文献情報
文献番号
202425016A
報告書区分
総括
研究課題名
発生毒性リスク評価に資するシグナル伝達かく乱作用を基にしたNAMsの開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KD1003
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
大久保 佑亮(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
研究分担者(所属機関)
- 平林 容子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
- 福田 淳二(横浜国立大学大学院 工学研究院)
- 中島 芳浩(産業技術総合研究所 健康医工学研究部門)
- 小島 肇(山口東京理科大学 工学部 医薬工学科)
- 桑形 麻樹子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部第二室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
18,920,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
化学物質が胚・胎児発生に及ぼす影響は、ヒトと実験動物の種差が大きいことが知られている。そのため、従来の発生毒性試験では複数の動物種を用いてヒトへの外挿性を高める手法が取られてきたが、高コストであり、動物福祉の観点からも動物実験の代替法の開発が求められている。一方で、受精卵から胎児に至るまでの複雑な発生過程を細胞レベルで正確かつ網羅的に再現することは難しく、実用に耐えるin vitro試験系は未だ確立されていない。
我々はこれまで、発生過程が少数のシグナル伝達の相互作用によって制御されている点に着目し、化学物質のシグナルかく乱作用に基づき発生毒性を評価するDynaLux/cを開発してきた。DynaLux/cは従来の動物試験とは異なる細胞ベースの試験法であり、正確性と網羅性を備えるとともに、96穴プレートを用いて一週間程度で実施可能な高スループットかつ低コストなシステムである。
しかしながら、現段階ではハザード評価にとどまり、化審法などで求められるリスク評価への応用には、毒性強度を定量的に評価できる指標の構築が必要である。本研究では、DynaLux/cの改良を通じて、ヒトへの外挿性が高く、リスク評価にも活用可能な新たなNAM(New Approach Method)の確立と、公定化を目指した検討を行った。
我々はこれまで、発生過程が少数のシグナル伝達の相互作用によって制御されている点に着目し、化学物質のシグナルかく乱作用に基づき発生毒性を評価するDynaLux/cを開発してきた。DynaLux/cは従来の動物試験とは異なる細胞ベースの試験法であり、正確性と網羅性を備えるとともに、96穴プレートを用いて一週間程度で実施可能な高スループットかつ低コストなシステムである。
しかしながら、現段階ではハザード評価にとどまり、化審法などで求められるリスク評価への応用には、毒性強度を定量的に評価できる指標の構築が必要である。本研究では、DynaLux/cの改良を通じて、ヒトへの外挿性が高く、リスク評価にも活用可能な新たなNAM(New Approach Method)の確立と、公定化を目指した検討を行った。
研究方法
本研究では、発生毒性評価に資する新規in vitro試験法の確立とその公定化に向けて、以下の取り組みを行った。まず、リアルタイムルシフェレースアッセイを用いたDynaLux/cにより、発生毒性物質のハザード評価および特性解析を実施し、試験法の標準作業手順書(Standard Operating Procedure: SOP)を作成した。次に、in vitro-in vivo extrapolation(IVIVE)に資する基礎情報の収集および評価物質の選定を行った。さらに、多色リアルタイムルシフェレースアッセイ系の構築に取り組み、複数のシグナルパスウェイを同時に測定できる技術基盤を整備した。加えて、試験法の普及と国際的な整合性の確保を目的として、関係機関・企業との連携によるコンソーシアムを設立し、公定化に向けた情報収集を進めた。
結果と考察
DynaLux/cにリアルタイム発光測定装置(KronosHT)を導入し、70時間以上にわたるFGFシグナルのかく乱作用を連続して計測した。シグナルの変化は溶媒対照と比較して面積差(Area Between the Curve: ABC)として定量化した。陽性対照14種類、陰性対照5種類を用いた検証において、100%の正確度で分類が可能であり、陽性対照の約8割で用量依存的な反応も確認された。これにより、DynaLux/cを基盤としたリスク評価指標の構築が可能であることが示唆された。
さらに、試験法の精度向上を目的に、既存のNlucに加えて、ウェル間補正および細胞毒性の指標となる内部標準用ルシフェラーゼを導入した多色アッセイ系の構築に取り組んだ。今年度は、プロモーター、ルシフェラーゼ、発光基質、光学フィルターの検討を行い、ヒトiPS細胞において多色アッセイ系の構築が可能であることを確認した。
また、公定化に向けた体制整備として、SOPの作成、規制機関や業界団体との意見交換、OECDガイドライン化に向けた情報収集を行い、試験法の標準化に向けた基盤を整備した。あわせて、IVIVEに必要な評価物質の選定や情報収集も継続的に実施した。
さらに、試験法の精度向上を目的に、既存のNlucに加えて、ウェル間補正および細胞毒性の指標となる内部標準用ルシフェラーゼを導入した多色アッセイ系の構築に取り組んだ。今年度は、プロモーター、ルシフェラーゼ、発光基質、光学フィルターの検討を行い、ヒトiPS細胞において多色アッセイ系の構築が可能であることを確認した。
また、公定化に向けた体制整備として、SOPの作成、規制機関や業界団体との意見交換、OECDガイドライン化に向けた情報収集を行い、試験法の標準化に向けた基盤を整備した。あわせて、IVIVEに必要な評価物質の選定や情報収集も継続的に実施した。
結論
DynaLux/cの改良により、ハザード評価に加えて、リスク評価への応用の可能性が示された。また、多色アッセイ系の構築や公定化に向けた基盤整備など、今後の発展に向けた重要な成果が得られた。今後は得られた知見に基づき、さらなる標準化及び国際展開に向けた取り組みを進めていく予定である。
公開日・更新日
公開日
2025-06-02
更新日
-