文献情報
文献番号
202427008A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害や知的障害、精神疾患、外国人等、配慮・支援の必要な妊産婦への支援を推進するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23DA0501
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 拓代(公益社団法人母子保健推進会議 )
研究分担者(所属機関)
- 帯包 エリカ(北里 エリカ)(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 社会医学研究部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
12,590,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
健やかな妊娠・出産・育児のためには、妊娠期からの切れ目のないより細やかな支援が必要である。特に、発達障害や知的障害、精神疾患、外国人等の妊産婦においては、自らはもちろん、妊産婦のパートナー等においても妊娠・出産・育児の予測が不十分な場合や、支援が必要であると認識していない場合等があり、妊娠・出産・育児に係るリスクが高いと考えられる。そのため、一時点での背景の把握とリスクの評価だけではなく、将来を見据えた信頼関係の構築を行いつつ、妊娠・出産・育児に係る継続した支援を行う必要がある。
本研究では配慮・支援の必要な妊産婦等に対して、妊娠期、子育て期(乳幼児期)それぞれの時期に活用できる、リスク評価の標準化に向けたアセスメントシート、妊産婦について支援者及び対象者が使用するリーフレット類、支援の手引き等の支援ツールを作成し、支援を均てん化することを目的とする。
本研究では配慮・支援の必要な妊産婦等に対して、妊娠期、子育て期(乳幼児期)それぞれの時期に活用できる、リスク評価の標準化に向けたアセスメントシート、妊産婦について支援者及び対象者が使用するリーフレット類、支援の手引き等の支援ツールを作成し、支援を均てん化することを目的とする。
研究方法
「母子保健における特に支援を必要とするこども・家庭・妊産婦の的確な把握を目指すリスクアセスメントシートの実装研究」(以下、「シートの実装研究」)を帯包研究分担者が実施し、代表研究者と他分担研究者が、支援に係るリーフレット等の収集及び案の作成等、自治体事例検討会を行った。
1.シートの実装研究
自治体の母子保健事業における本シートの試験導入、収集したリスクアセスメントデータを用いた地域の支援ニーズ及び支援提供状況の可視化を行った。
2.信頼関係構築や支援に係るリーフレット等の検討
前年度に実施した全市区町村質問紙調査を踏まえ、支援に必要なリーフレット等を作成している159自治体より作成物を収集した。また、2013年から2023年までの10年間を対象に、会議録を除き、PubMed、メディカルオンライン、医学中央雑誌(医中誌Web)による文献検索を行ったが、本研究目的に沿ったリーフレット等は得られず、案の検討を行った。
3.自治体における事例検討会開催
前年度に引き続き、県型保健所等の協力を得て北海道富良野市、沖縄県沖縄市において、配慮支援の必要な事例の検討会を行った。
1.シートの実装研究
自治体の母子保健事業における本シートの試験導入、収集したリスクアセスメントデータを用いた地域の支援ニーズ及び支援提供状況の可視化を行った。
2.信頼関係構築や支援に係るリーフレット等の検討
前年度に実施した全市区町村質問紙調査を踏まえ、支援に必要なリーフレット等を作成している159自治体より作成物を収集した。また、2013年から2023年までの10年間を対象に、会議録を除き、PubMed、メディカルオンライン、医学中央雑誌(医中誌Web)による文献検索を行ったが、本研究目的に沿ったリーフレット等は得られず、案の検討を行った。
3.自治体における事例検討会開催
前年度に引き続き、県型保健所等の協力を得て北海道富良野市、沖縄県沖縄市において、配慮支援の必要な事例の検討会を行った。
結果と考察
1.シートの実装研究
