変更
研究代表者の引土達雄は、
2024年4月1日より、新潟青陵大学大学院 臨床心理学研究科に准教授として着任した。
研究報告書(概要版)
研究目的
養育不調によって委託解除となったケースについて、そのプロセスを明らかにし、養育不調の要因を分析し、その対策を検討するために、里親・地域小規模児童養護施設・児童相談所・フォスタリング機関へのインタビュー調査を行った。また、昨年度実施した質問紙調査の追加分析を行った。不調の要因となる事項やプロセスをより幅広い視点から明らかにし、統合した社会的養育システムの観点から、適切なアセスメント、養育環境の選択、必要な支援について課題を整理し改善のあり方について示し、手引を作成することを目的としている。
研究方法
調査協力者は、2019年4月から2024年3月末までの間で養育不調による委託解除・措置解除の経験があることとした。事前に質問紙を用意し、インタビューで尋ねる養育不調によって委託解除となった子どもについて尋ねた。それに加えて、里親、ファミリーホーム、地域小規模児童養護施設に、養育者について、児童相談所やフォスタリング機関の職員には、里親家庭への支援にあたる職員の経験、資格、研修等について尋ねた。調査期間は2024年12月~2025年3月であった。調査協力者の希望に応じて、担当の自治体、もしくは研究事務局から郵送もしくはメールにて質問紙を配布した。回答した質問紙はインタビュー当日に持参してもらい、当日のインタビューの進行に役立てた。インタビュー形式は対面、もしくはオンラインであった。インタビューガイドを用いた半構造化面接を行い、時間は1時間から2時間ほどを要した。インタビュー内容は、調査協力者の許可を得て、対面の場合は音声をICレコーダーで録音、オンラインの場合は録画をした。インタビュー終了後、逐語録に起こした。
結果と考察
インタビュー調査の結果、養育不調をもたらすものとして、「アセスメントにおける情報共有や連携の不足・欠如」、「マッチングにおける情報共有や連携と意向確認の不足・欠如」、「子どもの特性を理解するための専門的知識や子ども視点でのニーズ理解の不足・欠如」、「里親とフォスタリング機関、児童相談所との信頼関係の不足・欠如」、「できるだけ早い段階で関係者と共有しようとする三者それぞれからのはたらきかけの不足・欠如」が考えられた。委託前の準備の段階から、子どものアセスメントと、委託や措置する養育者のアセスメントを通して、委託前の情報共有や支援体制を作っていくことが重要である。支援が養育者だけに偏るのではなく、子ども本人にアプローチし、子どもから心を許され、相談したいことを相談でき、その内容を専門的に理解し、支援方針を創出し、チームで共有のできる専門家が児童相談所やフォスタリング機関に求められている。
加えて、昨年度実施した質問紙調査の追加分析の結果として、どの養育形態でも高年齢児の委託、また特に里親では委託後早期(6ヶ月未満)において養育不調が顕在化する傾向が認められた。また、「子どもの行動チェックリスト (CMYC)」、「虐待を受けた子どものチェックリスト(ACBL-R)」や「養育の状況に関する質問紙」においては、養育不調による委託・措置解除には、子どもの行動上の問題の影響が大きく、養育における対応が難しくなることの現状をある程度反映したものであると考えられた。養育不調のリスクを評価する上で、委託・措置されている子ども達の行動上の問題や養育の状況のチェックリストとして使用できる可能性を示した。これらの質問紙の使用についてはさらに検討する必要がある。
これらの知見を更に精査し、養育不調の改善と予防と養育不調による委託解除の際のケアについての手引きを作成していく。
加えて、昨年度実施した質問紙調査の追加分析の結果として、どの養育形態でも高年齢児の委託、また特に里親では委託後早期(6ヶ月未満)において養育不調が顕在化する傾向が認められた。また、「子どもの行動チェックリスト (CMYC)」、「虐待を受けた子どものチェックリスト(ACBL-R)」や「養育の状況に関する質問紙」においては、養育不調による委託・措置解除には、子どもの行動上の問題の影響が大きく、養育における対応が難しくなることの現状をある程度反映したものであると考えられた。養育不調のリスクを評価する上で、委託・措置されている子ども達の行動上の問題や養育の状況のチェックリストとして使用できる可能性を示した。これらの質問紙の使用についてはさらに検討する必要がある。
これらの知見を更に精査し、養育不調の改善と予防と養育不調による委託解除の際のケアについての手引きを作成していく。
結論
インタビュー調査の結果から、養育不調をもたらすものとして、「アセスメントにおける情報共有や連携の不足・欠如」、「マッチングにおける情報共有や連携と意向確認の不足・欠如」、「子どもの特性を理解するための専門的知識や子ども視点でのニーズ理解の不足・欠如」、「里親とフォスタリング機関、児童相談所との信頼関係の不足・欠如」、「できるだけ早い段階で関係者と共有しようとする三者それぞれからのはたらきかけの不足・欠如」が考えられた。また、質問紙調査の追加分析では、養育不調に至ったケースにおける高年齢での委託、短期間での措置解除、子どもの行動上の問題や養育状況の困難さといった傾向が示唆された。その他、児童相談所からの回答においても、養育者が子どもとの関係を築きにくく不調となっている回答が認められた。委託前の準備の段階から、子どものアセスメントと、委託や措置する養育者のアセスメントを通して、委託前の情報共有や支援体制を作っていくかが重要である。また、本調査で使用した質問紙をさらに精査し、チェックシートとして使用することも有用であると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2025-08-01
更新日
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