災害時の保健・医療・福祉及び防災分野の情報集約及び対応体制における連携推進のための研究

文献情報

文献番号
202426001A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時の保健・医療・福祉及び防災分野の情報集約及び対応体制における連携推進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22LA2003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 原岡 智子(松本看護大学 看護学部)
  • 池田 真幸(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
  • 宮川 祥子(慶應義塾大学 看護医療学部/健康マネジメント研究科)
  • 冨尾 淳(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 相馬 幸恵(新潟県福祉保健部)
  • 菅 磨志保(関西大学 社会安全学部)
  • 市川 学(芝浦工業大学 システム理工学部)
  • 池田 和功(和歌山県 岩出保健所)
  • 奥田 博子(国立保健医療科学院 公衆衛生看護研究領域)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
10,593,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2024年度の重点目標は、情報活用を含めた保健医療福祉調整本部等の標準モデルの構築である。本研究全体は、情報収集システムの活用を含む保健医療福祉調整本部体制について、実世界での経験を評価し、その効果的な運用や課題を抽出し、実社会での活用を推進することが目的である。
研究方法
令和6年能登半島地震を始めとして、災害対応状況等のヒアリング調査、文献調査、自治体へのアンケート調査等の情報収集を行い、支援活動を行ったメンバーを含めて研究班内で検討を行って成果物をまとめた。
結果と考察
検討により以下のテーマ毎に研究成果がまとめられた。(1) 保健医療福祉調整本部等に関する検討:調整本部の体制整備は進んでいるが、自治体間での連携の強化が必要である。保健医療福祉調整本部の訓練を通じて、災害時に迅速な会議開催や構成員の役割分担、共有情報、意思決定項目、必要資機材の確認等の重要性が確認され、また、地域BCPの概念や職員派遣を円滑にする仕組みの整備も不可欠である。(2) 風水害時における保健医療福祉活動実態に関する調査研究(災害の実事例に即した検討):事前の計画や訓練、災害時の体制整備、組織間の情報共有の実態が明らかとなった。また、能登半島地震の調査では、各避難所における巡回・常駐の支援形態や活動期間、具体的なニーズへの対応など、保健医療福祉活動の実態が詳細に把握された。(3) 令和6年能登半島地震における1.5次避難所での保健医療福祉支援に関する調査(災害対応のための情報の要求事項等の検討):ケア記録のデジタル化と共有が不十分であり、被災者支援におけるDXの推進には、サマリー作成に適したデータ構造やAI活用の検討、被災者の生活再建に資する情報の価値と意思決定支援のビジョンの共有が重要である。情報は現場の負担軽減にもつながる設計が求められる。(4) 情報集約及び対応体制等に関する海外の情報収集:ISO規格や各国の危機管理モデルは、戦略的意思決定や情報共有の体制整備、状況認識の統一(COP)の重要性を示しており、日本の保健医療福祉調整本部における連携強化にも活用可能である。共通理解を促す用語集の作成を行った。(5) 避難所・在宅者等の情報把握・支援の検討:自助・共助・公助による対応の流れを活動チームが共有し、「OODAループ」等を軸に活動することで、重層的かつ効果的な支援が可能となる。また、統括保健師の配置が大きな役割を果たすと考えられた。(6) 災害ケースマネジメント等の検討:災害初動期には自治体による緊急・応急対応が中心となるが、そこで把握された情報が生活再建期に引き継がれる体制が必要である。共助としての地域情報の把握や新たなコミュニティ形成の支援が重要であり、集落単位でのニーズ把握と自治機能の再評価が必要である。(7) 災害時の保健・医療・福祉及び防災分野の情報集約及び対応体制における連携推進のための研究(情報収集のあり方研究):令和6年能登半島地震では災害時保健医療福祉活動支援システム(D24H)が本格活用され、避難所情報のデジタル収集が進んだ一方、情報の整理・分析・優先順位付けに課題があることが判明し、今後は支援方針に結びつける情報活用プロセスの標準化と実践的訓練の継続が必要とされた。(8) 情報能力向上方策等の検討:災害対応では、D24Hなどの情報ツールの活用、情報収集・分析力の向上、支援チームとの連携体制、初動対応マニュアルの整備、ICTを用いた情報共有などが効果的であるとされ、DHEATや関係者の役割理解と訓練、顔の見える関係づくり、現場連携の工夫が支援の円滑化に寄与することが明らかになった。
結論
本研究により、保健医療福祉調整本部の標準モデルとして「保健医療福祉調整本部等におけるマネジメントの進め方2025」を取りまとめた。ポイントとして、主として平時から備えておくべき構造(ストラクチャー)として、規程類(目的の明確化、組織図:本部長、本部長補佐・統括DHEAT、統括DHEAT補佐、構成員(関係各課)、事務局等)、基盤整備(本部室等、資機材・情報通信システム、連絡先リスト・地図・平時の状況の把握、研修・訓練等)、安全衛生(安全衛生担当者等)が重要である。主として危機時に実施する過程(プロセス)として、本部運営(速やかな本部設置、本部会議等、目的・戦略→目標・戦術、OODAループ・優先課題リスト、記録、リスクコミュニケーション、本部解散、事後レビュー等)、本部機能(派遣調整、情報連携、情報の整理及び分析)が重要である。また、結果(アウトプット)として、連携、被災者に必要な支援の提供等、成果(アウトカム)として、被災者の生命・健康・生活・安心の確保等に活動がつながっていることを随時確認することが重要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2026-01-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
その他
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2026-01-16
更新日
-

