子どもの死を検証し予防に活かす包括的制度を確立するための研究

文献情報

文献番号
202427002A
報告書区分
総括
研究課題名
子どもの死を検証し予防に活かす包括的制度を確立するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22DA1002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
沼口 敦(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 医学部 附属病院 救急・内科系集中治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹原 健二(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
  • 清水 直樹(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 植松 悟子(研究開発法人 国立成育医療研究センター 総合診療部救急診療科)
  • 木下 あゆみ(独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター 統括診療部)
  • 川口 敦(聖マリアンナ医科大学 小児科)
  • 井濱 容子(横浜市立大学 医学研究科)
  • 松永 綾子(藤浪 綾子)(千葉県こども病院 代謝科)
  • 山本 琢磨(長崎大学医学部)
  • 小谷 泰一(三重大学 医学系研究科法医法科学分野)
  • 山中 龍宏(緑園こどもクリニック)
  • 小保内 俊雅(東京都保健医療公社 多摩北部医療センター)
  • 仙田 昌義(総合病院国保旭中央病院 小児科)
  • 溝口 史剛(前橋赤十字病院 小児科部)
  • 宮原 弘明(愛知医科大学 加齢医科学研究所)
  • 小佐井 良太(福岡大学 法学部)
  • 松原 英世(甲南大学 法学部)
  • 河村 有教(長崎大学 大学院多文化社会学研究科・多文化社会学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
13,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 こどもの死亡の原因に関する情報の収集・管理等に関する体制の整備を実現するため,チャイルド・デス・レビュー(CDR,予防のためのこどもの死亡検証)が探索される。この過程で明らかになった諸課題に対処するため,CDRを主軸とした多機関による継続的かつ包括的制度の提案を目的とする。各地域における実務者の選定と啓発,死亡事象に関しての情報収集と検証,特に乳幼児の不詳死を中心とした死因究明の均霑化,予期せぬ傷害に関する情報収集および予防,遺族への悲嘆ケアの提供,一般市民への広報と啓発,等を行う包括的制度を提案し,併せて,実務者および国民への普及啓発戦略と遺族支援(グリーフケア)の提案も目指す。
研究方法
 CDRの各段階(準備−調査−検証−提言)にかかる幅広い課題を解決するため,予期せぬ傷害と乳幼児突然死を主要な対象として取り上げながら,以下の5課題を設定した。
(課題1)子どもの死亡に対応する包括的な仕組みの基盤策定:多職種で運営されるCDRモデル事業が地域において子どもの死を包括的に扱うことに着目し,その効果的な運用を探索する課題である。最終年度には,同事業の実務支援と実地調査の知見を基に中央支援事業との連携を保ちながら主要課題全体を統合し,わが国のCDRのありかた,地域における子どもの死亡に対応する仕組みの基盤を探索した。
(課題2)乳幼児突然死(SUID)の死因究明と予防対応策の探索:診断ガイドライン改訂ほか社会啓発を継続し,予防対応策の提言を纏めるとともに,課題解決のための包括的な組織のありかたを探索する課題である。乳幼児突然死の環境疫学的な検討をすすめながらSIDS診断ガイドラインおよび運用案の改訂に着手した。
(課題3)子どもの傷害予防にかかる情報収集と予防策の探索:軽症例から死亡例まで幅広いスペクトラムの予期せぬ傷害について,情報収集の方法論および蓄積データの解析と活用について探索する課題である。各種の工学的検証のデータ蓄積を進め,環境整備と注意喚起の普及の具体的な方策を探索した。
(課題4)こどもを亡くした遺族へのケアのあり方とそれを提供する仕組みの探索:遺族に提供されるケアの現状を調査し,CDRとグリーフケアの関係を整理して各地域での実践体制を探索する課題である。遺族に提供されるケアの現状調査,医療機関外でのグリーフケアの実態調査,ニーズアセスメントを継続し,社会制度としての遺族ケア提供を探索した。
(課題5)子どもの死亡に関するデータベースの探索:CDRにおいてより有効な検証を導くための情報の集積様式を探索する課題である。CDRモデル事業の観測と支援で得られた知見から,収集するべき死亡関連情報を探索し,簡略版のデータ収集様式を提案した。
 これら5課題をとおして,CDRが安全で安心な社会を構築するための制度として国民に受け入れられ,子どもの死亡事象に真摯に対処する社会基盤として確立する方策を探索した。
結果と考察
(課題1)CDRモデル事業の実務支援を継続し知見を集積した。遺族の同意を必須とする同事業の運用は臨床実務者の負担が過大であり,CDRの全国展開には法的基盤の整理が必須である。検証実務者の養成,地域における研修,一般国民層への啓発を試験実施し有効性を確認した。併せて疫学解析を継続した。これらを基盤として,地域でこどもの死を包括的に対応する体制の整備に関するガイダンスを提案した。
(課題2)課題3と連携して睡眠中の乳児突然死に関する医療情報の収集,疫学的探索,および保育中の睡眠中突然死の既存報告の検証を行い,各種学術団体と連携してSUID診断基準の改訂の基本方針を定め,概ね1年以内に完了見込みまで到達した。国民調査を基に予防啓発の基礎資料を制作した。
(課題3)205医療施設2165死亡事例情報を収集,29事例の工学的検証をとりまとめて今後の情報の集約と専門検証のあり方を考察し,CDRで用いる「わが国のCDR / こどもの傷害予防ガイダンス」を編纂した。
(課題4)各地域でのグリーフケアの内容と提供体制を提案する「わが国のCDR / グリーフケアガイダンス」を編纂した。
(課題5)CDRにおける初期調査とスクリーニングに用いうる「死亡調査票(簡易版)」を提案した。
結論
CDRを運営する多機関多職種からなる協議体は,地域でこどもの死を検証して予防に活かすための包括的な制度となる。ガイダンスを参照して当該協議体を形成し,その職務範囲を規定し,効果的に運営し,有用な結果を発出して国民にフィードバックが図られることが望まれる。また,各地域でこの制度を有効稼働するための全国的な支援の確立が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2026-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-03-31
更新日
-

