学童期及び思春期等における性に関する健康課題に対する診療及び支援体制の構築に向けた研究

文献情報

文献番号
202427003A
報告書区分
総括
研究課題名
学童期及び思春期等における性に関する健康課題に対する診療及び支援体制の構築に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22DA1004
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
寺内 公一(国立大学法人東京科学大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 倉澤 健太郎(横浜市立大学大学院医学研究科)
  • 尾臺 珠美(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 鹿島田 健一(東京科学大学病院)
  • 西岡 笑子(順天堂大学 保健看護学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
6,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第二次性徴をはじめとする身体的変化を経験した児童生徒は、性を含む心身の健康課題に直面する。そのような悩みについて相談するために医療機関を受診する者は少なく、また医療機関においても多様化・高度化する学童期・思春期の健康課題に十分に対応できていない。本研究では、学童・思春期の悩みに対応できる産婦人科・小児科・泌尿器科等医療機関の体制整備の実態を把握するとともに、都道府県等に設置されている性と健康の相談支援センターや母子保健・児童福祉・学校教育等に関する関係機関との連携を含めた支援方策を検討することを目標とする。
研究分担者・研究協力者から成る研究班は産婦人科医・小児科医・泌尿器科医・助産師により構成されている。これに加えて、「ユース・クリニック」運営に携わる自治体職員・保健師・教員等が研究協力者として随時研究班に参加する予定である。「ユース・クリニック」の学術的定義は未定であるが、一般には「身近な地域で若者が自身の心や体、性の悩みなどを無料で気軽に相談できる場所」と理解されており、本研究でもそのような事業を展開している施設を対象とする。
研究方法
研究は3年計画で行う。1年目は、現在日本全国において行われている「学童期・思春期にある男女の性を含めた心身の健康課題に関する相談の窓口」となる医療機関(ユース・クリニック)における診療や相談支援に関する実態を把握する。特に、各地域において、望まない妊娠に関する相談や性教育を積極的に行うユース・クリニック事業を展開し、一定の成功を収めている先駆的な取り組みについての事例をなるべく多く収集する。2年目は、1年目に収集された先駆的な取り組み事例の具体的な内容について検討し、事例間の共通項目と特異項目とを抽出しながら、統合的な解析を行う。抽出された共通項目および特異項目のそれぞれについて、国内外の文献を照会しつつ、その有用性に関する学術的な根拠の有無を評価する。3年目は、2年目に国内外の文献に照会して学術的な根拠を確認できた項目を中心に、全国的に普及可能な内容を指針草案としてまとめる。この指針草案について、研究班員を介して各種連携団体および自治体からの評価を受け、その内容を指針草案に反映して修正したものを最終的な指針案とし、これを基に普遍的に使用可能な手引書を作成する。
結果と考察
現在日本のユースクリニック事業には以下のような課題があることが明らかになった。
(1)日本のユースクリニックは各施設や団体の裁量で運営されており、提供サービスの内容にばらつきがある。その均てん化を図るためには、以下の課題が浮き彫りとなった。
■専門的な相談員の確保
■クリニック間の情報共有の不足
■評価指標の未整備
(2)連携先の確保の困難さ
ユースクリニックからさらに専門性の高い施設への紹介が必要とされる場合、連携先の確保が困難であるという課題が挙がった。例えば、クリニック併設型の施設の場合、一次相談員の判断で自施設を受診できるが、さらに重度のPMDDや自殺願望がある相談者の場合、精神科への紹介が必要となるが、その連携先は十分であるとは言えない。
(3) ユースクリニックの認知・訪問促進
ユースクリニックを設立したとしても、実際に問題を抱える相談者が認知していなければその問題を解決することはできない。各ユースクリニックはホームページを持ち、インターネットを通じての周知活動を行っている。また、助産師や産婦人科医などは学校等でも性教育などの講演活動を通じて、ユースクリニックを広めている場合もある。
(4)財政面の課題
 ユースクリニック事業を運営する施設・団体は、医療機関と併設している場合や、そうでない場合を含めて、それぞれが独自の財源で運営されている場合が多いのが現状で、財政面では十分な基盤がないという課題がある。オープンユースなどの公開型ユースクリニックを開設している施設においては無料から500円ほどの利用料が主流となっており、人件費を含めて併設のクリニックや寄付あるいはクラウドファンディングなどで運営費を賄っている現状である。また、クリニック併設型のオープンユースの場合は、自施設の看護師がボランティアの相談員として当たる場合も多く、時間的負担もかなり大きい。
結論
今後わが国のユースクリニック事業の発展に向けて、①ユースクリニックの定義の明確化、②人材の確保と配置、③ユースクリニック間の情報共有とサービスの均てん化、④報告・モニタリングの指標策定、⑤医療機関・その他の機関との連携強化、⑥利用者への周知、⑦財政面の基盤確保、⑧性教育の基盤整備と向上、等を行っていく必要がある。
以上の観点に基づき、「ユースクリニック事業の発展に向けて 提言書」および「ユースクリニックのためのマネジメント・ハンドブック ~若年者を対象としたユースクリニック運営の手引き~」を作成した。