妊娠・出産期1,418件のデータで該当割合は、「予期しない妊娠・望まない妊娠」(20.5%)、「妊婦の精神的不調、精神科や心療内科の受診歴」(19.3%)が多く、初回評価時に「不明」な項目は、「パートナーの社会的ストレス」(79.3%)、「パートナーの精神的不調、精神科や心療内科受診歴」(73.1%)、「妊婦・パートナーの複雑な成育歴、逆境体験」(65.0%)であった。児童福祉による対応が行われた対象者では、「妊娠時に未婚または再婚」(49.0%)、「妊婦の初産時の年齢24歳以下」(38.5%)、「予期しない妊娠・望まない妊娠」(37.5%)、「妊婦の精神的不調、精神科や心療内科の受診歴」(37.5%)が多かった。児童福祉との情報の共有の必要性を示す精度は感度83.4%、特異度48.4%、AUC 65.9%を示した。
データを活用した地域の支援ニーズ・支援提供状況の把握では、状況の可視化や対象の理解が深まったという感想があったが、記録と分析の迅速化の課題も明らかになった。
2.信頼関係構築や支援に係るリーフレット等の検討
令和5年度に実施した全国市区町村に対する調査において、支援が必要な妊産婦や家庭等に対する支援の際に使用しているツールがあると回答した159自治体中、71自治体からツールの提供があった。個別では知的障害等2件、精神障害等0件、発達障害等18件、外国人等52件であった。医学中央雑誌で、10年間に支援ツール等の作成に関する文献の検索を行ったが事例報告がほとんどであった。
妊産婦等の個々の背景よりは信頼関係構築に重点を置いたわかりやすいリーフレットが必要と考え、たたき台を作成した。
3.自治体における配慮・支援の必要な妊産婦及び乳幼児への支援に関する事例検討会開催事例検討会
2自治体で事例を検討し、支援の進行管理を行った。全体で事例を共有し支援することでもれがなくなり、保健師の支援技術が向上した。近隣の自治体へも視察を促し、事例検討会の拡大実施がみられた。DVや精神疾患等への支援が求められており、研修等を実施した。今後は要保護児童対策地域協議会における特定妊婦等の支援数や把握経路等の変化から、ポピュレーションアプローチによる母子保健活動の地域評価を行っていく。
妊娠・出産期1,418件のデータで該当割合は、「予期しない妊娠・望まない妊娠」(20.5%)、「妊婦の精神的不調、精神科や心療内科の受診歴」(19.3%)が多く、初回評価時に「不明」な項目は、「パートナーの社会的ストレス」(79.3%)、「パートナーの精神的不調、精神科や心療内科受診歴」(73.1%)、「妊婦・パートナーの複雑な成育歴、逆境体験」(65.0%)であった。児童福祉による対応が行われた対象者では、「妊娠時に未婚または再婚」(49.0%)、「妊婦の初産時の年齢24歳以下」(38.5%)、「予期しない妊娠・望まない妊娠」(37.5%)、「妊婦の精神的不調、精神科や心療内科の受診歴」(37.5%)が多かった。児童福祉との情報の共有の必要性を示す精度は感度83.4%、特異度48.4%、AUC 65.9%を示した。
データを活用した地域の支援ニーズ・支援提供状況の把握では、状況の可視化や対象の理解が深まったという感想があったが、記録と分析の迅速化の課題も明らかになった。
2.信頼関係構築や支援に係るリーフレット等の検討
令和5年度に実施した全国市区町村に対する調査において、支援が必要な妊産婦や家庭等に対する支援の際に使用しているツールがあると回答した159自治体中、71自治体からツールの提供があった。個別では知的障害等2件、精神障害等0件、発達障害等18件、外国人等52件であった。医学中央雑誌で、10年間に支援ツール等の作成に関する文献の検索を行ったが事例報告がほとんどであった。
妊産婦等の個々の背景よりは信頼関係構築に重点を置いたわかりやすいリーフレットが必要と考え、たたき台を作成した。
3.自治体における配慮・支援の必要な妊産婦及び乳幼児への支援に関する事例検討会開催事例検討会
2自治体で事例を検討し、支援の進行管理を行った。全体で事例を共有し支援することでもれがなくなり、保健師の支援技術が向上した。近隣の自治体へも視察を促し、事例検討会の拡大実施がみられた。DVや精神疾患等への支援が求められており、研修等を実施した。今後は要保護児童対策地域協議会における特定妊婦等の支援数や把握経路等の変化から、ポピュレーションアプローチによる母子保健活動の地域評価を行っていく。
結論
アセスメントツールの実装研究や、具体的事例に関する事例検討会得られた知見をさらに蓄積し、支援に有用なリーフレット等のツールの作成、また効果的な支援を展開する支援手引き等の作成を行っていく。
公開日・更新日
公開日
2025-09-05
更新日
-