文献情報

文献番号
202427002B
報告書区分
総合
研究課題名
子どもの死を検証し予防に活かす包括的制度を確立するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22DA1002
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
沼口 敦(国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 医学部 附属病院 救急・内科系集中治療部)
研究分担者(所属機関)
  • 竹原 健二(国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所 政策科学研究部)
  • 清水 直樹(聖マリアンナ医科大学 医学部)
  • 植松 悟子(研究開発法人 国立成育医療研究センター 総合診療部救急診療科)
  • 木下 あゆみ(独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター 統括診療部)
  • 川口 敦(聖マリアンナ医科大学 小児科)
  • 井濱 容子(横浜市立大学 医学研究科)
  • 松永 綾子(藤浪 綾子)(千葉県こども病院 代謝科)
  • 山本 琢磨(長崎大学医学部)
  • 小谷 泰一(三重大学 医学系研究科法医法科学分野)
  • 山中 龍宏(緑園こどもクリニック)
  • 小保内 俊雅(東京都保健医療公社 多摩北部医療センター)
  • 仙田 昌義(総合病院国保旭中央病院 小児科)
  • 溝口 史剛(前橋赤十字病院 小児科部)
  • 宮原 弘明(愛知医科大学 加齢医科学研究所)
  • 小佐井 良太(福岡大学 法学部)
  • 松原 英世(甲南大学 法学部)
  • 河村 有教(長崎大学 大学院多文化社会学研究科・多文化社会学部)
研究区分
こども家庭科学研究費補助金 分野なし 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 子どもの死亡の原因に関する情報の収集・管理等に関する体制の整備を実現するため,チャイルド・デス・レビュー(CDR,予防のためのこどもの死亡検証)が探索される。この実現に向けた各地域における実務者の選定と啓発,死亡事象に関しての情報収集と検証,特に乳幼児の不詳死を中心とした死因究明の均霑化,予期せぬ傷害に関する情報収集および予防,遺族への悲嘆ケアの提供,一般市民への広報と啓発,等を行う包括的制度を提案し,併せて,実務者および国民への普及啓発戦略と遺族支援(グリーフケア)の提案も目指した。
研究方法
 以下の5課題を設定し,CDRの各段階(準備−調査−検証−提言)における課題解決を探索した。
結果と考察
(課題1)こどもの死亡に対応する包括的な仕組みの基盤策定:医療,母子保健,児童福祉,警察,消防など多職種で運営されるCDRモデル事業が地域においてこどもの死を包括的に扱うことに着目し,その効果的な運用を探索した。CDRモデル事業の実務を支援し,知見を集積した。実データの集約は法規上困難であったが,実務者の経験の蓄積により地方自治体の体制と課題について探索した。CDRの全国展開には個人情報保護法,刑事訴訟法などとの法的基盤の整理が必須であり,検討をすすめた。事業への理解のため,各方面への啓発・啓発を展開し体系化をはかった。小児死亡に関する疫学解析を実施した。これらを基盤として,地域でこどもの死に包括的に対応する体制の整備に資する「わが国のCDR / 運営のためのガイダンス(第2版)」を編纂した。
(課題2)乳幼児突然死(SUID)の死因究明と予防対応策の探索:診断ガイドライン改訂ほか社会啓発を継続し,予防対応策の提言を纏めるとともに,課題解決のための包括的な組織のありかたを探索した。乳児突然死に対する死因究明の現状と課題を調査し,司法の関与が大きい現行制度における死因究明がCDRに寄与しにくいことを確認した。課題3と連携して死因究明の精度検証をしながら睡眠中の乳児突然死に関する医療情報を収集し,併せて疫学的探索,一般国民の意識調査,保育中の睡眠中突然死の検証を実施した。各学術団体と連携してSUID診断基準改訂の基本方針を定め,概ね1年以内に完了見込みまで到達した。また予防策の啓発にかかる動画資材を開発した。
(課題3)こどもの傷害予防にかかる情報収集と予防策の探索:軽症例から死亡例まで幅広いスペクトラムの予期せぬ傷害について,情報収集の方法論および蓄積データの活用について探索した。医療施設からの情報収集とNational Database解析により,予期せぬ傷害の発生につき疫学を解析するとともに,電子媒体による情報収集様式を策定した。希少事例の詳細な工学的検証を行い,国レベルで検証を行う体制整備の必要性を示した。これら知見をもとに「わが国のCDR / こどもの傷害予防ガイダンス」を編纂した。
(課題4)こどもを亡くした遺族へのケアのあり方とそれを提供する仕組みの探索:遺族に提供されるグリーフケアの現状を調査し,CDRとの関係を整理して各地域での実践体制を探索した。複数の医療施設で個別的に提供されるグリーフケアの現状,遺族の求める情報,社会制度として期待される内容について探索し,非医療機関におけるグリーフケアの提供ツールを開発した。公益のためのCDRと個人のためのグリーフケアの関係の整理,社会制度として応用するためのありかた等の整理に基づき,各地域でのグリーフケアの内容と提供体制を提案する「わが国のCDR / グリーフケアガイダンス」を編纂した。