公開日・更新日

公開日
2025-12-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-12-01
更新日
-

文献情報

文献番号
202427003B
報告書区分
総合
研究課題名
学童期及び思春期等における性に関する健康課題に対する診療及び支援体制の構築に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22DA1004
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
寺内 公一(国立大学法人東京科学大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 倉澤 健太郎(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 尾臺 珠美(東京科学大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 鹿島田 健一(東京科学大学病院)
  • 西岡 笑子(順天堂大学 保健看護学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第二次性徴をはじめとする身体的変化を経験した児童生徒は、性を含む心身の健康課題に直面する。そのような悩みについて相談するために医療機関を受診する者は少なく、また医療機関においても多様化・高度化する学童期・思春期の健康課題に十分に対応できていない。本研究では、学童・思春期の悩みに対応できる産婦人科・小児科・泌尿器科等医療機関の体制整備の実態を把握するとともに、都道府県等に設置されている性と健康の相談支援センターや母子保健・児童福祉・学校教育等に関する関係機関との連携を含めた支援方策を検討することを目標とする。
研究分担者・研究協力者から成る研究班は産婦人科医・小児科医・泌尿器科医・助産師により構成されている。これに加えて、「ユース・クリニック」運営に携わる自治体職員・保健師・教員等が研究協力者として随時研究班に参加する予定である。「ユース・クリニック」の学術的定義は未定であるが、一般には「身近な地域で若者が自身の心や体、性の悩みなどを無料で気軽に相談できる場所」と理解されており、本研究でもそのような事業を展開している施設を対象とする。
研究方法
研究は3年計画で行う。1年目は、現在日本全国において行われている「学童期・思春期にある男女の性を含めた心身の健康課題に関する相談の窓口」となる医療機関(ユース・クリニック)における診療や相談支援に関する実態を把握する。特に、各地域において、望まない妊娠に関する相談や性教育を積極的に行うユース・クリニック事業を展開し、一定の成功を収めている先駆的な取り組みについての事例をなるべく多く収集する。2年目は、1年目に収集された先駆的な取り組み事例の具体的な内容について検討し、事例間の共通項目と特異項目とを抽出しながら、統合的な解析を行う。抽出された共通項目および特異項目のそれぞれについて、国内外の文献を照会しつつ、その有用性に関する学術的な根拠の有無を評価する。3年目は、2年目に国内外の文献に照会して学術的な根拠を確認できた項目を中心に、全国的に普及可能な内容を指針草案としてまとめる。この指針草案について、研究班員を介して各種連携団体および自治体からの評価を受け、その内容を指針草案に反映して修正したものを最終的な指針案とし、これを基に普遍的に使用可能な手引書を作成する。
結果と考察
現在日本のユースクリニック事業には以下のような課題があることが明らかになった。
(1)日本のユースクリニックは各施設や団体の裁量で運営されており、提供サービスの内容にばらつきがある。その均てん化を図るためには、以下の課題が浮き彫りとなった。
■専門的な相談員の確保
■クリニック間の情報共有の不足
■評価指標の未整備
(2)連携先の確保の困難さ
ユースクリニックからさらに専門性の高い施設への紹介が必要とされる場合、連携先の確保が困難であるという課題が挙がった。例えば、クリニック併設型の施設の場合、一次相談員の判断で自施設を受診できるが、さらに重度のPMDDや自殺願望がある相談者の場合、精神科への紹介が必要となるが、その連携先は十分であるとは言えない。
(3) ユースクリニックの認知・訪問促進
ユースクリニックを設立したとしても、実際に問題を抱える相談者が認知していなければその問題を解決することはできない。各ユースクリニックはホームページを持ち、インターネットを通じての周知活動を行っている。また、助産師や産婦人科医などは学校等でも性教育などの講演活動を通じて、ユースクリニックを広めている場合もある。
(4)財政面の課題
ユースクリニック事業を運営する施設・団体は、医療機関と併設している場合や、そうでない場合を含めて、それぞれが独自の財源で運営されている場合が多いのが現状で、財政面では十分な基盤がないという課題がある。オープンユースなどの公開型ユースクリニックを開設している施設においては無料から500円ほどの利用料が主流となっており、人件費を含めて併設のクリニックや寄付あるいはクラウドファンディングなどで運営費を賄っている現状である。また、クリニック併設型のオープンユースの場合は、自施設の看護師がボランティアの相談員として当たる場合も多く、時間的負担もかなり大きい。
結論
今後わが国のユースクリニック事業の発展に向けて、①ユースクリニックの定義の明確化、②人材の確保と配置、③ユースクリニック間の情報共有とサービスの均てん化、④報告・モニタリングの指標策定、⑤医療機関・その他の機関との連携強化、⑥利用者への周知、⑦財政面の基盤確保、⑧性教育の基盤整備と向上、等を行っていく必要がある。
以上の観点に基づき、「ユースクリニック事業の発展に向けて 提言書」および「ユースクリニックのためのマネジメント・ハンドブック ~若年者を対象としたユースクリニック運営の手引き~」を作成した。

