キャンディン系抗真菌化合物の生合成経路を利用した新規抗真菌化合物の創出のための基盤的研究

文献情報

文献番号
201009027A
報告書区分
総括
研究課題名
キャンディン系抗真菌化合物の生合成経路を利用した新規抗真菌化合物の創出のための基盤的研究
課題番号
H22-政策創薬・一般-014
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
星野 泰隆(国立感染症研究所 生物活性物質部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、易感染者が年々増加傾向にあり、この現状から真菌症が問題となっている。その中でも深在性真菌症に関しては、特に注意しなければならない。現在、深在性真菌症の治療に関しては、アゾール剤、アンホテリシンBリポソーム製剤、キャンディン系抗真菌薬等が主に利用されているが、問題点としてアスペルギルス症の増加、アゾール剤への感受性の低下や耐性化、ブレークスルー真菌症等があげられる。これらに対する既存の薬剤の成績は一定の効果はあるが、十分に満足できるものではない。このような状況から、新たな抗真菌薬の臨床導入が待たれている。そこで我々は、今まで未解明であるキャンディン系化合物の生合成機構を解明し、生合成経路の改変による新たなキャンディン系抗真菌化合物の創製を目指すことを目的としている。
研究方法
キャンディン系抗真菌化合物アクレアシンを生産するアスペルギルス アクレアタスから、アクレアシンの生合成に関与する遺伝子見出すために、ゲノムスキャニングの手法を用いて解析を行った。初めに次世代シークエンサーを用いてゲノム解析を行った。さらに得られた配列情報から、バイオインフォマティクス的手法によってアクレアシンの生合成に関与する遺伝子の予測を行った。予測した遺伝子の解析は、破壊株を用いてアクレアシンの生産性をHPLCによって測定した。
結果と考察
次世代シークエンサーの解析およびバイオインフォマティクス的手法によって、アクレアシンの生合成に関与する遺伝子を予測することができた。また、予測した遺伝子の破壊株では、アクレアシンの生産性が見られなくなったことから、今回予測した遺伝子はアクレアシンの生合成に関与していることが判明した。また、耐性メカニズムに関しては、1,3-β-glucan synthase1の変異による耐性ではないと判明し、異なった耐性メカニズムがある可能性が示された。今後ゲノム情報をもとにしたさらなる解析を行う予定である。
結論
キャンディン系抗真菌化合物の生合成に関する情報は、A. A. Adefarati らの報告(J. Am. Chem. Soc., 113, 3542-45, 1991)以外にはなかったが、新しい解析手法であるゲノムスキャニングを利用することにより、アクレアシンの生合成遺伝子を迅速に特定することができた。また、薬剤耐性に関しても新たな耐性メカニズムの存在する可能性が示された。今後、本研究の成果により、新しいキャンディン系抗真菌化合物の今後さらなる開発に貢献できるといえる。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-01-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201009027Z