血小板の高効率試験管内産生に向けた基盤技術の確立

文献情報

文献番号
201009002A
報告書区分
総括
研究課題名
血小板の高効率試験管内産生に向けた基盤技術の確立
課題番号
H20-政策創薬・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高木 智(独立行政法人国立国際医療研究センター 研究所肝炎・免疫センター免疫制御研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 江藤 浩之(東京大学医科学研究所 幹細胞研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究費
10,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
巨核球系細胞の増殖能及び未分化細胞からの誘導効率は高くなく、血小板の試験管内産生は未だ困難である。巨核球系細胞群や造血幹細胞の新しい制御系として注目されるLnk/SH2B3依存性制御系やその発現をコントロールすることで、造血前駆細胞から巨核球への高効率な分化、増殖誘導の達成を目指した。また、新しい供給源としての可能性が期待される各種多能性幹細胞からの血小板分化誘導技術の開発を検討した。
研究方法
動物モデルでの知見に基づいて相同部位に変異を導入しヒトLnk/SH2B3変異体を作製した。発現を抑制するsiRNAを作製した。ヒト臍帯血造血幹細胞に導入し、移植系により血小板分化への影響を検討した。多能性幹細胞から血小板を誘導する培養系を検討した。胚葉体を介した液体培養法による分化誘導、様々なストロマ細胞との共培養法による分化誘導を試みた。
結果と考察
ヒトLnk/SH2B3阻害変異体を数種作製したが内因性に発現する蛋白を超える発現は達成できず、阻害効果は得られないと判断した。Lnk/SH2B3の発現を抑制するsiRNAやレトロウィルスベクターを作製した。これらで臍帯血幹細胞を処理して免疫不全マウスへ移植したものが、ばらつきが大きく効果判定には至らなかった。ヒト胚性幹細胞から造血前駆細胞が濃縮可能である構造体を誘導できる方法をヒト人工多能性幹細胞をソースとして試み、血小板の誘導に成功した。
結論
ヒト細胞に対するLnk/SH2B3制御系阻害の効果については、期間内に十分な検討を終えることができず課題が残った。新しいプロトコールの確立により、多能性幹細胞より再現よく血小板を産生させることが可能となった。さらに効率化を目指して研究を継続し推進する必要がある。血管内イメージングによるレシピエント内での動態検討は、生体内での血小板機能の評価を可能にするものとして期待できる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201009002B
報告書区分
総合
研究課題名
血小板の高効率試験管内産生に向けた基盤技術の確立
課題番号
H20-政策創薬・一般-003
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
高木 智(独立行政法人国立国際医療研究センター 研究所肝炎・免疫センター免疫制御研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 江藤 浩之(東京大学医科学研究所 幹細胞研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(政策創薬総合研究)
研究開始年度
平成20(2008)年度
研究終了予定年度
平成22(2010)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各種造血系疾患の治療に用いられる血小板製剤の安定な供給を目指し、臍帯血幹細胞やES細胞などの未熟な細胞から試験管内での血小板生成法を検討した。造血幹細胞や巨核球系細胞の増幅を抑制する新しい制御系Lnk/SH2B3依存性制御系の機能阻害及び発現抑制により、巨核球系細胞群の分化増殖能自体を内因性に高める新しいアプローチを試みた。また、新しい供給源としての可能性が期待される各種多能性幹細胞からの血小板分化誘導技術の開発を検討した。
研究方法
動物モデルでの知見を基盤としてヒトLnk/SH2B3変異体の作製を試みた。発現を抑制するsiRNAを作製した。これらをヒト臍帯血造血幹細胞に導入し、巨核球分化誘導や血小板産生に対する効果を検討した。多能性幹細胞から血小板を誘導する培養系を検討した。胚葉体を介した液体培養法による分化誘導、様々なストロマ細胞との共培養法による分化誘導を試みた。培養により産生される血小板の細胞膜表面抗原や機能等を検証し、その分子機構解析から止血活性を維持した血小板の獲得法を探索した。
結果と考察
Lnk/SH2B3はTPOシグナルに作用し巨核球成熟を抑制しているだけでなく、サイトカインとインテグリンシグナルのクロストークによる血小板放出制御機構にも関与することを明らかにした。ヒト細胞に対するLnk/SH2B3制御系阻害の効果については、期間内に十分な検討を終えることはできなかった。多能性幹細胞をソースとする血液細胞誘導法を確立し、さらに血小板の産生誘導に成功した。メタロプロテアーゼを培養の一定時期に阻害することで止血活性を維持した血小板が得られることを発見した。得られた血小板の機能について、血管内イメージングによる生体内での機能評価系を確立した。
結論
巨核球系細胞の増幅、血小板産生へのLnk/SH2B3制御系阻害効果、一過性発現系による検討については課題が残った。新しいプロトコールの確立により、多能性幹細胞より再現よく血小板を産生させることができた。これは大きな進捗である。さらに効率化を目指して研究を継続し推進する必要がある。血管内イメージングによるレシピエント内での動態検討は、生体内での血小板機能の評価を可能にするものとして期待できる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201009002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
巨核球系細胞群や造血幹細胞の抑制性制御系を担うLnk/SH2B3阻害のヒト細胞に対する効果については課題が残った。新しいプロトコールの確立により多能性幹細胞から再現よく血小板を産生させることが可能となり、分子機構解析に貴重な成果が得られた。生体内での血小板機能の評価を可能とする血管内イメージングによる動態検討法を確立した。インテグリンを介したシグナルにおける新しい制御系を発見した。
臨床的観点からの成果
巨核球系細胞の増殖能及び未分化細胞からの誘導効率は高くなく、血小板の試験管内産生は未だ困難である。巨核球系細胞群や造血幹細胞の新しい制御系として注目されるLnk/SH2B3依存性制御系をコントロールすることで、巨核球への高効率な分化、増殖誘導が可能か検討した。新しい供給源としての可能性が期待される各種多能性幹細胞から、再現よく血小板を産生させる新しいプロトコールを確立した。血小板機能を保存しつつ培養産生する技術を確立した。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
18件
学会発表(国際学会等)
8件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Oki T, Eto K, Izawa K et al.
Evidence that integrin alphaIIbbeta3-dependent interaction of mast cells with fibrinogen exacerebrates chronic inflammation.
J Biol Chem , 284 (45) , 31463-31472  (2009)
原著論文2
Takizawa H, Takaki S, Eto K et al.
Lnk regulates integrin alphaIIbbeta3 outside-in signaling in mouse platelets, leading to stabilization of thrombus development in vivo.
J Clin Invest , 120 (1) , 179-190  (2010)
原著論文3
Suzuki-Inoue K, Inoue O, Ding G et al.
Essential in vivo roles of the C-type lectin receptor CLEC-2: embryonic/neonatal lethality of CLEC-2-deficient mice by blood/lymphatic misconnections and impaired thrombus formation of CLEC-2-deficient platelets.
J Biol Chem , 285 (32) , 24494-24507  (2010)

公開日・更新日

公開日
2017-06-20
更新日
-

収支報告書

文献番号
201009002Z