文献情報
文献番号
202427010A
報告書区分
総括
研究課題名
父親の子育て支援推進のためのプログラムの確立に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23DA0701
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
竹原 健二(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
研究分担者(所属機関)
- 加藤 承彦(聖路加国際大学大学院 公衆衛生学研究科 医療政策管理学部門)
- 小崎 恭弘(大阪教育大学 健康安全教育系教育学部教員養成課程家政教育部門)
- 髙木 悦子(帝京科学大学 医療科学部看護学科)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
7,650,000円
研究者交替、所属機関変更
分担研究者所属変更
加藤 承彦(変更年月日:令和6年10月1日)
(旧)国立成育医療研究センター 研究所 社会医学研究部 行動科学研究室・室長
(新)聖路加国際大学公衆衛生大学院 医療政策管理分野・准教授
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国では、少子化への対応や男女共同参画社会の実現に向けて、父親の育児参加の重要性が指摘されてきた。育児・介護休業法の改正による“男性の育児休業取得”も促進されるなど、父親に期待される役割が急速に変化してきている。母親に対しては妊娠期から育児期までの切れ目のない支援の提供体制が構築されつつある一方で、新たな役割を担う父親を支える仕組みは十分とは言えない状況にあり、その構築が急務となっている。こうした社会的な背景を受け、本研究では、父親の健康や生活実態、育児参加に関する研究(課題1)、乳児を持つ父親の育児支援希求に関する調査(課題2)、父親支援マニュアル作成に関する研究(課題3)の3つの課題を立て、父親支援のあり方の検討とその推進に向けた資材の開発を目的とした。わが国における父親支援のあり方を検討するとともに、その社会への普及・実装を目指した。
研究方法
課題1では、厚生労働省や総務省の政府統計や、全国規模の横断調査など父親に関するデータを含む大規模データを用いた二次解析をおこなった。父親の悩みやストレス、その関連要因に関する分析や、父親の生活時間の実態把握に関する分析を進めた。課題2では、父親を対象にしたWebアンケート調査の実施により、父親の育児支援のニーズや属性ごとの相違点を検討した。課題3では、「父親支援マニュアル」の作成に向けて、これまでの知見の整理や、北米を中心とした同様のマニュアルの内容の精査を通じ、その章立てや記載すべき事柄の検討をおこなった。
結果と考察
課題1の結果から、父親の悩みやストレスと関連する要因として、育児だけでなく、仕事や所得などの社会経済的な要因が影響していることや、長時間労働や精神的な不調が疑われるリスクが高い父親ほど、悩みやストレスを相談しない傾向が明らかになった。父親の悩みの頻度は、子どもの月齢によって変化し、出産後3~6か月、および18か月以降で高くなる傾向がうかがわれ、産後3~6か月の頻度が高くなるという結果は、日本人の父親を対象とした産後うつのメタ解析の結果と合致している。また、総務省が実施した社会生活基本調査の2016年と2021年のデータの分析結果の比較から、父親の仕事時間が減り、休息の時間が増えている傾向が示された。
課題2で回答を得られた対象者500名のうち、母子保健事業に参加した父親は49.2%、職員に勧められる健診以外のフォローアップ事業に参加したい父親は90.4%、父親を対象とした一般的な育児支援を受けたいと回答した父親は84.4%であった。また、妻が仕事をしている父親ほど、育児休業の取得やこどもの健診に参加、子育て支援への関心が高まることが示唆された。一方で、そうした支援につながっていない父親の回答としては「仕事」という理由がもっとも多いことが示された。
課題3では、「父親支援マニュアル」を当初の予定よりも前倒しで作成し、2025年1月に国立成育医療研究センターのホームページ上で公開した(https://www.ncchd.go.jp/scholar/section/policy/project/papasupport_manual.pdf)。2025年3月19日時点でダウンロード回数は2,087回と、多くの方に閲覧・活用されつつあることが示された。このマニュアルはA4版で全71ページからなり、内容は「父親支援に必要な基本事項」、「父親支援プログラムのポイント」、「事業構築に向けたアプローチ」、「母子保健・子育て支援事業の見直しとしての研修の実施」、「具体的な支援策と実践例」とし、ポピュレーションアプローチとしての父親支援の重要性についても言及した。
課題2で回答を得られた対象者500名のうち、母子保健事業に参加した父親は49.2%、職員に勧められる健診以外のフォローアップ事業に参加したい父親は90.4%、父親を対象とした一般的な育児支援を受けたいと回答した父親は84.4%であった。また、妻が仕事をしている父親ほど、育児休業の取得やこどもの健診に参加、子育て支援への関心が高まることが示唆された。一方で、そうした支援につながっていない父親の回答としては「仕事」という理由がもっとも多いことが示された。
課題3では、「父親支援マニュアル」を当初の予定よりも前倒しで作成し、2025年1月に国立成育医療研究センターのホームページ上で公開した(https://www.ncchd.go.jp/scholar/section/policy/project/papasupport_manual.pdf)。2025年3月19日時点でダウンロード回数は2,087回と、多くの方に閲覧・活用されつつあることが示された。このマニュアルはA4版で全71ページからなり、内容は「父親支援に必要な基本事項」、「父親支援プログラムのポイント」、「事業構築に向けたアプローチ」、「母子保健・子育て支援事業の見直しとしての研修の実施」、「具体的な支援策と実践例」とし、ポピュレーションアプローチとしての父親支援の重要性についても言及した。
結論
課題1,課題2の結果を概観すると、父親の体調や育児への悩み、家事・育児を担うこと、支援につながること、のいずれにおいても、「仕事」が一つのポイントとなることが示唆された。今後はこれまでに得られた知見や、作成した「父親支援マニュアル」をもとに、自治体などの地域で父親支援が広がるよう、各地の行政担当者と連携をとりながら、その事例の収集などをおこなっていきたい。
公開日・更新日
公開日
2025-10-06
更新日
-