公開日・更新日

公開日
2025-12-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-12-01
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202427003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
思春期から若年成人期までを対象に、 若年者が抱える多様な健康課題や悩みに対して、専門的かつ包括的なサポートを提供する施設(通称「ユースクリニック」)について、初の全国実態調査を行った。その結果、わが国のユースクリニック事業には、①定義の明確化、②人材の確保と配置、③施設間の情報共有とサービスの均てん化、④報告・モニタリングの指標策定、⑤医療機関・その他の機関との連携強化、⑥利用者への周知、⑦財政面の基盤確保、⑧性教育の基盤整備と向上、等の課題があることが明らかになった。
臨床的観点からの成果
ユースクリニック事業に関する初の全国実態調査を行い、今後の課題を明らかにした。調査解析結果に基づき、「ユースクリニック事業の発展に向けて 提言書」および「ユースクリニックのためのマネジメント・ハンドブック ~若年者を対象としたユースクリニック運営の手引き~」の2冊の小冊子を作成した。
ガイドライン等の開発
ユースクリニック事業に関する初の全国実態調査を行い、今後の課題を明らかにした。調査解析結果に基づき、「ユースクリニック事業の発展に向けて 提言書」および「ユースクリニックのためのマネジメント・ハンドブック ~若年者を対象としたユースクリニック運営の手引き~」の2冊の小冊子を作成した。
その他行政的観点からの成果
令和6年度から検討されたプレコンセプショケアの推進に関する検討会において、若者の性や妊娠に関する相談体制を整備することは重要であることが指摘されていることから、本研究の成果については、今後の施策展開に役立つものと考える。
その他のインパクト
本研究班の成果は大きな注目を集め、2024年9月以降、NHK、公明新聞、朝日新聞、読売新聞等複数のメディアでわが国のユースクリニック事業に関する報道が行われた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
11件
TV取材2件・放送5件・ウェブ掲載1件、新聞取材3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-12-08
更新日
-

収支報告書

文献番号
202427003Z