HIVの宿主因子依存性を逆利用したエイズ発症機構の解明研究

文献情報

文献番号
201009030A
報告書区分
総括
研究課題名
HIVの宿主因子依存性を逆利用したエイズ発症機構の解明研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-政策創薬・一般-017
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
日吉 真照(熊本大学 エイズ学研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 エイズ発症機構の理解、発症防止薬剤の開発そして長期療養の課題の克服、全ての点でHIV Nefの徹底的な解析は不可欠である。しかし、「何故必須、どの機能が重要か、どんな宿主因子が必要か」など根本的な点は未解明である。Nefと最も強く結合する宿主因子は酵素Hckである。興味深いことに、酵素領域を欠損するHck変異体は、ウィルス粒子感染力の増強と主要組織適合抗原MHC Iの発現低下という2つの重要なNefの機能を阻害する。以上の知見を逆手に取れば2つの点に応用できる。まずHck変異体をもとにして、Nefの機能を阻害するぺプチドを同定できる。さらに、Hck変異体をプローブにNefの機能を担う宿主因子を同定できる。本研究では、上記2点について研究を行なう。
研究方法
 Nef機能を抑制するHck配列の同定を試みた。具体的には、Hck変異体を発現した細胞を用いてHIVウイルスを作製し、TZM-blに感染させてウィルス粒子の感染性をb-galを指標に評価した。同時に、NefとHck変異体を細胞に発現させ、FACSにて細胞表面のMHC I発現レベルを測定した。また、近年申請者らが独自に同定したNefに結合する低分子化合物2Cにおいても同様に解析した。
結果と考察
 Hck変異体の内で、54アミノ酸配列がNef機能の抑制に重要であることを明らかにした。また、化合物2Cはウィルス粒子感染力増強とMHC I発現低下を抑制することを明らかにした。
 今年度、Nef機能を阻害する54アミノ酸から成るHck由来ペプチドを同定した。今後、このペプチドをベーズして分子の更なる改良を行なうことが容易となった。一方、化合物2Cも、Hck由来ペプチドと同様に、Nefの機能を阻害することを見出した。このことは、化合物2CとHck由来ペプチドは、Nef機能を阻害する薬剤候補になることを示唆している。また、これらはNef宿主因子(群)の同定を行なうための有用なツールとなると考えられる。
結論
 Nef機能を抑制するHck由来ペプチドを同定できた、今後、さらなる最小化と最適化を行なう予定である。また、我々独自の化合物2Cも同様に、Nefと結合してその機能を阻害することを見出した。このように、本研究を達成する上で必要かつ独自の2種類のツールを得ることができた。今後、これらを用いてNef機能に必要とされる宿主因子(群)の同定を行なう予定である。

公開日・更新日

公開日
2011-07-14
更新日
-

収支報告書

文献番号
201009030Z