家庭用品中有害物質の試験法及び規制基準設定に関する研究

文献情報

文献番号
202425002A
報告書区分
総括
研究課題名
家庭用品中有害物質の試験法及び規制基準設定に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
23KD2001
研究年度
令和6(2024)年度
研究代表者(所属機関)
河上 強志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
研究分担者(所属機関)
  • 西 以和貴(神奈川県衛生研究所 理化学部)
  • 千葉 真弘(北海道立衛生研究所 生活科学部)
  • 久保田 領志(国立医薬品食品衛生研究所 生活衛生化学部)
  • 田原 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 井上 薫(国立医薬品食品衛生研究所 安全性予測評価部)
研究区分
厚生労働行政推進調査事業費補助金 健康安全確保総合研究分野 化学物質リスク研究
研究開始年度
令和5(2023)年度
研究終了予定年度
令和7(2025)年度
研究費
43,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
家庭用品規制法では、指定家庭用品に含まれる21種類の有害物質の含有量や溶出量の基準が定められている。これらの有害物質試験法について、現在の分析技術水準に対応していない分析機器や有害試薬の使用が課題となっており、試験法の改正が求められている。また、生活様式の多様化に伴い、新たな形態の家庭用品や化学物質が使用されており、現時点で未規制の物質については、知見の集積が必要である。本研究では、先行研究で開発した試験法について必要に応じて改良を行った後、複数機関による妥当性評価試験を実施し改正試験法を提案する。また、分析に用いるGC-MSで使用するヘリウムの供給不足等を踏まえ、ヘリウムを使用しない代替試験法の開発も実施する。先行研究から実施している未規制物質の実態調査を行うとともに、検討対象物質選定スキームに基づいて作成された詳細評価物質リストから対象物質を選択し、健康リスク評価に関する情報収集を行う。さらに、皮膚感作性物質のリスク管理に関する情報を収集し、その在り方を提案する。
研究方法
試験法改正では、家庭用品規制法で有害物質に指定されている有機水銀化合物を対象に、それらを添加した繊維試料を調製し、6機関で妥当性評価試験を行い、その妥当性を確認した。ヘリウム不足対応では、TPT及びTBTのGC-MS条件を検討した。未規制有害物質では、VOCsは非エアゾール製品及び玩具、有害元素は玩具について実態調査を実施した。ゴム・プラスチック製品中のPAHsでは、REACH推奨分析法の改良と実態調査を行った。防炎加工剤では、新たに2種類の有機リン酸エステル系化合物(PXP及びPIP)の分析法を構築し繊維製品を分析するとともに、昨年度にTDCPが高濃度で検出された防災頭巾について、人工汗を用いた溶出試験を実施し、曝露評価を行った。検討対象物質選定スキーム関連では、詳細評価対象物質のうちポリヘキサメチレンビグアナイド類の有害性情報を収集した。
結果と考察
有機水銀化合物の妥当性評価試験では、精度及び感度ともに十分に確保され、現行試験法よりも安全な試薬を用いた改正試験法が開発できた。ヘリウム不足に対応した試験法について、TPT及びTBTともにキャリヤーガスを変更しても、カラム、ガス流量、オーブン昇温条件等は変更することなく、対象化合物が測定できる分析条件を構築できた。未規制有害物質では、VOCsは一部の製品でREACH基準を超えて検出されることが確認され、必要に応じて更なる実態調査や製品使用時のリスク評価の実施を検討する。防炎加工剤は、TXP及びPIPの分析法を構築して繊維製品を分析し、一部の製品から低濃度で検出された。また、TDCPの溶出試験結果を基に経皮曝露評価を行ったところ、Danish EPAが示した導出無影響レベルを下回った。ゴム・プラスチック製品中のPAHsでは、REACH推奨分析法よりも妨害の影響を受けない分析法を開発し、実態調査の結果、一部の製品からREACH規則の制限値を超えるPAHsが検出されたが、用途や使用頻度を考慮すると、これらの製品からのPAHs曝露量は限定的と考えられた。検討対象物質選定スキーム関連では、ポリヘキサメチレンビグアナイド類の長期影響及び短期影響に関する有害性情報を収集し、長期影響の毒性項目別及び曝露経路毎に整理した。得られた有害性情報に基づき各毒性項目について評価を進め、長期影響に関する有害性評価値(案)を導出した。感作性物質のリスク管理手法に関して、諸外国の規制状況やその根拠、並びに規制実施に伴う健康被害低減効果の検証状況を調査した。また、感作性物質の定量リスク評価手法について、感作性物質の定量リスク評価に関する評価書や論文等を収集し、その情報を整理した。
結論
繊維製品中の有機水銀化合物の妥当性評価試験を行い、開発した分析法の妥当性を確認した。TPT及びTBTの代替キャリヤーガスによるGC-MS分析条件を構築した。未規制化合物では、非エアゾール製品及び玩具中の揮発性有機化合物、玩具中の有害元素類及び繊維製品中の有機リン系防炎加工剤の実態調査を行うと共に、有機リン系防炎加工剤については溶出試験及び曝露評価を実施した。ポリヘキサメチレンビグアナイドの有害性情報を収集し有害性評価値案を導出した。感作性物質のリスク管理の在り方に資する情報収集を実施した。これらの成果は、家庭用品安全対策調査会における資料等として活用され、家庭用品規制法における規制基準の検討や試験検査業務の効率化と安全性の向上に繋がることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
202425002Z