文献情報
文献番号
202406021A
報告書区分
総括
研究課題名
無縁墳墓の管理・改葬をめぐる現状の把握と課題解決のための調査研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24CA2021
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
横田 睦(公益社団法人 全日本墓園協会 理事会)
研究分担者(所属機関)
- 浦川 道太郎(弁護士法人早稲田大学リーガルクリニック)
- 小松 初男(虎の門法律事務所)
- 國分 亮子(公益財団法人 東京都公園協会)
- 山口 貴正(公益財団法人 エターナリカ)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
2,503,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
近年、少子化・核家族化の進行や家意識の希薄化等に伴い、死亡者の縁故者がない墳墓(以下「無縁墳墓」という。)の増加とそれによる様々な問題が指摘されている。
これまで、無縁墳墓の実態は、必ずしも十分に把握されてこなかったものであるが、先般、総務省行政評価局が「墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として-結果報告書」(以下「報告書」という。)として公表された。報告書では、無縁墳墓等が発生している公営墓地の割合は既に58.2%にも及んでいる。
本研究は、総務省の調査では対象とされていなかった民営墓地も対象とするとともに、総務省報告書により浮き彫りにされた課題等を踏まえた調査を行うことで、公営・民営を問わない実態把握を行い、無縁墳墓の発生抑制及び解消のそれぞれの観点から、自治体における取組の促進に資する事例や考え方等を整理するとともに、その対応策を取りまとめることを目的とする。
これまで、無縁墳墓の実態は、必ずしも十分に把握されてこなかったものであるが、先般、総務省行政評価局が「墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として-結果報告書」(以下「報告書」という。)として公表された。報告書では、無縁墳墓等が発生している公営墓地の割合は既に58.2%にも及んでいる。
本研究は、総務省の調査では対象とされていなかった民営墓地も対象とするとともに、総務省報告書により浮き彫りにされた課題等を踏まえた調査を行うことで、公営・民営を問わない実態把握を行い、無縁墳墓の発生抑制及び解消のそれぞれの観点から、自治体における取組の促進に資する事例や考え方等を整理するとともに、その対応策を取りまとめることを目的とする。
研究方法
1)本研究では、墓地埋葬制度に関する法律や実務に精通した専門家である研究代表者のほか、民法等に関する法制度・判例研究・実務の専門家2名に、公営・民営それぞれの墓地について経営に携わっている実務家1名ずつを加えた計4名で、研究会を研究開始時に発足、検討を進めた。
2)本研究では、上記研究会の下で、以下のとおり公営墓地・民営墓地の各々について実態調査を実施した上で、事例や考え方等の整理、対応案の検討を行った 。
⑴公営墓地に対するアンケート調査
全国1,788の市区町村を対象に、書面によるアンケートを実施した。
⑵民営墓地に対するアンケート調査
総務省の調査においては公営墓地のみを対象としていたが、無縁墳墓の問題は民営墓地にも共通する課題であることから、1ha以上の大規模民営墓地(本研究時点では695か所)についても調査対象とし、書面によるアンケートを実施した。
2)本研究では、上記研究会の下で、以下のとおり公営墓地・民営墓地の各々について実態調査を実施した上で、事例や考え方等の整理、対応案の検討を行った 。
⑴公営墓地に対するアンケート調査
全国1,788の市区町村を対象に、書面によるアンケートを実施した。
⑵民営墓地に対するアンケート調査
総務省の調査においては公営墓地のみを対象としていたが、無縁墳墓の問題は民営墓地にも共通する課題であることから、1ha以上の大規模民営墓地(本研究時点では695か所)についても調査対象とし、書面によるアンケートを実施した。
結果と考察
1)いつ、無縁と認識されるか
調査の結果、地方公共団体の場合、「承継の手続きがなされない」場合は、4.4年間、「滞納管理料の督促に応じない」場合は、5.0年間、「墓参の形跡が認められない」場合は、6.9年間を経た上で無縁の整理に着手されており、放置できない問題である。
