低出生体重児の中長期的な心身の健康リスクの解明とフォローアップ・支援体制の構築に向けた研究

文献情報

文献番号
202427013A
報告書区分
総括
研究課題名
低出生体重児の中長期的な心身の健康リスクの解明とフォローアップ・支援体制の構築に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23DA1001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
河野 由美(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 諫山 哲哉(国立成育医療研究センター 新生児科)
  • 盛一 享徳(国立成育医療研究センター  研究所 小児慢性特定疾病情報室)
  • 伊藤 善也(日本赤十字北海道看護大学臨床医学領域)
  • 長 和俊(北海道大学病院周産母子センター)
  • 豊島 勝昭(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター 新生児科)
  • 岩田 幸子(名古屋市立大学 新生児・小児医学分野)
  • 平野 慎也(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター 新生児科)
  • 中野 有也(昭和大学 医学部)
  • 竹内 章人(独立行政法人国立病院機構岡山医療センター(臨床研究部) 成育医療推進室)
  • 落合 正行(九州大学病院 小児科)
  • 橋本 圭司(昭和大学 医学部リハビリテーション医学講座)
  • 永田 雅子(名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
低出生体重児は、乳幼児期には成長発達の遅れ、神経発達症等のリスクが高いことは多く報告されているが、学童期以降の長期的な心身の健康のリスクについての日本のデータは不足している。極低出生体重児を中心とする成人期までのフォローアップ体制の整備のため、1)系統的レビューによる長期予後に関するエビデンスの把握、2)学童期以降となった極低出生体重児の実態調査、3)医療機関のフォローアップ体制の調査、4)低出生体重児への支援に関する自治体アンケート調査に基づき、低出生体重児の中長期的フォローアップの診療ガイド、保健指導・支援に利用可能な手引きを作成することを目的とした。
研究方法
1) 系統的レビュー:低出生体重児の成人期の予後を包括的に把握するため、報告された系統的レビュー論文を対象にしたアンブレラレビューを行った。体格、生活習慣病等の身体疾患と機能、認知機能、神経疾患、精神疾患の課題を網羅した、18歳以上を対象とした論文を抽出し、本年度はフルスクリーニングを行った。2)患者実態調査:極低出生体重で出生した本人と保護者を対象とし、A群(小学生3,4年生)、B群(中学生1,2年生)、C群(高校生2,3年生)、D群(成人22~24歳)の各年齢群700人以上に研究参加を依頼し、同意取得後、年齢に応じた1人あたり4または5種類の質問紙を郵送し回収した。3)医療機関調査:日本新生児成育医学会の会員の所属する施設の代表医師を対象に、低出生体重児のフォローアップの方法や期間、現状の問題点、地域連携や就学についての質問の回答をWebで収集した。4)自治体調査:9都道府県の自治体の母子保健担当の専門職者を対象としアンケート調査を行った。低出生体重児の退院後から3歳未満まで、3歳以降から小学生の間で、家族から受けることが多い相談内容、相談への対応の問題点と工夫、関連機関との連携状況等について調査票をメールで送付し回収した。
結果と考察
1)系統的レビューでは、約4800論文の一次スクリーニングから抽出された約220論文のフルスクリーニングをすすめ、最終的に86論文が対象となった。最終対象論文の成人期予後のカテゴリー分類を作成し、評価年齢、主アウトカムのまとめを作成した。2)患者実態調査は、研究分担者8機関および研究協力者3機関の計11機関の対象で実施した。各年齢群で質問紙を回収した人数は、A群283人、B群286人、C群304人、D群174人の計1047人であった。回答した対象の、周産期・新生児期、退院後の診療情報を、各研究機関で後方視的に取得した。回収した質問紙は、施設別・年齢群別・種類別にフォルダーにまとめ、クラウド上で研究者が共有できる体制を整えた。3)医療機関調査は、1県を除く全国の188医療機関から回答が得られた。概ね全例フォローアップしている施設の割合は、出生体重1500g未満児は約90%、1500~2000gは70%、2000~2500gは25%であった。超低出生体重児のフォローアップ実施期間は、6歳時98%、9歳時69%であったが10歳以上は15%であった。出生体重1500g以上の低出生体重児のフォローアップ終了年齢が短く、施設間のばらつきも大きいことが明らかとなった。2020年からの5年間に、就学猶予または免除の申請の対応を検討した医療機関のある都道府県数は26(55%)、就学猶予実施のあった医療機関のある都道府県数は14(30%)であった。4)自治体調査は、11都道府県を介して508自治体の母子保健担当者に依頼し、172自治体(34%)から回答が得られた。家族からうける多い相談として、退院後から3歳まででは、低体重・低身長、授乳、離乳食と食事、親のストレス、言語発達の順であった。言語発達、親のストレスや不安に関する相談への対応に苦慮する割合は50%を越えていた。3歳から小学生では、言語発達、療育、知的発達、不注意多動の順に多く、対応に苦慮する割合も49~75%と高率であった。関係機関との連携の中で、小学校との連携の割合は47%と他の機関にくらべ低率であった。就学に関する情報提供に、直接母子保健担当が関わっているのは46自治体(27%)であった。
結論
極低出生体重児を中心とする低出生体重の成人期までの心身の健康リスクの解明のため、系統的レビューにより、報告されている長期的課題を抽出し分類した。医療機関フォローアップ体制の現状と問題点、自治体での支援において、家族からの相談とその対応への課題を明らかにできた。実態調査で得られた極低出生体重児約1000人の学童期から成人期までの心身の健康状態・社会生活状況の解析をすすめている。これらの結果をもとに、最終年度には低出生体重の中長期的なフォローアップのための診療ガイド、自治体・一次医療機関向けの手引きを作成する。

公開日・更新日

公開日
2025-07-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-07-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
202427013Z