文献情報
文献番号
202425006A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質管理のためのin silico毒性予測の利用推進と統合的リスク評価の基盤構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
24KD2004
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
増村 健一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター安全性予測評価部)
研究分担者(所属機関)
- 山田 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
- 古濱 彩子(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
- 松本 真理子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 安全性予測評価部)
- 安部 賀央里(鈴木 賀央里)(名古屋市立大学 大学院薬学研究科)
- 水野 忠快(東京大学 大学院薬学系研究科)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和6(2024)年度
研究終了予定年度
令和8(2026)年度
研究費
27,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
化学物質管理の課題解決に資する有用なin silico評価手法の開発を目指し、十分な毒性情報がない化学物質の毒性予測およびリスク評価における専門家判断を支援するin silico評価技術の基盤構築を通じて、化審法等における生活関連化学物質の安全性評価に寄与することを目的とする。
研究方法
化審法の既存化学物質スクリーニング評価サマリー表の対象物質について、Ames変異原性予測の対象物質の絞り込みを行った。芳香族アミンのAmes変異原性データを用いて変異原性指標ddEを量子化学計算で算出し、構造の特徴と組合せてモデル(スキーム案)を構築した。深層学習によるQSARモデルの深化に関して現状の分野のサーベイを実施した。反復投与毒性及び生殖発生毒性を対象としたケーススタディ候補化合物の検索を行った。子宮肥大試験の量-反応関係に大きな影響を及ぼすと考えられるクリティカルなキーイベントを対象としてIVIVEアプローチ適用の妥当性を評価した。ラットとヒトの複数のCYP分子種の阻害活性に関するin vitro実験結果を基に作成されたin silico予測モデルや代謝テンプレートを整理した。
結果と考察
化審法の既存化学物質スクリーニング評価データを用いて、QSARによるAmes変異原性の予測精度評価を行うため、既存化学物質の化学構造情報を取得し、Ames変異原性予測の対象物質の絞り込みを行った。芳香族アミンに対する量子化学計算に基づく相対エネルギー値を用いた評価法と部分構造に関する情報を加味し、Ames変異原性に対しバイナリーモデルによる評価スキームを提案した。深層学習モデルを用いた毒性予測に関する現状を精査すべく文献調査を実施した。リテラシー上の懸念から論文記載の結果に基づく性能評価は困難であることを見出した。リードアクロスの信頼性向上へ向け、ケーススタディの実践によってNAMの概念実証を行うため、化審法の対象となる化学物質を対象に、毒性データベース、既存のADMEおよびAOP等情報に基づいて、ケーススタディの候補化合物の検索およびケーススタディの開発に適切なシナリオを調査した。内分泌かく乱化学物質5物質を選定してin vitro to in vivo外挿 (IVIVE)を行い、in vitroアッセイの活性濃度から外挿された経口等価用量 (OED) とin vivoスクリーニング試験 (子宮肥大試験)で得られているLOELやBMDを比較し、IVIVEアプローチ適用の妥当性を確認した。薬物代謝酵素であるシトクロムP450(CYP)のラットとヒトの複数の分子種に関するin silico予測モデルの整理、システム化を実施した。
結論
QSARモデルによるAmes変異原性の予測精度評価を行うため、化審法における既存化学物質スクリーニング評価データを用いて、既存化学物質(1164物質)についてAmes変異原性予測の対象物質の絞り込みを行った。 芳香族アミンAmes変異原性予測について、量子化学計算で得られるエネルギー指標ddEと芳香族アミンに含まれる部分構造情報を組み合わせることで、行政に活用するのに適切なAmes変異原性予測モデル・スキームを提案した。 既存情報のキャッチアップを終えるとともに、既存論文が提示する結果に基づく単純な比較では性能を十分に比較・評価できないことを見出した。 リードアクロスの信頼性向上へ向けてケーススタディの実践によってNAMの概念実証を行うため、ケーススタディの候補化合物の検索とケーススタディの開発に適切なシナリオを調査した。 子宮肥大試験の結果をほぼ妥当に予測できたと考えられたが、今後もさらに多様な特性の物質に適用を拡大してIVIVEアプローチの適用性を評価することが重要である。 これまでに開発したラットとヒトの複数のCYP分子種の阻害活性を化学構造情報のみから判別するin silico予測モデルをシステム化した。CYP分子種の阻害活性情報からラットとヒトの肝毒性に関する種差情報をin silicoにて提供できる可能性を見出した。
公開日・更新日
公開日
2025-06-02
更新日
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