2)いつ、墓埋法施行規則第3条に拠る手続きに着手されるか
墓埋法施行規則第3条の規定において、官報への公告に加えて、立札による「公告」が求められている。立札については「無縁墳墓について整理を行っている(行ったことがある)場合の約1割が「(反応が)あった」と回答している。このことから、立札の大きさ等について充分な配慮が求められることが分かる。
3)無縁改葬後の墓所区画の整理
① 使用関係の解消
「公営墓地」の場合には、墓地使用権は行政財産の使用許可によるものである。その許可の取消しは行政の不利益処分にあたることから、聴聞(委員)会の開催などを経て、その許可を取り消す手続を整備している自治体もある。「民営墓地」の場合、墓地使用契約解除乃至終了の意思表示は公示送達によることになるが(民法98条)これが行われたという事例は、今般の調査、報告書及びその他の関係資料においても見当たらない。また墓地使用契約の解除・終了により消滅する。
② 墓所区画内「構築物」の整理
墓所区画内の墳墓施設である工作物等を如何に扱うかが問題になる。実態調査では、祭祀承継者であった者による所有権放棄の問題になる。実態調査では、祭祀承継者であった者が所有権を放棄した動産であり、撤去可能と考え、任意に処分しており、そのような処理に他者から異議を唱えられたことはなく、総務省報告書でも「(実地調査の結果)無縁改葬の実施後、墓石の所有権をめぐるトラブルが発生した例や墓石の返還を求められた例はみられなかった」という記載がある。
③ 無縁墳墓内の遺骨の取扱い
無縁改葬の対象となった遺骨が如何に適切に取扱われるか否かにより、無縁改葬後の問題化の帰趨が決まると考えられる。当該墓地に埋蔵されている遺骨は、たとえ祭祀を行う者がいなくても、死者を弔う意味で丁重に扱わねばならないものであり、また、丁重に扱うことが国民の宗教感情に合致することでもある。
調査の結果、地方公共団体の場合、「承継の手続きがなされない」場合は、4.4年間、「滞納管理料の督促に応じない」場合は、5.0年間、「墓参の形跡が認められない」場合は、6.9年間を経た上で無縁の整理に着手されており、放置できない問題である。
2)いつ、墓埋法施行規則第3条に拠る手続きに着手されるか
墓埋法施行規則第3条の規定において、官報への公告に加えて、立札による「公告」が求められている。立札については「無縁墳墓について整理を行っている(行ったことがある)場合の約1割が「(反応が)あった」と回答している。このことから、立札の大きさ等について充分な配慮が求められることが分かる。
3)無縁改葬後の墓所区画の整理
① 使用関係の解消
「公営墓地」の場合には、墓地使用権は行政財産の使用許可によるものである。その許可の取消しは行政の不利益処分にあたることから、聴聞(委員)会の開催などを経て、その許可を取り消す手続を整備している自治体もある。「民営墓地」の場合、墓地使用契約解除乃至終了の意思表示は公示送達によることになるが(民法98条)これが行われたという事例は、今般の調査、報告書及びその他の関係資料においても見当たらない。また墓地使用契約の解除・終了により消滅する。
② 墓所区画内「構築物」の整理
墓所区画内の墳墓施設である工作物等を如何に扱うかが問題になる。実態調査では、祭祀承継者であった者による所有権放棄の問題になる。実態調査では、祭祀承継者であった者が所有権を放棄した動産であり、撤去可能と考え、任意に処分しており、そのような処理に他者から異議を唱えられたことはなく、総務省報告書でも「(実地調査の結果)無縁改葬の実施後、墓石の所有権をめぐるトラブルが発生した例や墓石の返還を求められた例はみられなかった」という記載がある。
③ 無縁墳墓内の遺骨の取扱い
無縁改葬の対象となった遺骨が如何に適切に取扱われるか否かにより、無縁改葬後の問題化の帰趨が決まると考えられる。当該墓地に埋蔵されている遺骨は、たとえ祭祀を行う者がいなくても、死者を弔う意味で丁重に扱わねばならないものであり、また、丁重に扱うことが国民の宗教感情に合致することでもある。
結論
総務省報告書では、単に、公営墓地のみならず、共同墓地なども視野においた無縁整理への言及がなされていた。そうした墓地への手がかりとして、今回、民営墓地についての調査を行った。加えて、公営墓地においても、共同墓地的な性格の強い「公営」墓地の存在が少なからず存在していることが明らかとなった。これはこれまで注目されていない現状を明らかにしたものである。
公開日・更新日
公開日
2025-07-30
更新日
-