レチノイド関連化合物の消化管免疫疾患への治療応用

文献情報

文献番号
201009010A
報告書区分
総括
研究課題名
レチノイド関連化合物の消化管免疫疾患への治療応用
課題番号
H21-政策創薬・一般-007
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
土肥 多惠子(独立行政法人 国立国際医療研究センター 研究所 肝炎免疫研究センター 消化器疾患研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 首藤 紘一(財団法人乙卯研究所)
  • 日比 紀文(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
22,664,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は合成レチノイドの炎症性腸疾患をはじめとする免疫疾患への応用を促進することを目的とする。本年度の目的は、クローン病治療のための投与計画を検証する動物試験を行った。有効な新規合成低分子化合物の開発に向けて、新規誘導体の合成を行うとともに、レチノイド関連化合物ライブラリーから抗炎症作用を持つものをスクリーニングしヒト由来の細胞にも有用な物を見いだすことである。
研究方法
新規レチノイドの合成、合成レチノイドの抗炎症活性、マウスにおけるAm80連続投与の効果、ヒト樹状細胞へのAm80の効果、大腸粘膜固有層細胞に対する効果を検証した。
結果と考察
1. 合成レチノイドの抗炎症活性:マウス腹腔マクロファージに対して、Am80は1、サイトカイン産生を抑制した。新規合成レチノイドのなかからもAm80に匹敵する炎症性サイトカイン抑制作用を持つものが見いだされた。また、別なライブラリーから得られた低分子化合物は、ヒト末梢血由来単核球をLPS刺激した際のTNF-a産生を抑制した。
2. 化合物の探索の結果、前年までに見出した合成レチノイドの誘導体について代表的自己免疫疾患であるマウスモデルにおいて十分な治療効果を示した。
3. マウスにおけるAm80連続投与の効果:Am80投与群で腸間膜リンパ節T細胞は抗CD3抗体刺激に対する増殖能が抑制されていた。サイトカイン産生能はTh1応答の強い抑制、Th2の促進作用が見られた。
4. ヒト樹状細胞へのAm80の効果:Am80で分化誘導した樹状細胞(は通常のDCと比較しIL-12の産生が抑制された。 CD4細胞を用いたallo MLRでは、Am80-DCはTh1細胞への誘導能が低下していた。
5. 大腸粘膜固有層細胞に対する効果:クローン病患者手術検体から単離したLPMCをLPSで刺激し、炎症性サイトカインの誘導について検討した結果、クローン病患者手術検体から得られたLPMCは対照群と比較してLPS刺激によるTNFa産生が高いが、刺激時にAm80を添加することによりその産生が抑制されることが明らかとなった。
結論
Am80の作用機序として、Th1反応が病態の主体をなすクローン病において、Am80が新たな治療薬となりうることを示唆する成績が得られた。これらの結果を受けて、23年度の医師主導臨床試験実施のためのプロトコール作成を開始した。新たに合成したレチノイド関連化合物については、スクリーニングを進め、マウスマクロファージに対するLPS刺激後サイトカイン産生抑制作用を20種確認できており、一部はヒト末梢血由来細胞でもその効果が認められている。

公開日・更新日

公開日
2011-09-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2012-01-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201009010Z