無線操作が可能な天井クレーンの日本国内における設置状況の調査と安全性の分析

文献情報

文献番号
202406017A
報告書区分
総括
研究課題名
無線操作が可能な天井クレーンの日本国内における設置状況の調査と安全性の分析
研究課題名(英字)
-
課題番号
24CA2017
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
山際 謙太(独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所 機械システム安全研究グループ)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
1,944,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、無線操作可能な天井クレーン(以下「床上無線運転式」)の日本国内における設置状況と、それに伴う作業リスクおよび安全性の特性を明らかにすることである。近年、製造業等における労働人口の減少を背景に、より柔軟で効率的な作業手法として無線リモコンの導入が進んでいるが、現行の法制度では5t以上のクレーンを無線で操作するには「クレーン運転士免許」が必要であり、限定免許等での運用が認められていない。一方で、実態としては床上で荷とともに移動しながらの操作が主であり、ペンダントスイッチによる運転と類似する。本研究では、こうした法制度の現状と運用実態との乖離を明らかにし、制度改正の可能性も含めて検討するため、無線式クレーンの使用状況と安全性、災害発生傾向、及び事業場の認識を調査・分析する。
研究方法
調査は三つのフェーズで構成された。第一に、つり上げ荷重5t以上の天井クレーンを保有する2,043事業場を対象にアンケートを送付し、1,257件の回答を得た。第二に、代表的な事業場への訪問ヒアリングを実施し、導入理由、安全性、免許制度への所感などを収集した。第三に、2006年から2021年に発生した労働災害データベースより「天井」「リモコン」「無線」を含む災害事例を抽出し、床上無線運転式特有のリスク傾向について分析した。これらの定量・定性調査の結果をもとに、無線操作による作業リスクと安全性についての考察を行った。
結果と考察
アンケート調査では、全体の約30%が無線操作可能なクレーンを保有しており、その大半は床上運転式または床上操作式で、スイッチ操作型が主流であった。作業者の大多数は吊り荷の近くで作業をしており、遠隔操作ではない。また、多くの事業場が一人作業または玉掛者との2名体制であり、リスクとしては「接触」「落下」「荷崩れ」が挙げられたが、ペンダント方式と比べて特異なリスクは確認されなかった。

ヒアリング結果では、無線導入理由として長尺鋼材の扱い時に有線ケーブルが障害となることが多く、安全性向上の観点から無線が有効とされていた。一方で、未導入事業場ではコストが障壁となっていた。労働災害については、玉掛け作業時のミスが主因であり、クレーン操作自体による事故は少なかった。無線機の安全設計は高水準で、誤動作防止機構が多数実装されていた。また、複数リモコン使用現場ではキー認証による排他制御も見られた。

災害データの分析でも、無線式クレーン使用事業場とペンダント式事業場で有意な災害件数の差は見られなかった。全体として、床上無線運転式による作業が特段高リスクであるとの証拠は確認されなかった。
結論
つり上げ荷重5t以上の天井クレーンのうち30%程度が無線リモコンを使用して操作できる床上無線運転式のものであることが明らかとなった。また、床上運転式限定免許の取得者は4.9%にとどまっており、非常に限定した使用状況であることが分かった。
作業等の実態としては、床上無線運転式で使用されている無線リモコンは、スイッチ操作のものが約90%を占めており、これは床上運転式や床上操作式の天井クレーンで一般的に用いられているペンダントスイッチの操作と類似した操作方法で使用することができる状況であった。
また、天井クレーン、無線およびリモコンを含む労働災害の事例を、労働者死傷病報告を元に調査したところ、無線による操作方法が原因となるような災害について確認できなかった。そして、無線リモコンの安全については、日本クレーン協会規格JCAS 1002-2004「無線操作式クレーンの安全に関する指針」に記載されており、基本的にはこれに準拠したものであればリスクを相当軽減することができると考えられる。
したがって、国内で一定数使用されている床上無線操作式天井クレーンは、床上操作式又は床上運転式の天井クレーンと、機能面や事業場内の運用面において近い天井クレーンであると言え、これらの天井クレーンに比べて特有のリスクも限られていることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2026-01-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-08-08
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202406017C

収支報告書

文献番号
202406017Z