文献情報
文献番号
201010013A
報告書区分
総括
研究課題名
肺癌移植マウスを用いた遺伝子発現プロファイル解析による分子標的薬の皮膚毒性に関する解析
課題番号
H20-バイオ・若手-008
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 一也(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター(研究所) 研究所)
研究分担者(所属機関)
- 岡見 次郎(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
一般的な抗癌剤の皮膚毒性は軽度な静脈炎が主であり発生頻度は低い。これに対し、ゲフィチニブ及びエルロチニブの皮膚毒性は、にきび様の皮疹が6割を超える症例で見られ、グレード3以上の重篤な場合もある。ほとんどの場合は対処療法でコントロール可能であるが、投薬を中止せざるを得ない場合も存在している。近年、これら分子標的薬の各臨床試験の副作用データが解析されたが、皮疹の発生が抗腫瘍効果と相関し、皮疹のグレードが上がると奏効率の向上や生存期間の延長が認められた。しかし、これら分子標的薬の皮疹発生の分子メカニズムは明らかとなっていない。皮疹の分子生物学的原因を探り、副作用を低減できれば治療効果を高めることにつながる。
研究方法
本研究では分子標的薬の皮疹発生メカニズムを明らかにすることを目的とした。炎症を起こした皮膚や血液を用いたこれまでの解析では分子メカニズムの解明には至っていない。そこで、皮疹と抗腫瘍効果の関連性を手がかりに、遺伝子発現プロファイル解析により皮膚毒性に関連する遺伝子群の同定を試みることとした。また、複数の分子標的薬の並列解析が可能な個々の患者の肺癌組織を直接マウスに移植する組織移植マウスの作製を試みた。
結果と考察
作製したマウスモデルに対しシスプラチンの投与を3ヶ月以上行い、シスプラチン耐性腫瘍を3例得た。この耐性腫瘍と対象群との比較による発現プロファイル解析を行い、S100関連遺伝子群がシスプラチン耐性に関与している可能性を見出した。
高感度遺伝子変異検出技術であるBEAMingを用いて血漿中のctDNA(circulating tumor DNA)の検出法を確立し、T790M耐性変異の検出に成功した。また、T790M(+)かつ皮疹のgrade2以上の群とそれ以外の群とではP=0.003と有意に前者の予後(PFS)が良好であった。
高感度遺伝子変異検出技術であるBEAMingを用いて血漿中のctDNA(circulating tumor DNA)の検出法を確立し、T790M耐性変異の検出に成功した。また、T790M(+)かつ皮疹のgrade2以上の群とそれ以外の群とではP=0.003と有意に前者の予後(PFS)が良好であった。
結論
遺伝子発現プロファイル解析により皮疹関連30遺伝子を同定した。また、ゲフィチニブの耐性変異であるT790Mは皮疹と独立した効果予測因子であることが示唆された。皮疹発生のマーカーを同定するため、全エキソーム解析による遺伝子変異及びSNPの同定を進めていく。
マウスモデルの解析ではS100遺伝子群がシスプラチンの耐性に関与していることが示唆された。耐性機構のさらなる理解へ向けて研究を進めて行きたい。
マウスモデルの解析ではS100遺伝子群がシスプラチンの耐性に関与していることが示唆された。耐性機構のさらなる理解へ向けて研究を進めて行きたい。
公開日・更新日
公開日
2011-08-12
更新日
-