医師臨床研修制度における基本的臨床能力評価試験の活用等に関する研究

文献情報

文献番号
202421067A
報告書区分
総括
研究課題名
医師臨床研修制度における基本的臨床能力評価試験の活用等に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24IA2016
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
小林 裕幸(筑波大学附属病院 水戸地域医療教育センター 水戸協同病院 総合診療科)
研究分担者(所属機関)
  • 徳田 安春(国立大学法人筑波大学 大学院人間総合科学研究科)
  • 志水 太郎(獨協医科大学 総合診療医学)
  • 山本 祐(自治医科大学 地域医療学センター総合診療部門)
  • 鋪野 紀好(千葉大学 大学院医学研究院 地域医療教育学)
  • 福井 翔(杏林大学 医学部)
  • 西崎 祐史(順天堂大学 医学部)
  • 長崎 一哉(筑波大学 水戸地域医療教育センター)
  • 西口 翔(横浜市立大学 公衆衛生学教室)
  • 片山 皓太(聖マリアンナ医科大学 総合診療内科学)
  • 高田 俊彦(福島県立医科大学 白河総合診療アカデミー)
  • 和足 孝之(京都大学 医学部附属病院 総合臨床教育・研修センター)
  • 藤川 裕恭(順天堂大学 医学部総合診療科学講座)
  • 横瀬 允史(獨協医科大学 総合診療医学)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、研修医の基本的臨床能力を客観的に評価する指標として活用されているGM-ITE(General Medicine In-Training Examination)の結果と研修環境に関する調査データをもとに、COVID-19流行や医師の働き方改革など、研修環境が大きく変化する中で、臨床教育の質を担保・向上するための要素を明らかにすることを目的とする。また、令和2年度の臨床研修制度改訂の影響についても評価し、今後の制度改善に資するエビデンスを創出することを目指す。
研究方法
本研究は、GM-ITE受験者を対象とした大規模なアンケート調査および試験結果の統計解析により実施された。調査内容は、研修科の履修状況、症候・疾患の経験、当直回数、労働時間、メンタルヘルス、オンライン学習環境、患者受け持ち数など多岐にわたり、複数の要因とGM-ITEスコアとの関係を検討した。

また、令和2年度の制度改訂の影響を分析するため、2019年度(改訂前)と2024年度(改訂後)の研修医を比較し、年齢や性別、研修病院の種類、診療科ローテーションなどの背景因子を調整した上で、スコアの差異をプロペンシティスコアマッチングにより検証した。
結果と考察
1. UpToDateの利用と臨床能力
医療情報サイトUpToDateの利用頻度が高い病院に所属する研修医は、GM-ITEスコアが有意に高かった。特に医師数で調整したログ数との間に正の相関があり、情報検索の積極性が臨床推論能力の向上に寄与している可能性が示唆された。

2. COVID-19患者のケア経験
COVID-19患者を実際にケアした経験がある研修医は、COVID-19関連の知識問題において高得点を示した一方、GM-ITE総合スコアとの関連は見られなかった。臨床能力の獲得には直接結びつかないが、疾患特異的知識の習得には寄与していた。

3. 地域偏在と研修能力
医師数が少ない地域(低PUD index群)の研修医の方が、むしろGM-ITEスコアが有意に高いことが判明した。これは、地域医療における実践機会の多さや実務的な教育効果が影響している可能性を示唆しており、地域偏在=教育機会の不足とは限らないことが分かった。

4. PCO(患者ケアオーナーシップ)と臨床能力・労働時間
GM-ITEスコアが高い研修医ほど、PCO(担当患者に対する当事者意識や責任感)が低い傾向にあった。これは知識や推論能力が高まる一方で、責任感やプロフェッショナリズムの育成が相対的に弱まる可能性を示唆する。また、週70〜90時間勤務している研修医では、「自己主張」「頼られる存在」のPCO項目で高得点を示し、適度な負荷が職業的アイデンティティに影響を与えていることがうかがえた。

5. 働き方改革と臨床研修
医師の勤務時間制限に伴い、週60時間超勤務の研修医は57%から49%に減少したが、週50時間未満が増加し、特に大学病院では患者受け持ちや救急当直数の減少が目立った。教育の質の低下や経験格差の拡大が懸念され、時間制限と教育内容の両立が課題となっている。

6. 制度改訂の影響
2019年度(改訂前)と2024年度(改訂後)の比較では、GM-ITE総合スコアには有意差がなかったが、身体診察のスコアのみ2024年度群で有意に低かった。COVID-19による実技指導機会の制限が影響した可能性がある。他のカテゴリ(症候学、臨床推論、各診療科のスコア)では差は見られなかった。
結論
本研究は、研修医の基本的臨床能力に影響する複数の要因について包括的に分析し、以下の重要な示唆を得た。①医療情報ツールの活用は教育効果を高める可能性がある。②実臨床での経験や地域性、労働時間は知識習得や当事者意識に多様な影響を与える。③臨床研修制度改訂後も教育の質は一定水準を保っているが、実技面では改善余地がある可能性がある。④働き方改革による勤務時間短縮と教育機会の確保の両立には、政策的な対応が必要である。
 これらの結果は、研修医の働き方改革や至適な教育環境の在り方を検討する上で、貴重な資料となり、GM-ITEやアンケートデータの解析結果から発信される情報は、研修医教育に関する医療政策に資する資料となることが期待される。
 また、令和2年度の「臨床研修指導ガイドライン」改定での変更点が、研修医の成績や研修環境にどのように影響するか、今後、さらに対象者を拡大し、データ収集を強化することで、次回の臨床研修制度の見直しに必要な観点の整理に資する貴重な資料となることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
202421067Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,250,000円
(2)補助金確定額
3,250,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,244,020円
人件費・謝金 300,000円
旅費 0円
その他 955,980円
間接経費 750,000円
合計 3,250,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2025-06-16
更新日
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