文献情報

文献番号
202426001B
報告書区分
総合
研究課題名
災害時の保健・医療・福祉及び防災分野の情報集約及び対応体制における連携推進のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22LA2003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部 健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 原岡 智子(松本看護大学 看護学部)
  • 池田 真幸(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
  • 李 泰榮(イ テヨン)(国立研究開発法人防災科学技術研究所 災害過程研究部門)
  • 宮川 祥子(慶應義塾大学 看護医療学部/健康マネジメント研究科)
  • 冨尾 淳(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
  • 相馬 幸恵(新潟県福祉保健部)
  • 菅 磨志保(関西大学 社会安全学部)
  • 市川 学(芝浦工業大学 システム理工学部)
  • 池田 和功(和歌山県 岩出保健所)
  • 奥田 博子(国立保健医療科学院 公衆衛生看護研究領域)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
情報収集システムの活用を含む保健医療福祉調整本部体制について、実世界での経験を評価し、その効果的な運用や課題を抽出し、実社会での活用を推進することが目的である。2022年度の重点目標は、実社会における災害情報フローの把握と有るべき姿の検討、2023年度は、保健医療福祉調整本部等モデル案の作成、2024年度は、保健医療福祉調整本部等の標準モデルの構築とした。
研究方法
災害対応状況等のヒアリング調査、文献調査、保健医療福祉調整本部および実災害についての自治体へのアンケート調査等の情報収集を行い、研究班内で検討を行って成果物をまとめた。
結果と考察
(1) 保健医療福祉調整本部等に関する検討:災害時の迅速な対応には、保健医療福祉調整本部の早期設置と会議開催、役割や情報の明確化、意思決定体制の整備が不可欠であり、地域BCPや派遣体制の構築も重要である。設置状況には地域差があり、特に福祉分野やリエゾン派遣体制には課題が残る。平時からの連携やICSに類似した実践事例は、今後の体制設計の参考となり、継続的な改善が必要である。
(2) 災害の実事例に即した検討:風水害や能登半島地震を対象に保健医療福祉活動の実態を調査し、避難所での健康支援や要配慮者対応、保健所等が拠点となった活動が明らかとなった。事前計画や訓練の有無が対応評価に一定の影響を与え、情報共有には固定電話やメールが多く、オンライン活用は限定的だった。能登地震では巡回・常駐などの具体的対応が把握され、体制整備や情報活用の課題と成果が明示された。
(3) 災害対応のための情報の要求事項等の検討:災害時の情報流通の通信から意思決定までの構造、情報マネジメントの被災状況把握から支援業務までの領域が分類された。能登半島地震では、ケア記録の紙媒体使用や情報共有の困難さが指摘された。今後は、被災者支援に資するDX化のビジョン共有、サマリー自動化、現場負担を軽減する情報設計など、実効性ある情報利活用の体制構築が求められる。
(4) 情報集約及び対応体制等に関する海外の情報収集:ISO規格や英国JESIP、米国MOCC、WHOの指針をもとに、海外における災害対応時の情報集約・意思決定支援の枠組みを整理し、状況認識の統一(COP)やJoint Decision Modelの重要性が明らかとなった。また、災害時の保健医療福祉に関する用語集を作成した。
(5) 避難所・在宅者等の情報把握・支援の検討:被災者を優先度に応じて分類し、支援開始時期や必要情報を整理した。被災地域住民の全体像の推移として、「平時」「発災直後」「応急対応期」「復旧・復興期」について、「カラダとココロ」「すまい・くらし」「人と人とのつながり・まち」の各分野について、「自助・共助・公助」の状況を整理した。また、「みる」「つなぐ」「動かす」の流れ、市町村・保健所・都道府県の連携強化が重要と考えられた。
(6) 災害ケースマネジメント等の検討:災害ケースマネジメント(DCM)は2021年の防災基本計画に位置づけられたが、応急対応期の情報が生活再建期に活かされるようにする必要がある。自治体や支援団体による被災者調査や官民連携の可能性が確認され、生活再建を阻害・促進する要因や支援体制の実態も可視化された。集落単位の事例分析を行い、地域自治組織等による集落運営の取り組みをまとめた。
