サル免疫不全ウイルス中和抗体の感染個体レベルにおける防御機序の解析

文献情報

文献番号
201009029A
報告書区分
総括
研究課題名
サル免疫不全ウイルス中和抗体の感染個体レベルにおける防御機序の解析
課題番号
H22-政策創薬・一般-016
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
山本 浩之(東京大学 医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズウイルス感染症の最大の問題は、自然感染経過においてT細胞応答不全と中和抗体反応の欠失を伴い慢性持続感染化する事であるが、これに対し研究代表者は近年、SIV(サル免疫不全ウイルス)感染サルエイズモデルにおいて、ピーク感染期の中和抗体受動免疫が特異的T細胞応答亢進を伴った顕著な持続感染阻止効果を呈する事を証明した。本研究では、作用機序として目される「SIV中和抗体による樹状細胞(DC)へのFc依存性中和抗体-ウイルス粒子複合体取込み促進による抗原提示亢進を介し感染後新規にT細胞を誘導する」機構に関わるDC受容体を同定し、SIV感染-中和抗体受動免疫サルエイズモデルにてその阻害実験を行い検証することを目的とする。
研究方法
試験管内の抗原提示アッセイにて中和抗体結合SIVのDC取り込み亢進を担う受容体を検索し、誘導される抗原特異的T細胞応答を解析した。SIV複製制御サル由来の単球系細胞より試験管内誘導したDCに中和抗体と結合したSIVをパルスし、自家T細胞と共培養のち細胞内染色法を用い特異的サイトカイン産生をフローサイトメーターで測定した。同時に各種の受容体阻害抗体を添加し、T細胞活性化の可否に関わる受容体を検索した。
結果と考察
培養時にFcγRI(CD64)特異結合抗体を一定濃度加えた検体にて、抗原特異的CD4陽性T細胞のIFN-γ産生能が遮断された。なおFcγRIII(CD16)特異結合抗体を加えた検体において同程度の遮断は認めず、中和抗体を介したSIV抗原提示亢進を司るのは炎症促進性Fc受容体であることが強く示唆された。各種サイトカイン産生パターンを精査した結果、抗原特異的CD8陽性T細胞におけるCCL4産生の選択的亢進を認めた。同じ検体をSIV抗原発現Bリンパ芽球と共培養した際はIFN-γの選択的な産生亢進を認めたことから、前者はT細胞の消耗状態に依存せず、共刺激シグナルのパターンの相違によりCCL4産生に応答が偏移する可能性が示唆された。CCL4自体にはSIV細胞侵入阻害効果もあり、抗原提示近傍でその濃度亢進が生ずることが、感染標的たりうる抗原特異的CD4陽性T細胞の感作を保護する可能性が示唆された。
結論
本研究結果は、次年度以降のSIV感染初期の中和抗体受動免疫時におけるDC受容体阻害抗体の共接種実験を施行に結び付くものであり、中和抗体の個体レベルの作用機序を明らかにすることで、中和抗体誘導型予防エイズワクチン開発への論理的基盤を見出していくことが期待される。

公開日・更新日

公開日
2011-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201009029Z