柴胡剤・熊胆剤による胆汁酸代謝制御の分子機構の解明と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療への展開

文献情報

文献番号
201008028A
報告書区分
総括
研究課題名
柴胡剤・熊胆剤による胆汁酸代謝制御の分子機構の解明と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療への展開
課題番号
H22-創薬総合・一般-012
研究年度
平成22(2010)年度
研究代表者(所属機関)
田中 智洋(京都大学 医学研究科 腫瘍生物学講座(旧 病理学第二講座))
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 慎二(京都大学 医学研究科 腫瘍生物学講座(旧 病理学第二講座) )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
15,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国における肥満・メタボリックシンドローム罹患者の増加とともに非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の有病率は増加の一途をたどっており、肝ガン、肝硬変の基盤病態として国民健康衛生上の大きな問題となりつつある。しかし、NASHの発症メカニズムは未だ明らかではなく、有効性が確立した治療法も無い。本研究では、古来用いられている熊胆剤、柴胡剤による胆汁酸代謝調節作用に着目し、胆汁酸代謝を標的とした全く新しいNASHの治療戦略を提唱することを目的とする。そのために胆汁酸代謝制御の詳細を明らかとし、その中にこれら薬剤の標的分子を位置づけることが必要である。
研究方法
(1)維芽細胞増殖因子19 (FGF19)-βKlothoシステムによる新たな胆汁酸合成制御機構の全貌が明らかとなりつつある。本年度はまずマウス肝臓ミクロソーム分画から免疫沈降法・質量分析法によりβKlotho結合タンパク質の探索を行うことで標的分子の同定を試みた。
(2)脂肪肝モデル病態を発症する高脂肪食負荷マウス、ob/obマウス、db/dbマウスの肝臓におけるβKlothoの発現を評価した
(3)高脂肪食負荷により高脂血症と脂肪肝を誘導した野生型およびβklotho遺伝子欠損マウスの血清リポタンパク質をHPLC・酵素法により解析した。
(4)アルブミンプロモターの制御下で肝細胞においてβKlothoを発現するトランスジェニックマウスの新規作製を行った。
結果と考察
(1)約10個のβKlotho結合分子の候補リストの作成に至った。
(2)脂肪肝モデルマウスにおいてはいずれも肝臓におけるβKlothoの遺伝子およびタンパク発現が増加することが明らかとなった。
(3)肝臓から分泌されるリポタンパク質VLDLの血清レベルは、高脂肪食下においても内因性胆汁酸合成が亢進しているβklotho遺伝子欠損マウスにおいて明らかに低値であった。
(4)肝細胞特異的なβKlotho発現トランスジェニックマウスの複数のラインの樹立に成功した。
熊胆剤、柴胡剤により増加する胆汁酸プール、あるいは誘導される胆汁酸合成系が脂肪肝発症に抑制的に働く分子機序の一端が示された。またNASHにおいてはFGF19-βKlothoシステムの亢進が胆汁酸合成を抑制し病態を悪化させる方向に作用している可能性が示唆された。
結論
NASHにおける胆汁酸代謝異常の病態的意義が示され、熊胆剤、柴胡剤による胆汁酸代謝への介入がNASHの治療戦略として有効である可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2011-09-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201008028Z