肺癌における抗癌剤抵抗性を誘発する因子の阻害剤探索のためのバイオ計測系の開発

文献情報

文献番号
201009015A
報告書区分
総括
研究課題名
肺癌における抗癌剤抵抗性を誘発する因子の阻害剤探索のためのバイオ計測系の開発
課題番号
H22-政策創薬・一般-002
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
太田 力(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 腫瘍ゲノム解析情報研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 美徳(独立行政法人国立がん研究センター研究所・免疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本では毎年7万人以上が肺癌によって死亡しており、更にその死亡率、罹患率は増加傾向にある。肺癌の約8割を占める非小細胞癌は手術による治療が中心であるが、進行癌、術後再発あるいは転移に対する集学的治療の中でも化学療法に対する期待は高い。しかし、非小細胞肺癌に対する既存の抗癌剤の効果は未だ不十分であり、その原因に関してはよくわかっていなかった。最近、申請者らは転写因子Nrf2の異常活性化によって薬剤解毒酵素や薬剤排出ポンプ蛋白質の遺伝子が過剰発現され、抗癌剤抵抗性を示すことを見出した。従って、肺癌の抗癌剤抵抗性に関与する蛋白質の過剰発現を直接誘導している転写因子を分子標的とした阻害物質が開発出来れば、この阻害剤を補助薬として使用することで効果的な化学療法の実現と肺癌の予後延長および死亡率減少が期待される。そこで、本研究では肺癌の抗癌剤抵抗性に直接関与する転写因子Nrf2を分子標的とした阻害物質探索を製薬会社との共同開発を可能にするバイオ計測系の構築を目的とした。
研究方法
申請者らはNrf2の異常活性化肺癌由来の培養細胞株にNrf2特異的なsiRNAを作用させ、Nrf2の発現量を低下させることで、抗癌剤シスプラチンやイリノテカンに対して感受性が亢進することを見出している。この結果から、Nrf2の異常活性化肺癌細胞株を用いて抗癌剤存在化にNrf2の阻害物質がスクリーニングが可能と予想されるが、効果検定に約7日間が必要となり検出するまでに時間が掛かってしまう点が問題となっている。また、阻害剤探索には阻害物質と抗癌剤とを併用するため、阻害物質と抗癌剤の直接的な阻害による疑陽性が見られてしまうことが予想される。そこで、抗癌剤を使用せず、短期間で阻害効果を検出可能な細胞株の構築を行う。転写因子Nrf2の結合配列をプロモーター領域に挿入した細胞外分泌型ルシフェラーゼ遺伝子を作成し、転写因子Nrf2の異常活性化癌細胞株に導入した。さらに、CMV(サイトメガウイルス由来の)プロモーターを挿入した遺伝子のルシフェラーゼ遺伝子を作成し、転写因子Nrf2の異常活性化癌細胞株に導入した。
結果と考察
転写因子Nrf2の結合配列をプロモーター領域に挿入した細胞外分泌型ルシフェラーゼ遺伝子を発現する転写因子Nrf2異常活性化肺癌細胞株を複数樹立することに成功した。次に、これら細胞にNrf2特異的なsiRNAを作用させ、その阻害効果がどの位の時間で計測できるか調べたところ、約48時間後にはルシフェラーゼ活性が30%に減少することを見出した。
結論
本年度作成した細胞株では、阻害物資を想定したNrf2特異的なsiRNAを作用させた場合、約48時間で阻害効果を見出すことに成功した。今後、これら細胞を用いることで、Nrf2の阻害物質のスクリーニングに応用可能と思われる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201009015Z