文献情報
文献番号
202406023A
報告書区分
総括
研究課題名
盲ろう児者に対する日常生活用具の支給及び活用実態の調査
研究課題名(英字)
-
課題番号
24CA2023
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
奈良 里紗(国立大学法人大阪教育大学 総合教育系)
研究分担者(所属機関)
- 池田 彩乃(国立大学法人山形大学 地域教育文化学部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
4,555,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、視覚障害と聴覚障害の両方を併せ有する盲ろう児者が使用する日常生活用具に関して、(1)当事者自身がどのような用具を活用し、どのようなニーズや課題を抱えているか(研究1)、(2)全国の市区町村がどのような支給制度を構築・運用しているか(研究2)、(3)イギリスにおける支援機器提供の制度と比較したときの日本の制度の特性と課題(研究3)の3点を明らかにすることを目的とする。
研究方法
研究1では、2024年9月から2025年1月にかけて盲ろう当事者を対象に質問紙調査を実施し、112名から回答を得た。質問紙は、盲ろう者がアクセスしやすいように、テキストデータ版、拡大文字版、点字版の3つの形式を用意し、これらを盲ろう者関係団体などを通じて配布した。質問紙には、障害の状態などの個人属性を尋ねる内容と、活用している日常生活用具に関する項目、制度利用にあたっての課題に関する項目等について尋ねた。
研究2では、2024年11月から12月にかけて全国1741市区町村に対してExcel形式の調査票を送付し、378市区町村から回答が得られた。質問項目としては、支給種目、耐用年数、基準額、年齢制限、等級要件、修理や複数支給の可否などについて尋ねた。
研究3では、2024年11月にイギリスのロンドン、バーミンガム、スコットランドを訪問し、教育機関・支援機関・研究者に対する聞き取りと現地視察を通じて、支援機器の提供方法、支給基準、専門職の役割、支援体制などを調査した。
研究2では、2024年11月から12月にかけて全国1741市区町村に対してExcel形式の調査票を送付し、378市区町村から回答が得られた。質問項目としては、支給種目、耐用年数、基準額、年齢制限、等級要件、修理や複数支給の可否などについて尋ねた。
研究3では、2024年11月にイギリスのロンドン、バーミンガム、スコットランドを訪問し、教育機関・支援機関・研究者に対する聞き取りと現地視察を通じて、支援機器の提供方法、支給基準、専門職の役割、支援体制などを調査した。
結果と考察
【結果】
研究1では、日常生活用具として盲人用時計、視覚障害者用拡大読書器、点字ディスプレイ、盲人用ポータブルレコーダーなどの日常生活用具を複数併用している当事者が多かった。一方で、複数支給の難しさや修理不可といった制度的な障壁が生活の質に直接影響している実態も示された。研究2では、日常生活用具として点字ディスプレイを支給している市区町村は376件あったが、そのうち複数台支給を認めているのは19件(5.05%)、修理対応をしているのは10件(2.66%)にとどまり、当事者のニーズに制度が十分応じていないことが明らかとなった。さらに、支給対象年齢や等級要件、耐用年数の設定などに自治体間で大きなばらつきが存在し、地域格差が顕著であることが示された。さらに、盲ろう者に対する日常生活用具の支給機会が少ないこともかさなり、職員の専門知識や制度運用に関する理解、制度の見直しの実施の難しさなども指摘された。研究3では、イギリスにおいて、MSI(Multiple Sensory Impairment)教員が専門的アセスメントを行い、地方自治体と連携しながら点字ディスプレイなどの支援機器を柔軟に提供している実態が確認された。日本のように日常生活用具の種目リストに基づかない制度設計や、進行性障害への予防的支援など、日本では見られない柔軟な対応が行われていた。
【考察】
当事者調査と市区町村調査の結果を比較することで、日常生活用具の必要性と支給制度の間に存在する大きなギャップが浮き彫りとなった。特に、点字ディスプレイのように高額かつ継続的な使用が求められる用具において、複数支給や修理の必要性を訴える当事者の声と、それに対応していない支給制度との不整合が明確である。
イギリス視察を通じて確認された専門職主導の支援体制や、種目にとらわれないアセスメントに基づく機器提供の仕組みは、制度の公平性と柔軟性を高める上で示唆に富んでおり、日本においても支援のあり方を再検討する必要性がある。
研究1では、日常生活用具として盲人用時計、視覚障害者用拡大読書器、点字ディスプレイ、盲人用ポータブルレコーダーなどの日常生活用具を複数併用している当事者が多かった。一方で、複数支給の難しさや修理不可といった制度的な障壁が生活の質に直接影響している実態も示された。研究2では、日常生活用具として点字ディスプレイを支給している市区町村は376件あったが、そのうち複数台支給を認めているのは19件(5.05%)、修理対応をしているのは10件(2.66%)にとどまり、当事者のニーズに制度が十分応じていないことが明らかとなった。さらに、支給対象年齢や等級要件、耐用年数の設定などに自治体間で大きなばらつきが存在し、地域格差が顕著であることが示された。さらに、盲ろう者に対する日常生活用具の支給機会が少ないこともかさなり、職員の専門知識や制度運用に関する理解、制度の見直しの実施の難しさなども指摘された。研究3では、イギリスにおいて、MSI(Multiple Sensory Impairment)教員が専門的アセスメントを行い、地方自治体と連携しながら点字ディスプレイなどの支援機器を柔軟に提供している実態が確認された。日本のように日常生活用具の種目リストに基づかない制度設計や、進行性障害への予防的支援など、日本では見られない柔軟な対応が行われていた。
【考察】
当事者調査と市区町村調査の結果を比較することで、日常生活用具の必要性と支給制度の間に存在する大きなギャップが浮き彫りとなった。特に、点字ディスプレイのように高額かつ継続的な使用が求められる用具において、複数支給や修理の必要性を訴える当事者の声と、それに対応していない支給制度との不整合が明確である。
イギリス視察を通じて確認された専門職主導の支援体制や、種目にとらわれないアセスメントに基づく機器提供の仕組みは、制度の公平性と柔軟性を高める上で示唆に富んでおり、日本においても支援のあり方を再検討する必要性がある。
結論
盲ろう児者にとって、日常生活用具は生活機能の維持・向上だけでなく、教育や就労の継続にも深く関わる重要な支援資源である。それにもかかわらず、日本の現行制度は地域による格差が大きく、当事者の多様なニーズに制度的に応えきれていない実態が明らかになった。イギリスの事例との比較から、柔軟な制度運用と専門的アセスメントの導入の重要性が確認され、制度設計における改善の方向性が示された。
公開日・更新日
公開日
2025-06-23
更新日
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