(課題5)こどもの死亡に関するデータベースの探索:CDRにおいてより有効な検証を導くための情報の集積と,子どもの死の検証を有効に社会・医療者に還元するための包括的なデータベースの探索を行った。CDRへの情報入力のありかたを探索し,初期調査およびスクリーニングに用いうる「死亡調査票(簡易版)」を提案し有効性を検証した。またCDRからの情報出力のための共通データベースにつき探索し,テキストマイニングの手法により量的データへの変換がどのように可能であるかの予備的な質的研究を開始した。
 これら5課題をとおして,CDRが安全で安心な社会を構築するための制度として国民に受け入れられ,子どもの死亡事象に対処する社会基盤として確立する方策を探索した。
結論
 CDRを運営する多機関多職種からなる協議体は,地域でこどもの死を検証して予防に活かすための包括的な制度となる。ガイダンスを参照して当該協議体を形成し,その職務範囲を規定し,効果的に運営し,有用な結果を発出して国民にフィードバックが図られることが望まれる。また,各地域でこの制度を有効稼働するための法的枠組みの整理,全国的な支援の確立が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2026-03-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-03-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202427002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
こどもの死亡について,死亡態様によらない広範な臨床情報の集約および人口動態統計を基盤とした疫学解析により,わが国のこどもの死亡に関する学術的課題の提起につながる基礎資料を策定した。うち乳児突然死については,詳細な疫学解析とエキスパートオピニオンにより,家庭での乳児の睡眠環境の安全確保に関する課題を提起し,より有効な死因究明を実現するための診断基準策定の方向性を定めた。
これらの展開によって,わが国全体でこどもの死因究明の制度が向上することが期待される。
臨床的観点からの成果
小児死亡事例に関してカルテ記載等の医療情報を集約し,アナムネ情報の収集や各種検査等の実施の状況について解析された。
小児科医等が遭遇する極めて稀な事象に対して,死因究明,同類事象について経験集約と共有,予防を念頭に置いた検証,グリーフケア等の遺族対応等を念頭に置いた「適切な対応」とは何かを具体的に提示し,臨床医の業務についての啓発を通して医療業務の向上に寄与した。
ガイドライン等の開発
一連の研究成果を基盤として,以下3部のガイダンスを編纂した。「CDR運営のガイダンス(2025改訂版)」は,わが国でCDRを実現するための地方自治体の体制と課題の解決について解説した。CDRの立ち上げと安定稼働に活用されることを期待する。「こどもの傷害予防のガイダンス」は,複数の傷害に関して既出報告,文献,その他情報を要約し解説した。CDR等で検証の基礎資料として活用されることを想定する。「グリーフケアガイダンス」は,自治体等が提供するグリーフケアについて概説した。
その他行政的観点からの成果
各地のCDRモデル事業の伴走支援,および実務者の知見を集積・展開し,その安定実施に貢献した。また,今後の事業展開のための基礎資料として活用された。次代のファシリテーター育成を行った。法学的観点からの探索をもとに,死因究明等推進計画検証等推進会議(R5年)に資料を提出し各種質疑と意見具申を行った。
蓄積された知見は適宜,乳児突然死に対して睡眠環境の整備の観点から啓発推進に活用された。各種ガイダンスは,以後のCDRに関する事業の展開に活用いただく。
その他のインパクト
各種の教育啓発活動を実施した。さまざまな専門者を対象とした研修会(医師対象,関連職種対象など計10回),関係職種に対する講演5回,一般国民等を対象とした講義6回を実施し,CDRについての教育と普及啓発に努めた。「CDR」という用語の社会的認知度の上昇に貢献し,将来の制度策定の基礎を形成した。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
32件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
23件
CDRモデル事業の運営支援14,提言のオーバービュー4,CDRありかた検討会の契機1 ・SIDS予防啓発リーフレット改訂1,ガイダンス3
その他成果(普及・啓発活動)
25件
関係者への講演5,関連職種への研修12,一般への講演6,マスコミ発表2

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-09-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
202427002Z