地方衛生研究所におけるゲノム検査等に係る人員体制及び人材育成法を確立するための研究

文献情報

文献番号
202426007A
報告書区分
総括
研究課題名
地方衛生研究所におけるゲノム検査等に係る人員体制及び人材育成法を確立するための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24LA2003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
貞升 健志(東京都健康安全研究センター 微生物部)
研究分担者(所属機関)
  • 岩本 朋忠(神戸市環境保健研究所感染症部)
  • 塚越 博之(群馬県衛生環境研究所 保健科学係)
  • 長島 真美(東京都健康安全研究センター 微生物部)
  • 野本 竜平(神戸市健康科学研究所 第2衛生研究部)
  • 久保田 寛顕(東京都健康安全研究センター 微生物部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 新型コロナウイルス感染症では、次世代シークエンサー(NGS)を用いてゲノム解析を行うことにより、全国の地方衛生研究所(地衛研)等での地域の変異株の発生状況を把握し対策に役立ててきた。しかしながら、新型コロナウイルス以外の病原体に対するゲノム検査の知見(手法、解析法)は十分ではなく、また、今後の活用法の具体例も定まっていない。さらに、数年単位で人事異動が発生する地衛研も多いことから、地域レベルでの検査・解析技術が維持できず、次の感染症危機時に、次世代シークエンサーを用いた検査・解析ができないことが懸念される。そのため、平時から次世代シークエンサーを活用した検査技術の維持や、検査を実施できる人材を継続的に育成するための方策や検査体制を維持するための人員体制について検討し、全国規模で技術・知識の均てん化を推進する必要がある。
研究方法
令和6年度は、以下の研究を行う。
1. 全国の地方衛生研究所のゲノム検査に係る人員体制や技能維持の現状について調査を実施する。
2. 地方衛生研究所の6ブロックの中から各1か所 モデル地衛研を選び、ゲノム解析用PCを配布し、主として細菌分野の無料解析ソフト(プログラム言語)のインストールから解析までを研修する。
3. 原因不明疾患における次世代シークエンサーによるゲノム検査およびデータ解析法を検討し、使用法としてまとめる。
4. 次世代シークエンサーによる検査法を含む基礎的な微生物分野の研修を全国の地方衛生研究所等を対象に実施する。
5. 次世代シークエンサーに関わる各種検査マニュアルを 地方衛生研究所全国協議会と連携し作成する。
6. 次世代シークエンサーを用いた菌株等の比較のための精度保証についての検討を行うとともに、パルスフィールド電気泳動による菌株分析法の代替法としての利用を検討する 。
結果と考察
1. インターネット環境に関するアンケートを実施したところ、84地衛研中29地衛研(34.5%)において、現時点ではコマンドラインによるゲノムデータ解析(プログラム言語での解析)を実施できない、もしくはできない可能性があるという調査結果となった。
2. コマンドラインを用いたゲノムデータ解析を自律的に実施可能な状況にすることを目的として、全国6ブロックでの拠点衛研の選定とパソコンの設置を実施した。今年度、研修会は3ブロックにおいて、各2日間、事前にコマンドライン実施のための環境を構築したパソコンを研修会場に持ち込む形で実施した。
3. 民間会社で開発された、網羅的ゲノム解析ツール(不明疾患におけるNGS解析ソフト:PaHuM)並びにNGS用プライマー除去・解析ソフト(MTAAP)を地衛研での使用法を検討した。網羅的ゲノム解析では、過去に使用可能であった感染研のWebソフト:MePIC、PaHuM及びCZ ID(海外Webサイト)を比較した結果、良好な結果が得られた。また、これらソフトの利用法を含めて、地衛研の職員を対象としたWeb研修会を実施した。
4. 地衛研における検査や研究の基礎を学ぶことで地衛研職員全体の底上げを目的として人材育成研修を行った。結果として、Web研修には47施設、280 名が参加し、集合型研修には、現地参加が50名、WEB参加は71施設(地全協会員 57)、229名が参加した。いずれの研修に対しても満足度が高く、基礎を学ぶ機会の重要性が明らかとなった。
5.  ゲノム解析の1次処理にあたる検査操作に関するマニュアル作成に取り組んだ。地衛研全国6支部をカバーする検査実務者16名からなるゲノム解析ワーキンググループを構成し、各施設での解析体制に関する情報共有、ゲノムDNAの断片化処理条件やライブラリーのサイズセレクションについての実験的検証作業を経て、地衛研の体制に即したマニュアルを作成した。
6. PFGEの代替法という観点から、同一サンプルに対してPFGEとNGSの二法による分析を実施し、直接的な比較検証を行った。
7. ゲノム解析に関する人材育成法についてのガイドライン作成のために、NGSの具体的な利用法をまとめた。
結論
 地衛研を取り巻く状況として,感染症予防計画等を踏まえた健康危機対処計画が策定された。一方で、NGSに関係するインフラ、技術、予算および人材育成面での課題は山積している。特に、網羅的解析等に係るソフトウェア、パルスフィールドゲル電気泳動法としての代替法としての利用、集積したゲノム情報の活用等、地衛研として解決すべき課題は多いと思われる。今後も、専門的な専門研修等を通じた人材育成を継続することで、課題解決への道筋となると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2025-08-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2025-08-29
更新日
-

収支報告書

文献番号
202426007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
8,988,000円
差引額 [(1)-(2)]
12,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,558,605円
人件費・謝金 0円
旅費 417,332円
その他 12,370円
間接経費 0円
合計 8,988,307円

備考

備考
当該研究には、本補助金以外に財源がないため、配分額の範囲内での予算執行となりました。執行率は99.9%と、ほぼ満額使い切っており、これによる研究への影響はありません。
(自己資金:307円)

公開日・更新日

公開日
2025-09-19
更新日
-