(7) 情報分析の運用体制の検討:災害時の情報連携強化を目的に、災害時保健医療福祉活動支援システム(D24H)の活用を軸とした情報収集・整理・分析の実態を検討した。熊本県での訓練や能登半島地震での実運用からは、情報の整理・優先順位付け・可視化に課題があることが明らかとなり、情報分析力の強化とその標準化が必要とされた。今後は、フェーズ別の必要情報を明確にし、関係者が実践的に情報活用を学ぶ研修の継続が求められる。
(8) 情報能力向上方策等の検討:①DHEAT基礎編研修、②DHEAT標準編研修、③統括DHEAT研修、④市町村の初動対応支援、⑤能登半島地震におけるDHEAT支援を通じて検討を行った。災害時の迅速かつ的確な支援には、情報収集・分析・共有能力の向上が不可欠である。能登半島地震では多職種が同一拠点で連携し、保健師リエゾンの活用が効果を上げた。平時の訓練や顔の見える関係構築、ITツールの活用も有効であり、今後は分析力と対応力を高める研修の継続と体制整備が求められる。
結論
本研究により、保健医療福祉調整本部の標準モデルとして「保健医療福祉調整本部等におけるマネジメントの進め方2025」を取りまとめた。本研究を通じて、災害対応のあるべき姿がより明確となり、今後の実務への応用や訓練計画の指針として活用されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2026-01-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2026-01-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
202426001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
災害に対する保健医療福祉調整本部の実態及びあり方を初めとして、多様な視点での知見を明らかにし、論文及び学会発表等により国内外に研究成果を発表し、災害分野の専門的・学術的な進歩に貢献した。
臨床的観点からの成果
小冊子「保健医療福祉調整本部等におけるマネジメントの進め方2025」を作成するなど、災害時の保健現場等の活動に資する研究成果を発信した。また、新型コロナウイルス感染症流行期において、自治体職員の過重労働・メンタルヘルス対策に資する研究成果の発信等も行った。
ガイドライン等の開発
令和7年3月31日付け厚生労働省大臣官房厚生科学課長始め8課局部長通知「大規模災害時の保健医療福祉活動に係る体制の強化について」において、保健医療福祉調整本部のあり方等について、本研究班の研究成果に基づく記載が盛り込まれた。
その他行政的観点からの成果
「新型コロナウイルス感染症等対応における自治体職員の過重労働・メンタルヘルス対策に関する取組事例の共有について」として、本研究班の成果に基づく厚生労働省の主催によるオンライン研修会が行われた。
その他のインパクト
研究班ホームページに、小冊子「保健医療福祉調整本部等におけるマネジメントの進め方2025」を掲載するとともに、全国の都道府県・保健所に送付するなど、研究成果の普及を行った。また、災害対応に関する研修会等においても研究成果に基づく講演等を行った。

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
60件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
通知1件
その他成果(普及・啓発活動)
6件
研修会5件、ホームページ1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2025-06-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
202426001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,770,000円
(2)補助金確定額
13,670,000円
差引額 [(1)-(2)]
100,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,430,201円
人件費・謝金 645,088円
旅費 3,629,205円
その他 4,788,506円
間接経費 3,177,000円
合計 13,670,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2025-09-29
更新日
-