重層的・定量的トキシコモディフィコーム解析を用いた安全性バイオマーカーの探索

文献情報

文献番号
201010011A
報告書区分
総括
研究課題名
重層的・定量的トキシコモディフィコーム解析を用いた安全性バイオマーカーの探索
課題番号
H20-バイオ・若手-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
足立 淳(医薬基盤研究所 基盤的研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
4,950,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、安全性バイオマーカーの探索対象として、蛋白質の“質”の変化に注目し、複数の蛋白質翻訳後修飾について、その変化を定量する解析システムを構築し、バイオインフォマティクス処理と組み合わせて、大規模データから安全性バイオマーカーや毒性シグナルネットワークを精度よく推定することを研究目的とする。
研究方法
 前年度までに確立した、SILAC法を用いたリン酸化プロテオーム、ユビキチン化プロテオーム解析手法を用いて、ヒドロキシ尿素もしくはガンマ線照射によるDNA損傷応答を解析した。定量データを基に、複数のバイオインフォマティクス解析を行い、その結果を重層的に取り込むことによって、大規模データからマーカー候補を効率的に絞り込むことを試みた。
結果と考察
 Fe-IMAC法を用いたリン酸化プロテオーム解析では、ガンマ線照射サンプルにおいて5041個の蛋白質、27422個のリン酸化部位を同定した。これは、過去に報告されたDNA損傷応答におけるリン酸化プロテオーム解析データで最も大規模な研究(Sci.Signal., 3, 151, re3, 2010)で同定された1099蛋白質、2871部位を大幅に上回る規模である。2倍以上に増減が見られた蛋白質は2473個、リン酸化部位は6555個と極めて多くのリン酸化部位がガンマ線照射によって変動していることが明らかになった。これらの変動リン酸化蛋白質は、DNA損傷のマーカーもしくは機能因子候補であるが、これだけ多数の候補を検証することは困難なので、バイオインフォマティクス解析によって、DNA損傷シグナルにおいて活性化しているリン酸化酵素を予測した結果、DNA損傷に応答することが知られているATM/ATRや、DNA損傷との関連が知られていないkinaseXの活性化が予測された。Networkinによって予測されたkinaseXの基質群を用いてネットワーク解析を行うと、ATRやChk1などDNA損傷に関わる蛋白質が蛋白質ネットワークを形成していた。
結論
 トキシコモディフィコーム解析システムを試行し、システムの定量精度・感度・効率性を向上させた。さらにパスウェイ解析、ジーンオントロジー解析、ゲノムワイドなノックダウン解析で得られた情報を数値化し、重ね合わせることで、大規模データからマーカー候補を効率的に絞り込む手法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2011-08-15
更新日
-

文献情報

文献番号
201010011B
報告書区分
総合
研究課題名
重層的・定量的トキシコモディフィコーム解析を用いた安全性バイオマーカーの探索
課題番号
H20-バイオ・若手-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
足立 淳(医薬基盤研究所 基盤的研究部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬バイオマーカー探索研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまでのバイオマーカー探索では、蛋白質の“量”の変化が主に測定されてきたが、毒性の作用機序には、“質”の変化、例えばキナーゼ阻害によるリン酸化修飾変化のような、標的因子の“質”(翻訳後修飾)の変化が深く関わっている。そこで本研究では、直接“質”の変化を定量的に捉え、さらに複数の翻訳後修飾を同時に解析し、重層的にデータを統合・解析することで、バイオマーカー探索を行うという戦略を提唱し、そのための基盤整備から有用性の検証まで行うことを目標とした。
研究方法
バイオマーカー探索を行うために必要となる要素技術である、安定同位体アミノ酸標識法を用いた蛋白質の定量、nano LC-MS/MS、修飾ペプチド・蛋白質の濃縮技術、バイオインフォマティクス解析についての基礎検討からこれらの要素技術を組み合わせた解析システムの検証まで行った。
結果と考察
本研究の集大成として、H22年度にDNA損傷応答を解析した結果、リン酸化プロテオーム解析では、 ガンマ線照射サンプルにおいて5041個の蛋白質、27422個のリン酸化部位を同定した。これは、過去に報告されたDNA損傷応答におけるリン酸化プロテオーム解析データで最も大規模な研究(Sci.Signal., 3, 151, re3, 2010)で同定された1099蛋白質、2871部位を大幅に上回る規模である。2倍以上に増減が見られた蛋白質は2473個、リン酸化部位は6555個と極めて多くのリン酸化部位がガンマ線照射によって変動していることが明らかになった。さらにバイオインフォマティクス解析によって、DNA損傷に応答することが知られていないkinaseXがγ線照射直後に活性化していることが予測された。kinaseX の基質候補として、ATRやChk1などDNA損傷に関わる蛋白質が蛋白質ネットワークを形成していること、kinaseXのノックダウンは放射線感受性を示すことからも、kinaseXはγ線照射の早期マーカー候補であり、放射線治療増感剤としての標的候補としても有望であると考えられる。
結論
トキシコモディフィコーム解析システムを試行し、システムの定量精度・感度・効率性を向上させた。さらにパスウェイ解析、ジーンオントロジー解析、ゲノムワイドなノックダウン解析で得られた情報を数値化し、重ね合わせることで、大規模データからマーカー候補を効率的に絞り込む手法を確立した。

公開日・更新日

公開日
2011-08-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201010011C

収支報告書

文献番号
201010011Z