国内未承認薬の使用も含めた熱帯病・寄生虫症の最適な診療体制の確立

文献情報

文献番号
201009016A
報告書区分
総括
研究課題名
国内未承認薬の使用も含めた熱帯病・寄生虫症の最適な診療体制の確立
課題番号
H22-政策創薬・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
木村 幹男(結核予防会 新山手病院 診療技術部)
研究分担者(所属機関)
  • 三浦 聡之(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター 感染症分野)
  • 丸山 治彦(宮崎大学 医学部 感染症学講座 寄生虫病学分野)
  • 春木 宏介(獨協医科大学 越谷病院 臨床検査部)
  • 太田 伸生(東京医科歯科大学 国際環境寄生虫病学分野)
  • 坂本 知昭(国立医薬品食品衛生研究所 薬品部)
  • 大前 比呂思(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
16,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、熱帯病・寄生虫症の治療薬で国内未承認のものを海外から導入し、診断も含めてそれらの疾患の診療が円滑かつ適切に行われる様にするための体制構築を目指している。特に、国内未承認薬の使用については臨床研究と位置づけ、国内で使用した場合の有効性と安全性を厳密に評価し、常により適切な使用を目指す。
研究方法
「臨床研究に関する倫理指針」を遵守して、全国的な国内未承認薬使用の体制を確立した。本年度の薬剤の輸入、使用状況、副作用報告などをまとめ、抗マラリア薬のアトバコン・プログアニル合剤使用症例で平成17年度に報告済み以外のものを解析した。抗リーシュマニア薬ミルテフォシンを対象とし、超高速液体クロマトグラフィー/質量分析法による高感度分析、微量分析の条件設定を行なった。診断に関してはマラリア迅速診断キットの評価を行い、宮崎大学で主に血清学的に寄生虫症と診断された症例の特徴などを解析した。また幼虫移行症の虫種鑑別のため、組換えタンパク質を作成して保存血清との反応をみた。住血吸虫症の治療については、アジアの流行地において治療効果を検討し、新規治療薬の候補物質N-89を取り上げ、感染動物への投与や試験管内培養幼虫への効果を調べた。
結果と考察
本年度も抗マラリア薬の使用が多かったが、抗赤痢アメーバ薬パロモマイシンの使用を限定する旨依頼したためか、その使用は減少して望ましい結果となった。アトバコン・プログアニル合剤は熱帯熱マラリア、三日熱マラリア両者において有効性と安全性に優れていると思われた。ミルテフォシンの薬剤分析にて、類縁化合物の分離も含めて高感度分析が可能となり、微量分析も可能な条件を設定できたので、血中濃度モニターも可能と思われた。マラリア迅速診断キットは熟練された顕微鏡法の結果と一致し、通常の医療機関でのマラリア診断に役立つと思われた。宮崎大学での寄生虫症診断症例の中では回虫類による幼虫移行症がもっとも多く、肺吸虫症が続いた。本研究で得られたブタ回虫由来組換え抗原の一つが虫種鑑別に有用と思われた。住血吸虫症には、プラジカンテル単回投与よりも、総量を多くした分割投与の方が優れていると思われた。N-89は幼虫期での殺虫効果、虫卵数減少効果などを示し、しかも完全合成であることから有望なものと思われた。
結論
全体として、国内未承認薬の使用は効果的かつ安全に行われていると思われた。対象疾患の診断や国内承認薬も含めた治療においても、一定の進歩がみられた。国際化時代における国民の健康を確保するために、今後も研究を進展させる必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-09-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201009016Z