文献情報
文献番号
201009018A
報告書区分
総括
研究課題名
新規標的に対する小分子化合物を基盤とした抗HIV化学療法剤の開発
課題番号
H22-政策創薬・一般-005
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 雅雄(京都大学 ウイルス研究所)
研究分担者(所属機関)
- 藤井 信孝(京都大学大学院薬学研究科)
- 大石 真也(京都大学大学院薬学研究科)
- 村上 努(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
- 嶋田 泰宏(富士フイルム株式会社 医薬品研究所)
- 前田 英樹(富士フイルム株式会社 医薬品研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
24,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HIV感染症に対する長期的な抗HIV薬の服用は、その著しい効果の一方、耐性HIV出現の要因ともなっている。この問題に対処するためには、既存薬剤に対する耐性HIVを効果的に制御できる新規薬剤を開発する必要がある。本研究では、我々がこれまでに化合物スクリーニングより見出した抗HIV活性を有する新規骨格小分子化合物を基に、富士フイルムと京都大学の連携により効率的な構造最適化研究・作用機序解析を実施し、強力かつ安全な新規抗HIV剤の開発研究を行うことを目的とする。また、CXCR4選択的阻害剤の開発については、耐性プロファイルの解析や高活性誘導体の合成を通して、CXCR4阻害剤の実用化へ向けた研究を行う。
研究方法
抗HIV活性小分子化合物の構造最適化研究ならびに光アフィニティープローブ作製においては、種々の有機合成法を用いて誘導体を作製した。これらの誘導体は、MAGI法およびMTT法により抗HIV活性を評価した。CXCR4阻害剤の耐性誘導では、HIV-1 NL4-3株を用いて薬剤濃度を増加させながら耐性株を誘導した。得られた耐性株からウイルスDNAを抽出し、塩基配列を解読することで誘導されたアミノ酸変異を同定した。また、同定された変異を導入したエンベロープ組換えHIVを作製し、薬剤感受性への影響を調べた。
結果と考察
抗HIV活性小分子化合物の構造最適化研究では、小分子化合物の構造を3つに分割し、様々な誘導体作製および活性評価を行った結果、抗HIV活性の高活性化に必要な部分構造を同定した。また、光アフィニティープローブによる標的分子同定のために、光感受性官能基とビオチンを付加した誘導体を作製した。CXCR4阻害剤の研究においては、経口吸収性を示すCXCR4阻害剤を用いた約2年間におよぶ試験管内耐性誘導の結果、HIV-1 gp120 V3領域に共通の変異が導入された。これらの変異は、用いた4種類のCXCR4阻害剤に対して感受性低下を引き起こした。
結論
抗HIV活性小分子化合物の研究では、既に同定したリード化合物を基に高活性化誘導体の開発に成功した。また、CXCR4阻害剤の研究では、耐性プロファイルの解析を行い、詳細な作用機序を解明した。本年度得られた新規薬剤開発のための有益な情報を基に、多剤耐性HIVにも効果を示す新規抗HIV剤の開発研究を推進する。
公開日・更新日
公開日
2011-09-21
更新日
-