人工赤血球の臨床応用を目指した至適投与法の策定とGMP製造技術の確立

文献情報

文献番号
201009009A
報告書区分
総括
研究課題名
人工赤血球の臨床応用を目指した至適投与法の策定とGMP製造技術の確立
課題番号
H21-政策創薬・一般-006
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
堀之内 宏久(慶應義塾大学医学部 外科)
研究分担者(所属機関)
  • 小林 紘一(慶應義塾大学医学部)
  • 酒井 宏水(早稲田大学総合研究機構)
  • 高折 益彦(東宝塚さとう病院)
  • 池田 久實(北海道赤十字血液センター)
  • 小田切 優樹(熊本大学大学院薬学研究部)
  • 高野 久輝(ニプロ(株)総合研究所人工臓器開発センター)
  • 菊地 武夫(ニプロ(株)医薬品研究所)
  • 大鈴 文孝(防衛医科大学校循環器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
28,577,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
われわれは期限切れ献血血液よりヘモグロビンを分離精製濃縮し、脂質二重膜で被覆した人工酸素運搬体であるヘモグロビン小胞体(以下HbVと記す)を開発している。本研究では輸血が必要となる病態におけるHbVの使用を中心に生体反応を解析し至適投与法を策定すること、GMP製剤製造の技術的問題点を解決することを目標としている。
研究方法
①ラット持続出血モデルを用い、膠質輸液との併用の可能性と投与法を検討する。②HbV大量投与の投与間隔とABC現象について解析する。③HbV大量投与時の免疫系の抑制状態発生について解析する。④皮下細動脈の酸素拡散係数に対するHbVの影響を検討する。⑤HbVによる心筋保護効果を心筋内の蛋白の変化を測定、検討する。⑥ブタおけるHbVの適合性を検討する。⑦HbV内外の電解質濃度の変化について検討する。⑧Hbの効率使用のために新しいHbV作成法を検討する。⑨銀ナノ粒子による滅菌法及び滅菌工程について検討する。⑩品質管理法を改良する。(脂質定量、脱酸素工程)
結果と考察
①持続出血モデルに対するHbV低速輸注はショック治療に有効であることが確認された。②出血性ショックをHbVで蘇生後4日後に再びHbVを投与すると、ABC現象が起こった。③HbVの大量投与は液性免疫には影響を与えなかった。HbV投与後の脾細胞では、遺伝子の発現に変化を認めた。④皮下微小循環における細動脈壁の酸素拡散にHbVは影響を与えなかった。⑤HbV投与後の心筋内のSODなどの蛋白の発現に有意差は認められなかった。⑥ブタにHbVを投与すると、血圧、肺動脈圧に有意な変化はなかった。⑦HbVを洗浄すると分散液の電解質濃度は速やかに変化し、3時間以内に平衡に達した。⑧HbV製造法の改良は技術的に可能であった。⑨銀ナノ粒子は滅菌効果が証明された。⑩品質管理のための脂質定量法、脱酸素工程の標準化の指標が明らかとなった。
結論
HbVは膠質輸液との併用により効率的に使用できる。HbVの投与間隔が4日以上となると、ABC減少が認められ、再投与に注意が必要である。HbVの大量投与では液性免疫は障害されない。微小循環での酸素拡散には細動脈レベルでは変化がなく、酸素運搬は生理的に起こる。HbVの心筋保護効果は過酸化物還元系の活性化とは異なる機序が働いている可能性がある。ブタへの生体適合性が高いと考えられた。
GMP製造においては洗浄によるHbV内の電解質組成の変化の評価、脂質評価法の改良、脱酸化工程の条件設定、新製造法の開発により、安定した製剤製造に重要な知見が得られた。無菌化については全工程を無菌化する方法が現実的と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2011-09-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201009009Z