文献情報
文献番号
201011004A
報告書区分
総括
研究課題名
ホウ素ナノデバイス型中性子捕捉治療
課題番号
H20-ナノ・一般-004
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
中村 浩之(学習院大学 理学部)
研究分担者(所属機関)
- 松村 明(筑波大学大学院人間総合科学研究科)
- 李 千萬(大阪大学大学院医学系研究科)
- 鈴木 実(京都大学原子炉実験所)
- 丸山 一雄(帝京大学薬学部)
- 柳衛 宏宣(東京大学大学院工学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(低侵襲・非侵襲医療機器(ナノテクノロジー)研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
42,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
中性子捕捉療法(BNCT)は、低エネルギーである熱・熱外中性子がホウ素との核反応により生ずる強力な粒子線を用いるものであり、低毒性のホウ素化合物を用いるため化学療法のような重篤な副作用はなく、また放射線療法のような照射場内の正常組織へのダメージもきわめて低い治療法で、治療後の患者への負担が極めて小さい特徴をもつ。京都大学で開発している加速器からは、すでに原子炉と同等の中性子線量が得られており、近い将来病院併設型加速器BNCTの実現すると考える。本研究では、BNCT適応拡大を指向し、次世代BNCTを指向した各腫瘍に最適なホウ素ナノデバイスの開発研究を進める。
研究方法
21年度に、最適化をほぼ確立した生体内で安定なホウ素ナノデバイスを
用いて、22年度より稼動した京都大学原子炉実験所において中性子照射による大腸がん移植マウスを用いたBNCT抗腫瘍効果、肝臓がんBNCTを目的として、肝腫瘍モデルウサギを用いた肝動注によるBNCT抗腫瘍効果および中皮腫BNCTを目的として中皮腫マウスモデルを用いたBNCT抗腫瘍効果を検討する。
用いて、22年度より稼動した京都大学原子炉実験所において中性子照射による大腸がん移植マウスを用いたBNCT抗腫瘍効果、肝臓がんBNCTを目的として、肝腫瘍モデルウサギを用いた肝動注によるBNCT抗腫瘍効果および中皮腫BNCTを目的として中皮腫マウスモデルを用いたBNCT抗腫瘍効果を検討する。
結果と考察
マウス大腸がん移植マウスに対するホウ素ナノデバイスの尾静脈注射による全身投与では、中性子照射後1週間で腫瘍の委縮がみられ、2週間でほぼ100%のマウスの腫瘍の消失を達成した。
胸膜中皮腫に豊富に発現するヒアルロン酸の受容体であるCD44を標的としたホウ素ナノデバイスを開発し、BNCT治療実験を行ったところ、中性子照射後3週間以上にわたり生存を観察したが、100%生存しほとんどのマウスでは胸膜中皮腫の消失を達成した。
トランスフェリン結合型ホウ素ナノデバイスのヒト膀胱癌細胞の極めて高い細胞内への取り込みが確認された。また、マウス膀胱照射実験において、照射3カ月後の時点でマウス膀胱に線維化の所見は確認されなかった。
マウス脳腫瘍モデルに対し、BSO注射によるBSHの血中滞留性体内安定性について検証し、腫瘍内濃度を向上させる手法を新たに開発した。
トランスフェリン修飾ホウ素ナノデバイスを肝動注することにより腫瘍内ボロン濃度を正常肝組織より高めることができ、京都大学原子炉実験所にてBNCTを施行し腫瘍増殖抑制効果を見いだせた。
胸膜中皮腫に豊富に発現するヒアルロン酸の受容体であるCD44を標的としたホウ素ナノデバイスを開発し、BNCT治療実験を行ったところ、中性子照射後3週間以上にわたり生存を観察したが、100%生存しほとんどのマウスでは胸膜中皮腫の消失を達成した。
トランスフェリン結合型ホウ素ナノデバイスのヒト膀胱癌細胞の極めて高い細胞内への取り込みが確認された。また、マウス膀胱照射実験において、照射3カ月後の時点でマウス膀胱に線維化の所見は確認されなかった。
マウス脳腫瘍モデルに対し、BSO注射によるBSHの血中滞留性体内安定性について検証し、腫瘍内濃度を向上させる手法を新たに開発した。
トランスフェリン修飾ホウ素ナノデバイスを肝動注することにより腫瘍内ボロン濃度を正常肝組織より高めることができ、京都大学原子炉実験所にてBNCTを施行し腫瘍増殖抑制効果を見いだせた。
結論
本研究によって、開発した高集積化ホウ素ナノデバイスは、有力なホウ素薬剤の一つとなりうると考えられる。 今後、臨床研究を目指し非臨床試験に向けた安全性試験およびホウ素ナノデバイスのGMP製造を計画して行く。
公開日・更新日
公開日
2011-09-21
更新日
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